表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/48

母さんそこに魔王がいるよ:3

 再びアレクトが気付いた時、再び彼女は生家の屋敷へと戻っていた。

(ここは確か──)

 周りを見るとアレクトにとっては馴染みの場所だった。

(大時計やら、組み立て前の内部機関やらで一杯)

 彼女がよく遊び場にしていた物置となっているだった。

(どうしてまたこんな場所へ飛んできたのかしら)

 そんなアレクトの背後で、鉄のぶつかる大きな音がした。

「ヒッ──!なに?」


 アレクトの真後ろには、彼女のよく知る自動人形(オートマタ)がいた。

「ゲール!」

 ほっとした彼女はゲールを助け起こそうとするが、幾ら力を込めても動かない彼を相手取り、未だ彼の記憶を見ている事に気付いた。

(それじゃあ今は、ゲールが自動人形として目覚めた瞬間?)

 アレクトの前のゲールはずっと項垂れている。時折何かを呟いているが、何を言っているのかは不明だ。


 その状態のまま、暫く時間が過ぎた。

(……いつまでこうしてるんだろ)

 アレクトが待っても何かが起こる様子はない。


 この場にいても仕方ないと考え、アレクトは部屋の外に続くドアの方へと向かう。

(……出られるよね?)

 アレクトはドアノブに手を掛けるが、ドアはびくともしない。

 彼女は一瞬落胆するが、すぐ後扉が一人でに開いた。

 開けたのはマイヤー家の執事だった。


 執事は物置の中へと入り、中の様子を伺い始める。

 一瞬迷った後、アレクトは物置から出る事にした。

 屋敷の中は少し騒がしい。

 物置の外には、様子を伺いに来た使用人達が立っており。すぐ近くの部屋にはタオルと桶を持った女中達が動き回っていた。

(そうか、この日は確か)

 アレクトが思い至ったのはゲールと自身の誕生日。

(もしかして、私が産まれるのを待ってるのかな?)

 女中でごった返す、その部屋のドアは開け放たれていた。

(……この先へ行けば)

 母に会えるかも知れない。そう強い期待を抱き、アレクトは進んだ。

 まさに扉に入ろうとした時。

「ぶわっ!」

 アレクトは背後から強い衝撃を受けて、床に頭をぶつけた。

 背後からやって来たのは先程物置を見ていた執事だった。

「後にしてくれないか?今妻が──」

「しかし旦那様、物置であの人形が動いてるのですよ!」

「そんな訳ないだろう……」

 部屋から出て来たのはグレンだった。

 落ち着きなさげに頭を掻き、執事を連れ立って物置へと行く。

「……若い」

 少なくとも現在ほど皺は濃くない。

 アレクトが打ちつけた額を摩っていると、辺りが俄かに騒がしくなった。

(赤ん坊の声がする)

 それが部屋の中から聞こえてくると、彼女は気付いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ