送り狼達:1
ゲールに襲いかかるように死霊の青白い躰が飛びかかる。温度変化に鈍感なゲールでさえ、しがみつかれた背中に冷たさを感じる。
「なんだ……!?」
そして重さ、ゲールの半分程の背丈の少女が持ってると思えない力で死霊の少女は彼を引き倒しにかかる。
それだけではない、静観していた大小の獣型の死霊達もゲール達ににじり寄って来ている。
「く……離れろ!」
アレクトを持ち上げながら、ゲールは少女を振り払う。
「ぐえ……」
勢いよく振られたアレクトが寝ぼけ半分に声を上げる。意識は朦朧としているが、ゲールにしがみつく手の力が強くなる。
ゲールは死霊の包囲網から急いで離れようとするが、彼の正面に大型の死霊が立ち塞がった。
「面倒な……」
アレクトが起きれば獣の死霊程度は散らせるかも知れないが、今のように寝ぼけている状態では期待はできない。
大型の獣──狼に見える姿の死霊がゲールに飛びかかった。
(家までは走って十数分か)
ゲールの鉄の腕が襲い来る狼の顔面を張り倒す。青白い体は倒れるが、疲弊した様子は無い。
「アレクト、捕まっていろよ」
アレクトを両手で抱え直し、ゲールは走り込んだ。
アレクトの灯した薄紫に光るランタンを片手にゲールは暗い道を進んでいた。
(小さい奴は撒いたな)
ゲールは街の大通りを避け、暗い路地へと入っていた。
彼の思惑通り、獣型の大小の死霊はここまで追っては来ていなかった。
(あの子供は……)
背後を振り向くが、青白い影は見当たらない。
ほっと一息をついたのも束の間、ゲールの持つランタンの光が翳り始める。
「おい……おい……待ってくれよ、起きてくれアレクト!」
真っ暗闇の広がる街の路地、こんな所で灯りが切れるのは死活問題に関わる。
その場に立ち止まり、ゲールはアレクトを揺さぶった。
「起きろ!せめてこれに光をくれ!」
一応ゲールの声は届いたようで、アレクトはゲールが差し出すランタンを手に取った。頼りなく揺れていた薄紫の光が安定を取り戻す。
「起きてるな、降ろすぞ」
「うぁーー、ねむ……」
大きな欠伸をしながら、覚束ない足取りで、ゲールにもたれ掛かりながらアレクトは立った。
「おい、緊急事態だぞ」
「……ねむいの、しゃあないでしょうに」
ゲールと手を繋ぎ、ふらふらと歩いている。
「もうしばらくの間起きていてくれ、じき家に──」
頭上から青白い影が落ちて来た。
「──アレクト、こっちだ」
ランタンを構えゲールはアレクトを背に隠す。
ゲール達の正面、路地から出ようという場所に2体の死霊が立ちはだかっていた。
「人形さん……ずるい……」
羨むような、じっとり重い感情の籠る声、先程から二人を追う少女の死霊だ。狼の死霊の背に乗ってゲール達を追いかけて来たらしい。
「貴方も、私と同じじゃない……」
羨むような、重い感情を込めた声で。
「死んでるのに……人形になって……温かい場所にいるなんて……」
じりじりと、ゲール達の方にやって来る。
コンテスト期間過ぎちゃったけど完結目指して頑張ります




