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31. 彼と残ることになりそうです

いつもありがとうございます!





 ジョーの傷口の消毒をして一階に降りると、ソフィアさんが治療院の片付けをしていた。疫病の流行も完全に落ち着き、この街には平穏が訪れている。


 ソフィアさんは私に気付き、片付けの手を休めて笑顔で告げた。


「アンちゃんが戻ってきてくれて、嬉しいわ」


「私もです。ありがとうございます!」


 私はソフィアさんに迷惑をかけてばかりだ。今回だって、ポーレット領に帰ると言い出したり、お兄様やジョーを二階に泊めたり……そんな私の暴走を、ソフィアさんは受け止めてくれた。こんなに優しい人は、どこを探しても他には見つからないと思う。


「アンちゃんのお母様の本、凄いわね」


 目を輝かせるソフィアさんを見て、お母様のことを自慢に思った。


「はい。あの本は母の実験中の記録だったみたいで……

 書いてあることは、正式には認められていないのですが……」


 それでも、お母様はすごい。最年少で王宮薬師長になっただけの腕はあるのだ。そして、私ももっと頑張らねばと励みになった。


 今回の一件についても、お母様のおかげでジョーを助けることが出来た。きっと、お母様は天国で喜んでくださっているだろう。


「それにしても、お姫様のキスで目を覚ますなんて、素敵ね」


 それを聞いてかあっと血が顔に上る。治療中は必死で、そんな気にもならなかったのも事実だが。

 どちらにせよ、ジョーが生きていてくれて、本当に嬉しい。


「私はこのまま、オストワルに残ろうと思います。

 これからも、よろしくお願いします」


 頭を下げる私を見て、ソフィアさんは嬉しそうに笑ってくれた。


 私は、この地でお母様に負けないようなすごい薬師になろうと思う。そして、ジョーとともに幸せになるのだ。




 ソフィアさんと談笑していると、薬草園へ散歩に出かけて行ったお兄様が帰ってきた。手にはなぜか、大量の焼き菓子やらチョコレートやらを持っている。


「ど、どうされたのですか?」


 思わず聞くと、お兄様は嬉しそうに教えてくれた。


「僕、どうやらこの地で人気者みたいで。

 ジョーを救ったアンの兄って言われて、たくさんお礼もらったんだよ」


 一番の人気者は、この街を守っているジョーなのかもしれないが……お兄様が嬉しそうなので、何も言わないでおくことにした。


「ジョーにあげたら喜ぶかな?」


「駄目です。チョコレートを食べると、痛み止めの効果が落ちてしまいますから」


 そうやってお兄様を嗜めながらも、幸せだなあと思った。こうやって、ジョーやお兄様が生きてくれているだけで、私はとても幸せだ。


「さあ、お兄様!二階に上がってください。


 明日からはリハビリとして、さらに動いてもらいますよ。


 ……ジョーが元気になったら、一緒に剣の練習をするのもいいですね」


「ジョーは駄目だよ。

 どうせ僕、ジョーにボコボコにやられるから」


 お兄様はそう言い残して、ジョーとお兄様のベッドのある二階へ上がっていった。私はお兄様が消えていった階段を見上げながら微笑んでいた。


 お兄様のことは好きだし、お兄様は危険を犯してまで私を守ってくれた。でも、私の心はジョーとともにある。


 こうやって、ジョーの近くにいて、その顔を見ているだけで幸せだと思う。私は、ジョーと一緒にいられて、すごくすごく幸せだ。


「アンちゃんも看病しっぱなしで疲れているでしょう。今日は早く帰ってゆっくり休んでね」


 ソフィアさんの心遣いは嬉しいが、私にはまだたくさん仕事が残っている。

 お兄様とともに戦ってくれたポーレット領の騎士たちの多くも、怪我を負っていた。私は薬師として、皆を元気にしたい。


「ありがとうございます。


 ですが、これから騎士団本部に行ってきます。


 騎士団の宿舎にいるポーレット領の騎士たちの様子も診てこないと!」


 私はソフィアさんに頭を下げ、騎士団本部に向かう。


 街を走る私を見て、人々が


「アンちゃん、お帰り!」


なんて嬉しい声をかけてくれた。


 ここが私の居場所なのだとしみじみ感じる。


「ただいま!これからも、よろしくお願いします!」


 私は元気に答えていた。

 



いつも読んでくださってありがとうございます!

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