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止まった時間、進まない場所:1

 商店街を出た後、アレクトはぼんやりと時計台のほうを眺めていた。

 ライカンズデルの中央、シンボルの時計台は12時ちょうどを指している。

(……止まってるな)

 アレクトは定期的に時計台の方を確認していたが、時計の長針と短針はピクリとも動かない。アレは時計としての役割を果たしていない様子だった。

「アレクト、どうした」

(どうして止まってるんだろ、壊れてるのかな)

「アレクトー?」

(治してあげたいな……なんか落ち着かない)

「アレクト」

「…………ぐぅ」

「アレクトーー」

「────ッ!」

 アレクトは我に返った。

 歩きながらぼうっとしていたので前につんのめり、転びそうになる。

「あわあわ」

 手から

 転びかけたところをゲールに支えられた。

「っと、ありがとゲール……」

「疲れたようだな」

 彼女は歩きながら眠りに落ちかけていた様子だった。


 ゲールはアレクトを支え、彼女が手に持つ懐中時計で時刻を確認する。

「朝の4時か、普段なら起きているはずない時間だ」

「……ねてないっ…………へん」

「夜更かしとか……しないタイプだものなぁ」


(休ませたほうがよさそうだが……)

 薄着のアレクトにこの『死霊のライカンズデル』は寒すぎる。

 それに先ほどのレンフレッドの話では生者はどんどん体温を奪われていくという。

 ゲールは自分が着ているコートを見た。濡れて凍って乾いたゲールのコートは霜が降りたような状態だった。

「…………しょうがない」

 ゲールはコートを脱いだ。

「アレクト」

 ゲールが手を差し伸べる。

「……なによ」

 無言で一連の動作を見ていたアレクトには察しがついていた。

 そしてしばらく問答した後、不服そうにゲールの腕に抱き上げられていた。

「……ねえ、本当にこんな格好で歩くの?」

「背負うと君が冷えるだろう」

「……まあね」

 アレクトの体格が小さいおかげか、彼女はゲールの腕にすっぽり収まった。

『長居すると、身体が冷え切ってしまう』

 疲れた様子のアレクトを見て、ゲールはレンフレッドの言葉を思い出す。

(冷え切ってしまうということは……十中八九ここで死ぬということだろう)

 ゲールは速足で家路を目指した。

 彼女だけでも、元の世界に帰さなければという使命感と共に。




 アレクトの口数が少なくなりゲールが周りに気を配る余裕ができた時、彼はあることに気づいた。

(……小さい死霊が増えてきている)

 外を歩いている間、小さな死霊たちはずっと二人を追い続けていた。

 最初はまばらだった死霊たちは今やちょっとした群れとなっている。

 距離はあるが、数による威圧感が彼を不安にさせた。

(送り狼の話を思い出すな)

 夜道を行く旅人の後ろをついてくるという日本の妖怪だ。

 何処からとな現れて、旅人の周囲の警戒や護衛をしてくれるが、旅人が転ぶと一転して襲い掛かってくる──

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