怖いと感じる前に飛び込んでみる:2
何故時計を触っていると落ち着くのか
それは幼少期からの忌々しい刷り込みのせいであるとアレクトは考えていた。
幼いアレクトの玩具は家中に機械、時計、多様な工具など。お気に入りは父に貰った懐中時計。
最初はただ発条を回したり、煌びやかな彫金を見たり蓋の裏の絵を見たりするだけだったが。成長するにつれて彼女は時計の外側だけでなく、内側にも興味を持ち始めたのだ。
「これで、よし」
懐中時計が一つ完成した。
(確かこれは……10歳の誕生日にもらったやつ)
アレクトは発条を巻き、魔法の光を与える。
作業場の風景が変わっていく。
暗い死の世界に明るさが差していく。
「……父さん」
アレクトが座る作業台の隣にグレンの姿があった。
グレンは真剣な面持ちで、時計の蓋を彩る彫金をしていた。
『マイヤー様、連絡がございます』
ノックと共に執事の声がする。
『入っていいぞ』
グレンは時計から目を離さずに返答する。
「なんだ、母さんはいないんだ」
アレクトの反応は、先ほどとは違い淡白なものだった。
『失礼します……おや、それはお嬢様への?』
『ああ、誕生日のな』
『良いことだと思います、お嬢様はそれはそれは習い事を頑張っておりまして……』
『……そうか、それで?新しい時計だな?』
二人はそこから商談を始めた。
「そうか…………ってそれだけなの?」
二人の会話を若干白い目で見つつ、アレクトは呟く。




