第8話 鍛錬
「じゃあまずは剣を降る練習からしないとな。マナ、剣は持てるか?」
「分からないけどやってみます。」
マナはリイの父親から剣を受け取るとそれを構えてみる。マナが持ったのは細めのロングソードといった剣だが、当然金属でできているため重さはそこそこある。
「せーの!ふん!・・・・うわっと」
マナは構えた剣を振り下ろしてみる。しかし、剣を振るうことなど今までしたことはなかったため、バランスを崩してしまいよろける。
「おっとっと。危なかったぁ。」
「うん。まずは剣の素振りから始めないといけないな。じゃあとりあえず素振り千回だな。」
「せ、千回?!!」
マナはいきなり素振り千回と言われてしまい、驚く。しかし、それに対してリイの父親はきっぱりと言った。
「このくらいで驚いていたら駄目だ。剣士しかり魔法剣士になったら相手が倒れるまで何百回何千回と剣を振り続けることになるんだ。しかもそれを相手の剣や肉体にだ。空気中で千回くらい朝飯前にならないといけないぞ。」
「素振り千回を朝飯前・・・・か。」
リイの父親にそう言われたマナは自分の手元の剣を見つめる。この先魔法剣士としてこの世界で生きることになるのであれば剣をひたすら振り続けなければならない。
「よし、やるか。」
「はっ!!」
ドカーン
「おお。今日も腕を上げたな、リイ。」
「お父さん。そりゃあ毎日練習してるからね。・・・・そっちの方はどうなの?」
「ああ。マナの方なら・・・・」
「46!、47、48・・・・はあ。手が痛い・・・・。」
「まだまだ駄目みたいだな。」
「・・・・きついです。」
「まあ、初日なんだしこんなもんだろ。今日はここまでにして休もう。」
「・・・・はい。」
そして夜、夕食を食べ終わった二人はリイの部屋で寛いでいた。まだここでの暮らしに慣れていないマナがそわそわとしていると、リイの方から話しかけてきた。
「ねえ。本当に私と同じ学校に通うつもりなの?」
「え?」
話しかけてきたリイの様子はふざけている様子もおちゃらけている様子もなく、至って真面目な様子だった。どう答えるか迷っているとリイが続けて話してくる。
「私は幼少期から魔術師になるために一生懸命、欠かさずに練習をし続けてきた。でもマナはこの世界に来たばかりで・・・・魔法にすらまともに触れたことがないんだよね?今体内の魔力量が高くて、威力のある魔法を放てるのだとしてもいずれ限界が来るはずだよ。」
リイは幼少期から魔術師を志して練習を重ねていた。だからこそ魔法ド素人のマナが王立魔法学校に通うことに疑問を抱いていたのだろう。
マナは少し悩み、間をおいてからゆっくりと口を開いた。
「リイの言うとおり、俺は魔法に触れたこともないし、この世界のことも全くわからない。・・・・だからこそ俺にはまだ持てないんだ。」
「何を?」
「この世界で生きるための目標が。だからリイのお父さんにこれからのことを提示されたとき、俺はやりたいと思った。だから駄目かもしれないけど、俺は挑戦してみたいんだ。・・・・もし俺が合格できたら、リイから魔法のこととか聞きたいし。」
「そう。なら、見守っててあげる。言っとくけど私は落ちないから。話が聞きたかったら受かってみせなさい。」
「・・・・うん。ありがとう。」
この日、これ以上二人が話すことはなかった。