母さんそこに魔王がいるよ:4
アレクトが部屋の中へ入るとまず女性が目に入った。
透き通るような白い髪の女性だ。
「……母さん」
アレクトの母親。
彼女が生まれた日に亡くなったその人が、今生まれた赤ん坊を抱いていた。
「奥様、よく頑張られましたね」
産婆が声をかける。
「女の子ですよ」
「……ええ……私の子…………アレクト……」
「旦那様を呼んできます」
そう言い残し、産婆は出て行った。
落ち着いた空気が広がる部屋の中、アレクトは母と自分に近づいた。
(生きてる母さんを見るの、初めてだ)
せめてその姿を記憶に焼き付けようと、二人を見る。
ただ、アレクトは気づく。
(母さんの腕……)
いつか記憶で見た通り、彼女の腕は死霊が持つ青白い光を放っている。
ただ、グレンも産婆も周りの女中もその姿を気にしていないようだった。
(あの腕は……私にしか見えないの?)
「アレクト」
母がアレクトの名を呼んだ。
呼ばれたアレクトは驚くが、赤ん坊の自分が呼ばれたと納得する。
「……ごめんなさいね、アレクト」
「え……?」
「私はね……あなたと一緒に生きられないの」
「どういう事!?」
思わぬ言葉に過去の情景と言う事も忘れアレクトが問いかけた。
「グレンにも……きっと寂しい思いをさせる」
「シオン!産まれたのか?」
慌ただしくグレンが部屋へと入ってきた。
「ええ、グレン」
アレクトの母、シオンがグレンに赤ん坊を見せる。
「アレクト、女の子よ」
「そうか……よく頑張った……」
あのグレンが感極まった様子でシオンからアレクトを受け取った。




