表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

第1章 ①

 目が覚めて体を起こすと、壁紙の大きな傷が目につく。

 母親が激昂して、皿を投げつけたときのものだ。夕飯の生姜焼きが冷めていたことが原因だった。

 いつ帰ってくるか分からない母親のために準備をしておいたのだが、それが失敗だった。夜遅くに部屋まで怒鳴り込んできて、頭上を掠めて皿が飛んできた。直撃するかと思った。当てるつもりだったと思う。

 それからは母親と一緒に食事をするようにしている。心地良いものではないが、その場で怒られるだけだ。すぐに対処すれば大事にはならない。後から当たり散らされるよりはマシだった。

 その傷を見るたびに、つまり毎日そのことを思い出す。ベッドの位置を変えても、別の傷が見えるようになるだけだ。いつしか部屋の至る所にある傷の数々で、母親の対処法を学び思い出すようになっていた。

 悠人はそれらを一瞥すると、クローゼットを開けて制服に着替える。

 それからキッチンに向かい、卵と野菜を炒めるとその半分を、昨日の残ったおかずと共に弁当に詰める。

 残りの半分は盛り付けてテーブルの上置き、ラップをかけておく。

 時計を見ると、7時半になろうとしていた。

 悠人は急いで弁当をカバンに入れる。30分に1本の電車を逃すと確実に遅刻になる。

 玄関に向かうと母親が寝っ転がっていた。昨日は帰宅しなかった。久しぶり気負いせずに食事ができた。朝方に帰ってきたのだろう。酒の匂いがした。起こすとかえって機嫌を損ねる恐れがある。

 悠人は忍び足で母親をまたいで、静かに家を出た。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ