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 勝手なイメージと言えばそれまでの話だが俺はピルグリムを渋カッケーオッサンの姿だと思い込んでいた。

 よくよく考えたら異星人が地球人と同じような姿をしてるとは限らないのにな。

 宇宙人ならタコみたいな感じでも不思議じゃないだろう。

 でも、


「……その姿は流石に予想外だ」


 完全に可愛いペンギンさんだもん。声も可愛いもん。


「ふふ、懐かしいリアクションだ。私を知った当時の地球人たちも同じようなリアクションだったよ」

「でしょうね!」


 微塵も馴染みがない異形の方が逆にすんなり受け入れられたと思う。


「…………生きて、おられたのですね」


 呆然と呟く。

 そうだ、アヤナちゃんの言う通りだ。そこも気になる。

 いや別に死んだとは聞かされてないけど流れ的に……ねえ?


「君たちの疑問に応えよう。正直な話をすると私も人柱となりこの揺り籠を支えるつもりだったのだよ」


 だが、とピルグリムは目を伏せる。


「彼らに止められた。恩人にそんなことはさせられない、と」


 彼らというのはクレイドル建造時の人間たちだろう。


「もう十分助けてもらった。生きて希望を見届けてくれ。

あなたの巡礼の旅は無意味じゃない。確かな意味があったのだと子供達が証明してくれるとね」


 ピルグリムはどことなく嬉しそうな顔で俺を見た……いやペンギンの表情なんて分からんわ。

 でも何か嬉しそうな雰囲気を感じる。


「君を見ているともう二度と会えない友人たちを思い出すよ」


 ……色々と察せられる言葉だ。

 半ば惰性となっていたであろう巡礼の旅、地球でも駄目で結局、災厄はやって来た。

 磨り潰される地球人を見て運命を共にしようとしたが、最後の最後で希望が見えた。

 そして遂には地球人を友と呼んでくれるぐらいに心を許してくれた。


「さて、希望の見届け人とは言ったがただ見ているだけの穀潰しになるつもりはない」


 存在を認知した子供相手に教導という形で支援するつもりだと彼は言った。


「……教導、ですか? 失礼ですが」

「アヤナちゃん。ピルグリムに戦力として期待するのは意味がないよ」


 完全に落ち着いていればアヤナちゃんもその答えに行き着いたはずだ。

 やはり、表面上は落ち着いたように見えてもまだまだいっぱいいっぱいなのだろう。

 そんな状態で付き合ってくれてることには感謝しかない。


「放棄するはずだった技術の使用を認められるほどの男だ。ピルグリムは紛うことなき英雄なんだろう」


 あ、いやあくまで客観的な評価としてはね?

 取りこぼしたものは沢山あるだろう。なのに英雄なんて呼ばれたくはないだろう。

 慌ててフォローを入れるとピルグリムは大丈夫だと苦笑を返し……苦笑してるんだよなあれ?

 わっかんね。ペンギンの表情なんてわっかんねえよオラ。


「ま、まあ兎に角だ。そんだけの男なんだから単体戦力も半端じゃねえんだろう」


 直接戦線に加われば大活躍待ったなし。

 でも、多分、それが逆に勝利を遠ざけることになる。


「災厄は宇宙進出を目論んだ種族に降りかかるものだ。対象は地球人なんだよ」

「あ」

「そう。他所の、しかも既に災厄を退けたつよつよユニットなんぞ加えてみろ」


 確実に災厄は悪化する。

 ピルグリムという戦力を加味した上での難易度になるのではなかろうか。

 そして多分、ピルグリムが死んでも難易度は下がらない。上がった難易度はそのままになる。

 ここらに関しては実際にどうかは分からないがピルグリム登板で災厄が悪化するのは間違いないはずだ。


「だろう?」

「……ああ、最初に訪れた星で力を貸した結果、目に見えて状況が悪化した」


 離れた後、状況が改善したかどうかは分からないが恐らくは……と彼は言葉を濁した。

 多分、技術提供なんかも慎重にラインを見極めてやったんだろうな。


「そ、それならそうと事前に説明をしておけば」

「わざわざ姿を隠すこともなく認知した子供と限定せず広く指導も行えるだろうって?」


 歴戦の戦士が居てくれるというだけでも精神的な安定に繋がる。

 アヤナちゃんの指摘は一見、正しいように聞こえるが……。


「耐えられるか? 戦況が悪化した時、強い駒があるのにそれを使えないって事実に」

「――――」

「頭で分かってても八つ当たりする奴は必ず出て来るよ。まあピルグリムの性格的に黙ってそれを受け入れるだろうがな」


 何せほっときゃ良いのに故郷を飛び出してまで警告をしてくれるような奴だからな。

 子供らの八つ当たりぐらいは受け入れるだろう。


「でもそれは巡り巡って俺たち自身の首を締めることになる」


 誰かを捌け口にした弱い心のままでやってけるか? 無理だろ。

 要らん火種になると判断したんだよ、ピルグリムやステラはな。


「それなら最初から何も知らせない方が良い」


 災厄がレベルアップすることもない。

 戦況が悪化しても捌け口を求める……ことは避けられないな。

 それでも叩いても何一つ好転しないサンドバッグよかマシな対象を標的に出来る。


「具体的には生徒会長(おれ)だな」


 上に立つ奴が責められるのはもうこれは仕方のないことだ。

 しかしピルグリムと俺では決定的に違う点がある。


「結局のところ俺も叩いてる側と同じ立場だからな」


 他より立ち直るのが早かっただけで突然、家族を失い過酷な戦いに身を投じるようになった同類だ。

 そんな俺を叩いたところで虚しいだけ。最終的には叩いてもしょうがないと歯止めが利く。

 理屈じゃない。同じ傷を持っているからだ。

 だが強者で、尚且つ既に災厄を退け自分の意思で地球を離れられる立場にあるピルグリムは違う。

 叩いて叩いて叩き続けてもメンタルが上向くことはないだろう。どんどん泥濘に沈んでいく。


「だからピルグリムの存在を飲み込めると判断した奴にだけ知らせることにしたんだろう。違うかい?」

「その通りだ。飲み込めるということは精神的な頑健さを備えているということでもある」


 そういう子に指導を行えば目覚ましい成果が上がるだろうと彼は言った。


「なるほど。ですがその場合、私たちの存在はどうなのでしょう?」


 あぁ、旧人類への災厄を新人類が受け持つ場合も難易度上がるんじゃねえかって話ね。

 それは問題ないだろう。


「俺らは旧人類が創り出した叡智だからな。旧人類の延長戦上の存在なんだろう」


 違うか? と目で問うとピルグリムとステラは頷いた。


「ま、そういうわけでピルグリムの参戦は不可能ってわけだ」

「はい……思慮が足りていませんでした。申し訳ありません」


 いやどうかな?

 さっきの新人類云々も含めて平常時なら自分で気づいたと思う。

 この辺が……例のいざという時ってやつなんだろう。


<やはり尊さんと組ませたのは正解でしたね。というわけで尊さん、戦闘訓練についてはこれからピルグリムが行いますので>

「ああ。えっと、知ってるだろうけど自己紹介ね。俺は鷹城尊だ」

「ピルグリムだ。本当の名前は別にあるが翻訳でも発音出来ないし何より友人たちがつけてくれた名だからね」


 ピルグリムと呼んでくれと彼は笑う。


「しかし」

「?」

「これだけしっかりしてるのに何故、君はその齢で十三万円もの借金をしてしまうのか」

「お前そういうのも知らされてるの!?」

<参考資料として尊さんのこれまでの行状は余さずお伝えしましたから>

「勝手な真似を……!!」


 あと十三万つってもアレだからな! 誰か一人にそんな大金借りたわけじゃないかんね!?


<複数の女生徒に借りた結果のが駄目なのでは? ステラは訝しんだ>

「俺の話は良いんだよ! 訓練! さっさと訓練して! 役目でしょ!?」


 それにもう借金は返し終えてるしな!


<分かりました。ですがその前にロックの解除と説明を行いたいのですがよろしいですね?>

「頼む」

<では最初に、尊さんを含め子供たちには複数のロックが施されています>


 段階的に解除し、戦場に出る頃には全て解除され俺たちの全性能が解禁される予定らしい。

 一気に解除しないのは段階を踏みアンロックされた能力の把握と熟達に時間をかけるためなのだとか。


<全部で七つあり基本的には六つ目が最後だと思ってください。

まずは第一段階から第三段階ですがここでは身体能力の制限解除。

第四~五段階目で異能。いわゆる超能力関連の制限が解除されます>


 ……俺ら超能力とかも使えるんだ。

 いやまあ霊的科学なんて胡散臭い単語が出て来るんだし不思議でもないか。


<第六段階で刷り込まれた知識・技術の解禁>

「一~五までを解禁する過程で培ったものと解禁された能力をラストの解除で十全に活かせるようにしたいわけだ」

<はい>

「んで七つ目は? いや大体察しはつくけど」

<これは身体能力や異能を安全圏を超えたレベルで出力するためのリミッターの解除になります>


 やっぱ安全に発揮出来るパフォーマンスを超えた出力を出すためのものだったか。

 死ぬ寸前か、死ぬ前提か、一時的な解除が使い道かな。

 まあ今はそこまで考えなくても良いだろう。まず基本が出来てなきゃ意味ねえし。


<これから第一段階のロックを解除しますが以降は一つ目のロックについては自らの意思でかけ直せるようになります>

「うん? 別にロックをかけ直す必要はなくね?」


 あ、ひょっとして肉体的な性能の向上が理由か?

 これまで通りの力加減で何か壊したりするかもだから?


<それもありますが……まあ見て貰った方が早いでしょう>


 ステラが指を鳴らした瞬間、体感で分かるほどに身体が軽くなった。

 今までも別段、不自由していたわけでもないのにとんでもなく軽い。

 これで一つ目って三段階目を解除して身体能力が完全解禁されたらどうなるんだこれ?


「ってどうしたアヤナちゃん?」

「あの……えっと、違和感ないんですか? 背中……」

「背中? うぉ!? 何じゃこりゃ!?」


 俺の背中につかず離れずの位置に透き通った蒼い光の環っかが浮かんでいる。

 いや輪っかだけじゃない。反対側から覗き込むと環っかの淵に剣のような翼がくっついてるのが見えた。

 実体と非実体の中間みたいな……な、何だこれ?


「こ、これは一体……?」

<霊的な遺伝子も弄ったと説明したでしょう? その影響です>


 形はそれぞれだが異形化した特徴が現れるのだという。

 ……正直、新人類とか言われてもピンと来てなかったが外見的な変化を目にすると頷けるな。


<外見からの推察になりますが尊さんは飛行能力を備えているようですね>

「鷹だから? いやでもこれ空飛べるような代物じゃない気が」


 片方しかねえし。


<形という要素は霊的にも重要なものです。翼がモチーフっぽいので多分、飛べます>

「そ、そうなのか?」

<今の段階で自由自在にとは行かないと思いますが……ちょっとジャンプしてみてください>


 戸惑いつつ指示に従いジャンプしてみる。

 俺としては軽く跳ねただけのつもりだったが二階建ての家ぐらいの高さまでジャンプ出来てしまった。

 しかもこれ、


「落下速度が緩い?」


 分かる。何となく分かるぞ。

 感じる本能に従い力を行使すると俺は滑るように空を飛ぶことが出来た。

 今は上には行けず滑り落ちるように飛ぶことしか出来ないが……多分、いずれはびゅんびゅん飛べそうな気がする。


「……これは超能力、じゃねえよな。四段階からって話だし」

<はい。それとは別枠ですね>


 やっぱりか。


<ともかくこれで理解出来たかと。端的に言って生活する上で邪魔なんですよそれ。

現在の生活様式は旧人類のそれであって新人類のそれに合わせているわけではありません。

物を一から弄るよりも使う側が収納する方が楽なんですよね。

慣れれば霊的特徴だけを引っ込めることも出来るかもしれませんがそれまではロックをかけて頂けると>


 納得の理由だわ。

 こんなんくっつけたままベッドに寝たら色々問題ある。寝返りも打てねえ。


「で、ロックはどうやって?」

<ロックと念じればそれで>

「今は一個だけだが増えたらどうすんの?」


 翼は邪魔だけど超能力を使いたい場合とか。


<既存のロックの権限を渡すだけですからね。個別にロックをかけたい場合は数字で指定すれば大丈夫です>


 一括ならロックだけで全部締まるとのこと。


<何ならカッコ良いキーワードを設定してくれても構いませんよ。申請して頂ければそちらでロックと解除が出来るようにしますので>

「罰ゲームかな?」


 これこれこんな感じの台詞で解除出来るようにしてくださいとか羞恥プレイじゃんね。

 それなら頭の中で念じつつ口で台詞を口走った方が良いよ。

 いやでもコイツは意味のない行為だと知ってるんだよな……。

 それにコイツの性格上、台詞に駄目だしとかしそうだし止めといた方が無難ね。


「さて、待たせたなピルグリム。訓練をつけてもらう身で要求なんざ図々しい話だが」

「理解している。君の考えるプランを実行するだけに足る力をつけて欲しい、だろう?」

「なるはやでな」

「君の来歴(ログ)は既に確認してる。格闘技などの経験はなし。ただ不良との喧嘩の経験はそれなり」


 相違ないかな? と問われたので肯定する。


「その上で私なりに君の育成プランを考えた」

「聞かせてくれ」

「尊、君の適性を利用する」

「……それって」

「ああ、上手くやらなければ詰みかねない状況を作り出し徹底的に追い込む」


 んほほwww

 思わず変な笑いが出てしまった俺を誰が責められる。


「殺すまではいかないが器用に立ち回らねば重傷を追うレベルで実戦形式の訓練を行う」

「……それだけじゃないんだろ?」

「ああ。重傷を負えば君の考える“常識的な治療”しか行わない」

「……つまり、未来技術は使えないと」

「そう。クレイドルの技術を使えば骨折程度は一時間もせず完治するがそれは使わせない」


 なるほどなるほど。痛いところを突いて来る。

 つまり重傷を負うことは時間の浪費と同義ってわけだ。

 更に言えば時間の浪費はイコールで詰みへの可能性が上昇するということでもある。

 他に動ける人間が居れば代わりにプランを実行させられるが今のところそんな奴は居ない。


「最悪だ」

「ああ、今が土壇場だ。しかしその才覚を存分に発揮することが叶えば要求水準以上の力を手に入れることが出来るだろう」


 ……その才覚自体、実に疑わしいんだがね。

 しかし、トーシローの俺なんぞより億倍出来る戦士であるピルグリムの言だ。

 やるっきゃない。それ以上の代案があるわけでもないしな。


「始める前に一つアドバイスを」

「はい」

「肉体の制限を一部解除しただけとは言え背中の翼からも分かるように君はもう旧人類の枠から逸脱した」

「……普通の人間が滑空とか出来ないもんね」


 肉体、異能、制限の区分けはされていたがあれは大まかなものなのだろう。

 俺の翼のように細かい変化は解除の度に付き纏うのだと思う。


「新人類は旧人類よりもスムーズに霊的な力を操ることが出来る。

例えるなら旧人類にとって霊的な力が剣ならば新人類にとっては腕や足のようなもの。

得物を肉体の一部のように操るという表現もあるし、理想はそれだがどうしたって埋まらない溝はある」


 そりゃはじめっから自分に備わってるものと後付けのものでは根本的に違うわな。


「常識に囚われるな。君の脳が思い描く戦い方は旧人類のフォーマットだ」

「……むむむ」

「そうだな。もっと砕いて助言するなら――そう、いっそ異能バトル漫画に出て来るキャラのような立ち回りを心がけると良い」

「それは分かり易い」

「なら始めよう」

「え、も――――」


 俺の顔面目掛け拳が振るわれた。

 見える速度ではあるがあまりに急で、咄嗟に腕を挟み込むことしか出来なかった。


(ぎ……!? お、折れては居ないが……ッッ)


 拳を受けたクロスガードを起点に衝撃が全身を駆け巡る。

 冗談のように吹き飛んだ俺は背中から壁に叩き付けられ反動で前のめりに倒れた。


(ついげ……!? 体勢を立て直……離脱……間に合わない!?)


 それは本当に咄嗟の判断だった。考えるよりも先に身体が動いていた。

 向かって来るピルグリムに半身気味で身体を晒し、


「ほう!」


 光輪についてる剣翼を走らせて迎え撃ったのだ。

 及第点だったらしくピルグリムはわざわざ距離を取ってくれた。

 立ち上がり、息を整える。


(光輪は身体から直接、飛び出てるわけじゃない。隙間がある。しかし身体の一部ではある……ってことか?)


 少し、理解した。

 光輪を右腕に移動させ盾のように固定し剣翼を真っ直ぐ腕に沿うようにする。

 無敵の硬度を誇る、とかではないが多分これは自分で修復出来る。

 壊されたらダメージが俺にも行くが軽微。修復には体力を消耗するというのが何となく分かった。

 力だ。体力を含む五体を巡るエネルギーを注ぎ込む量でコイツの強度は変わる。


「もう入口に立ったか。土壇場でのセンスが煌めくな」

「そいつはどーも……!!」


 今度は俺から攻める。

 殴る、蹴る、ピルグリムからすれば隙だらけのモーションだろう。

 しかしその隙を補ってくれるものが俺にはある。


「絶え間なく光輪を移動し刃を旋回させることで攻撃の手数を増やすと同時に隙を潰す。

粗はある。対処は容易だ。しかし、悪くない。五分と経たずに戦い方の要訣を理解し始めているのは評価に値する!!」


 思考した時にはもう勝手に動いてる。半ばオートみたいなもんだから腕や足より動きが速い。

 使える。これは使える武器だ。


「上手い! 良いぞ! そうだ、そいつは空中戦の補助も出来る!!」


 プロペラ代わりだな。

 光輪を適切な箇所に移動させ剣翼を高速回転させれば空中での緊急回避などに使える。


「ほう!? 強度を極端に下げわざと砕かせてからの超速再生か! 虚を突こうという工夫が見えるな!!」


 などなどお褒めの言葉を頂きながら戦うこと二十分。


「今日はとりあえずここまでにしておこうか」


 俺は無様に床ペロをキメていた。

 いやうん、褒めてくれてたけど普通に終始ボコられてたよね。ピルグリム鬼つええわ。


「い、いやちょっと休憩すれば……」

「考えて戦うタイプだろう君は。初めてだし頭の中を整理する時間が必要だろう」


 無理をするべきではないと言われてしまえば返す言葉もない。

 プロの判断だ。素人の俺がこれ以上何か言うのは違うだろう。


「だ、大丈夫ですか?」

「クッソ疲れたし、あちこちクッソ痛いです」


 ただ後を引かないレベルなんだろうなこれ。

 ロックが一つ解除されたことで向上した肉体性能。多分、回復力とかも高いんだろう。


「あの、私に出来ることはありますか?」

「……?」


 如何なる心境の変化か。

 戦いを始める前よりもアヤナちゃんの面構えが良くなっている気がする。


<命懸けの戦いでなかろうと必死で頑張る背中は時に誰かの心を動かすものということでしょう>


 ……訓練程度で?

 まあ、これはアヤナちゃんが生真面目で純な性格をしてるからだろうな。


「共に戦うことはまだ、その……ごめんなさい。出来そうにありません。きっと足を引っ張ってしまう」


 でもそれ以外の面で何か役に立てることはないか。

 一時的に熱に浮かされて過剰に何かをしなければと思ってる感じだなこれは。

 落ち着けば自分でラインを見極めてあれこれ手助けしてくれると見た。

 だが折角だし今は甘えとこう。


「じゃあギュっと抱き締めて頭撫でながら俺を褒めて?」

「わ、分かりました!!」


 え、マジ!? 正直、ダメ元で言ったつもりなんだけど。

 マジだったようでアヤナちゃんは俺を起すとそのまま胸に抱き寄せてくれた。


「……凄いです、鷹城さんは本当に凄い。今、誰よりも頑張ってます」


 あ、あ、あ! デッケエのが! デッケエのが!

 こ、これは……これは……!!


(うっへへへへへへ♪)


 凄まじい勢いで何かしらのゲージが貯まっていくのを感じるぜ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白いです。 いつも応援しています! でっけえのは、良いですね!!
[良い点] かわいい女の子に褒めてもらいながら延々と戦うとかヴァルハラかな?ちょうど外は地獄だし
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