錆びた歯車、削れ合う:1
「ゲールー!終わったからこっち戻ってー!」
アレクトがゲールを呼び戻した。
「うむ、この話はまた今度」
職人達の輪から離れ、ゲールはアレクトを回収しに戻る。
「今日はありがとよ、それじゃあ動かすぜ」
機関部から降りたスティーブが機器を動かす。
すぐ歯車の噛み合う音がして、時計台が時を刻み始めた。
「それじゃ外まで見に行こうぜ、アレクトの時計合わせが上手く行ってるかどうかよ」
「うん、待って、顔だけ洗わせて」
アレクトが外に出ようとした時、機関室の扉が開く。
「ああ、親方帰ったんですか」
時計台の職人達を纏める人物──エリオだった。
「ああ、ただいま」
続けて二人の男が機関室へとやって来る。
「どうぞ、こちらですマイヤーさん」
エリオは入って来た男達を丁寧に案内している。
「どうも、ふむ。ここがライカンズデルの時計台──」
案内された男──質素な身なりをした赤髪の男は扉のすぐ前に居たアレクトを見て驚きの表情を浮かべる。
「アレクト……?なぜお前がここに」
彼を見たアレクトも驚きで目を見開いた。
「……どうして、ここ居るのよ──」
少しずつ、アレクトの表情が変化する。苛立ちと敵意を含んだ、睨みつけるような表情へと。
「──父さん」
時計台の職人達の間にざわめきが広がる。
「あの人、グレン・マイヤーだよな?」
「ああ、見覚えある。隣はさっき話してたルイスって芸術家だ。よく見とけよカル」
「え?はい」
「てか今アレクトのやつ父さんって──」
職人が話し始める中、アレクトは苛立ちを、グレンは困惑を含んだ眼でお互いを見つめていた。
「すまないエリオさん。先に案内を済ませてくれないか?」
アレクトとグレンの間に緊張が走る中、エリオが案内しているもう一人、ルイスが口を開いた。
「あー、いいんでしょうか?」
「エリオさん、申し訳ないがこの子と話がしたい。ルイスを先に案内してやってくれ」




