表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/48

それでも時間は過ぎて行く:3

「どうぞ」

 ルイスが机の上に置いたのは一体の人形だった。

「わ、かわいい!」

 両手で抱えられる程の大きさ、子供向けと言うよりはインテリアとして飾られるような人形だ。

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

 質素な衣服を着せられた手足は鈍色に光り、顔にはゲールが付けている物と同じような仮面を被っている。


「ルイスさん、これはもしかすると……」

 人形が何かに気付いたらしきゲールが口を開く。

「ああ、ゲール。君が思った通りの物だよ」

 ルイスが人形の躰、心臓のある辺りに手を当てた。

「ゲールと同じように作られた。ちゃんと中身も人と同じように組まれている」

 ルイスが魔力を込めると、黄色い光が人形に吸い込まれる。それと同時に人形がピクリと動いた。

 歯車の動く微かな音が人形から響き出す。

「じゃあ、これも自動人形(オートマタ)?」

 自動人形(オートマタ)が動き出すのをアレクトは固唾を呑んで見守っていた。

「そう、17年ぶりの作品だよ」

 ルイスが人形から手を離す。人形とルイスの手を繋ぐ黄色の光条が糸のように両者を繋いだ。

「心臓に魔力を込めると動き出す……筈なんだが」

 しばらく経ってからやっと自動人形(オートマタ)が立ち上がった。ぎこちない動きでアレクトを向き、ぺこりと一礼する。

「良かったわねゲール、弟よ」

「八十七歳にもなってから弟が出来るのは複雑な気分だな」


 しかし、自動人形(オートマタ)は突然力が抜けたようにバランスを崩し倒れてしまった。

「ああ、ダメだ。これでは自動人形など程遠い……」

 ルイスは疲れた顔で溜息を吐く。

 ただ、すぐに気を取り直した様子でアレクトに笑いかけた。

「それでだアレクト、この17年ぶりの自動人形(オートマタ)達を完成させるのに力を貸して欲しいんだ」

「え?『達』?他にもあるんですか?」

「ああ、この子は一部だよ。グレンがその辺も手紙に書いてくれた筈なんだけど」

 そこまで聞いたアレクトの顔がさっと引きつる。

「き……昨日は手紙を読まなかったもので……」

 アレクトの後ろでは愉快げな歯車の音が鳴っている。

「そうか、まあ本題はここから先なんだ」

 ルイスの眼が真剣さを帯び、アレクトも姿勢を正す。

「次に作る人形達を、ゲール以来の新たな自動人形(オートマタ)としてこのライカンズデルの祭りで発表する」

 ルイスの目には力が宿っている。燃える芸術家らしい熱意の籠る瞳だ。

「出来る事なら完全な自動人形(オートマタ)を……ゲールのような傑作を生み出したい。この計画は1年前からグレンと始めたんだが……これ以上は奴でも手詰まりなようなんだ」

 ここでルイスは頭を下げた。

「そこで君にも助けを求めたい。同じ芸術家として、あと奴の娘としての技術者としての力も欲しい。勿論出来上がった自動人形(オートマタ)の製作者の一人としても数える。どうか助けてくれないか?」

(ルイスさんと私と………………父さん、の合作)

 暫く部屋には沈黙と、歯車の音が聞こえていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ