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悩む暇があれば絵を描きたい、けど針一本描けない:1

 机に置かれた人形を前にしてアレクトは苦悩していた。

『出来れば今夜までに答えを貰えるかい?僕は時計台近くの劇場に居るよ』

 そう言い残し、ルイスは帰って行った。

 彼が帰ってからずっと、アレクトは家中を徘徊している。


「合作……人形……絵……時計台……クソ親父……」

 ぶつぶつと呟きながら上へ下へと家の中を歩き回っていた。

「悩みはどれだ?」

 見かねたゲールがアレクトへ尋ねる。

「全部!」

 アレクトが吠えた。

「まず……絵を描きたい!」

「うむ」

「時計台の絵!…………でも……」

「自信が無いようだな」

 ゆっくりとアレクトがその場にしゃがみ込んでいく。

「次に人形、自動人形(オートマタ)造るなんてすごく面白そう。それも……あのルイス、天才作家がデザインした自動人形(オートマタ)なんて──」

「同じ存在ならここに居るぞ。憧れたか?」

 戯けて手を振るゲールをアレクトは無視する。

「けど……自動人形(オートマタ)の製作手伝うのなら……父さんと会わなくちゃならない……」


 アレクトは手に持っていた懐中時計を強く握り締めた。

「それが一番の問題か?」

 ゲールの言葉にアレクトはため息をつく。

「……そう、今更会いたくもない」

 今や床に寝転がっているアレクトが苦々しげに言い放つ。

「……どうせ会ったらまた絵描きなんて辞めろとか言われるに決まってる」

 小さな声で喋るアレクトの声をゲールは静かに聞いている。

「そもそも……あの2人と合作なんて言われても……私の存在なんて霞んじゃう」

 今のアレクトは外で見せる溌剌とした姿ではない、ゲールにしか見せない自信の無い時の彼女の姿だ。

「それで多少有名になっても……父さんの力を借りただけで……世間でも、私の中でも、結局あいつに頼ったって事が、一生付き纏ってくる」

 顔を手で覆いつつ、ゲールに本心を打ち明けていた。

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