平和を望みし少女
「…先生…明日…刑が執行されます…。でもあたし…自分が間違っていたとは思ってません…先生は言いましたよね?戦場に英雄も聖女もいないと……あそこにいる連中は全員…同じ者達と…今なら…あなたの言葉の重さが分かります…」
(女と呼ぶにはまだあまりにも幼い…そのガキは俺に背を向けながら静かに語り洞窟から出て行こうとしていた。ガキの肩は微かに震えているのが見て取れた)
「…怖いか?…お前を祭り上げた連中は全員裏切った…いい操り人形として使い利用価値がなくなった途端に敵にお前の居場所の情報を流してお前を売った…結局…お前は形だけの聖女という…烙印を押されたに過ぎない…だがな…お前の壇上での勇士の姿は…正しく聖女の片鱗を見せていたよ…ジャン」
(俺が最期にガキの名を呼ぶとガキはゆっくり振り返って涙を流しながら俺に笑みを向けて来ていた。そして胸元に…あの紋章を大事に込めて…力強く俺に語りかけて来た)
「ありがとうございました!!あなたに育てて頂いた御恩一生忘れません!!」
(ガキの腰には俺が与えてやった使い古された剣が腰に静かに携わっていた。そしてジャンは俺の住処の洞窟を後にして行った…そして運命の刑の執行の日に俺は大勢がジャンに罵声を浴びせ続ける。背後で静かに刑執行の様を見守っていた。そしてジャンは執行人達に火を付けられて火炙りの刑が大勢の群衆の前で行われた)
「…お前が命を懸けてまで守ろうとした者達…が…こいつらだ…」
(そして俺は火炙りの刑が行われ続けている。群衆に背を向けて街を去ろうとした時だった。俺の前に数名の男達が立ち塞がった。そう…散々ジャンの味方と綺麗事を抜かしていた連中が俺の前に立ち塞がって来ていた)
「…ジャンを敵側に売り渡した後は次は俺の番か?ええ!!団長さんよ…」
(男達は俺に剣を抜いて来ていた。そう…革命運動を行っていた際に聖女様のお傍に貴様は相応しくないと言って俺をガキの傍から遠ざけた張本人だった。そして俺は不敵な笑みを浮かべて静かに剣を抜き始める)
「これであいつの目も気にせず…心置きなく…ふっ…くそ野郎共を…ぶっ殺せるぜ!!」
(群衆達の悪魔とジャンに罵声をあびせ続け火炙りに包まれている裏で一人の男は数名の男達と殺し合いを行っていた。そして刑が終わる頃には路地裏に数名の首のない死体が転がっていた。そして男は静かに街から去って歴史の表舞台から…その姿を消して行った)
「…天秤の均衡が揺るがされし時…天使が舞いおいらん…」