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転移者の教え子  作者: 塩バター
第一章
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第6話 四つの国

 一瞬肝を冷やしたが、見つかったのは鍵狩りの連中で、モモのことではないらしい。


「それで、奴らの目的は何なのさ?」


「それは捕まえてみないことには分からないけど、こっちに来ているのは間違いないな。向こうじゃ衛星どころか電気も通ってないけど、こっちにはGPSって便利な機能があるからな」


「向こうじゃ馴染みのない文化だから、そうとも知らずのこのこやって来たってわけか」


 相手を油断させるための罠とも考えられるから、慎重に調査をしている段階だという。GPSの反応が現れたのは三日前で、盗まれた鍵の数から忍び込んだのはおそらく七人、今のところ大きな動きは見られないが、魔力の持った人間を避けるような動きをしていて、敵の中に光魔法の使い手がいるかもしれないとのこと。


「で、なぜそれを俺に話すわけ? まさか休日返上で働けって言うんじゃないだろうな」


 そのまさかだと武市はニカッと笑った。はたしてそこまでする必要があるのだろうか。


「そんな奴ら魔力のない人間でもどうにかなるでしょ。ここは異世界じゃないんだぜ。魔法だけが奴らに対抗できる力ってわけでもないだろ」


「いや、制圧するだけなら難しくないんだけど、上は奴らを生け捕りにしたいみたいでさ、長期戦は出来れば避けたいらしいんだよね。異世界に逃げられたら元も子もないからな。探知で警戒されいるとなると人海戦術はとれない。その点、お前にはテレポートがある。奇襲作戦にもってこいの能力だろ。最悪、お前一人でやれんことはないだろうってのが上の判断だ」


 人のこと買いかぶりすぎているんだよな。


 侵入した異世界人を野放しにも出来ないが、モモの存在を知られてはいけないので、本部の連中とはあまり関わりを持ちたくない。


「まあ、どうしようもない時は呼んでくれ。後二~三日はここにいるつもりだから」



 さっきまで侵入者を捕まえる算段をしていたのに、家に帰るとエプロン姿をしたモモがお帰りなさいと俺のことを出迎えてくれた。


 異世界人を自宅に招いているのがまずいのか、未成年の女の子を自宅に招いているのがまずいのか、だんだん分からなくなってきた。


 仕事用に借りた安いアパートなので一部屋しかなく、この状況のほうがよっぽど犯罪じみていたが、本人は気にしないとのことだった。むしろ、この状況を楽しむ余裕を見せる。


「ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ、た、し?」


 真綾に間違えた知識を植え付けられたようだが、彼女の作った日本食は完璧だった。ハンバーグ、肉じゃが、味噌汁、初めて作るにはどれも難易度の高い料理のはずだけど。感想を求める彼女にどれも美味しかったよと賛辞を送った。


 ほっとしたのか本部の動きについて訊かれた。今の状況について軽く伝え、間の悪い侵入者どもについて何か心当たりがないか尋ねてみた。


「真っ向勝負じゃなかったとしても、先生たち運び屋から鍵を盗むのは容易じゃないので、四つある勢力の内のどれかじゃないかな。北の国を統べるぺスカ族、東の国を統べるダナモ族、西の国を統べるラビ族、残るは南の国だけど、あそこはまずあり得ないから、可能性があるのは実質三つかな」


「どうしてそう言い切れるの? 均衡する四つの勢力の中で南の国だけ除外する根拠は?」


「アムール族はミーアの故郷なので、ああ見えて彼女、お姫様なんですよ。あそこは血よりも個々の能力を尊重する種族なので、王位を継承できるかは本人の努力次第ですけど。いや、先生たちの教育次第かな?」


 そもそも、真綾に学校を作るように提案したのは、一族の長であるミーアの母らしい。真綾を信用するかどうかは国の中でも意見が割れているらしく、ミーア以外入学希望者は現れなかったみたいだが、技術交流会は定期的に行われているようで、良好な関係ではあるみたいだ。


 しかし、ミーアが王家の出身だったとは。それにしては、周りから雑に扱われている気がするが、普通の女の子として接してくれる今が、彼女にとっても気が楽なのかもしれない。


 きっちりしているが、この子もまだ十代半ば。不法入国したのが自分だけではないと知り、徐々に不安になってきたようだ。


「あのー……、捕まった人ってどうなるんでしょう? 殺されたりしませんよね?」


「それならまだいいんだけどね。使い捨てのモルモットにされるのがオチかな」


 モルモットってと意味を訊かれたので、なるべくやんわりとした表現で意味を教えてあげた。自分がそうなった場合を想像したのか、彼女は相当ショックを受けた様子だった。


「先生にはやらなければならないことがあるんですよね? であるなら、もし私が見つかった時は負い目なんか感じず容赦なく見捨ててください。ここに来たのは私のわがまま。私には生きる上での目的も理由もありません。命を懸けて守る価値なんて私にはありませんから」


 やはり連れてくるべきではなかったかもしれない。この子といると気持ちがぶれる。上限に達しき者だからといって特別扱いする気はないけど、結菜と同じ力を持っているからなのか、この子に対して情が移り始めている。


 教師としての責任、己に課した使命、心の迷いが最悪の結果に繋がらないか不安だ。

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