第6話 魔法の才能
「はあ、はあ。」
息を切らしながらマナとリイは山から降りてくる。
「ふ、二人とも大丈夫か?」
ボロボロになっている状態で下山した二人を見てリイの父親は心配した声を上げる。
「あ、大丈夫です・・・・なんとか」
「山に登っている途中でバークウルフに襲われちゃって・・・・」
「バークウルフ?!本当に君たち大丈夫なのか?」
リイの父親は心配そうに二人に近寄って二人の体を調べようとする。それをリイは離れながら答える。
「ちょっと怪我しただけだから大丈夫だよ。」
「そ、そうか・・・・。それにしてもあのバークウルフからよく逃げ切れたな・・・・。それともリイが倒したのか?」
「ううん。倒したのは私じゃなくてマナ。マナが倒してくれたおかげで私たちはここに帰ってこれた。」
「マナが?」
「うん。けど・・・・」
リイはマナの方を見つめる。
「最初は魔法のこと知らない素振りを見せてたのになんであの時魔法が使えたの?・・・・本当は魔法のこと知ってて・・・・」
「あっ、いや、あの時は・・・・。声が聞こえたんだ、・・・・誰かの。」
「声??どこから?」
「わからない。俺にはまるで頭の中に囁かれるように声が聞こえた。その時にあれが使えたんだ。」
「・・・・そう。」
リイは半分納得しないような返事をして振り向いた。
「とりあえず今日はもう暗いし家に入ってご飯を食べよう。」
リイの父親はこの場にいる全員に呼びかける。
「あ、一応山菜も持って帰ってます。」
「おっ、いいぞ!今日はご馳走だな。」
リイの父親とマナは機嫌良く家の中に入っていく。
リイはチラッと夜空を見つめ、ため息を吐いてから家に入っていくのだった。
次の日、リイの家の空いた一室を貰って寝ていたマナは窓から漏れた朝日を受けて目が覚めた。
「ん?朝か・・・・。」
マナはベッドから起き上がるとシワが寄った寝間着をはたく。
その時、窓から物音が聞こえた。
「ん?なんだろう。」
マナは軽く身支度を済ませてから部屋を出る。
「あ、マナおはよう。」
「う、うん。おはよう。」
表に出るとそこにはリイとリイの父親がいた。
「・・・・何してるの?」
「鍛錬だよ、魔法の。」
よく見るとリイの背後には的が置いてあり、それらがいくつか破壊されている。あの的たちを狙って魔法を放っていたのだろう。
「私の夢は王国魔術師だからね。」
「王国魔術師?」
「王国のために使えている魔法使いたちのことだよ。魔法による戦闘や護衛を得意としてるの。」
「へえ、そんなのがあるんだ。」
二人が話しているところにリイの父親が近づいてきた。
「王国魔術師は魔術師の中でも優秀な者達が選ばれる最上位の職業だ。よほど鍛錬を積まないとなれない。とは言ってもリイはこの年ではだいぶ優秀な方だがな。」
「へえ、リイって凄いんですね。」
「折角だからマナもやってみるかい?バークウルフを倒したみたいだしリイにも負けない魔力量が出せるかもしれないぞ。」
「あっ、はい。」
マナは言われるがままに的の前に立つ。二人に見つめられ緊張する中、マナは的に向かって手を構える。
「それじゃあ、あの的にファイアを撃ってみてくれ。」
「・・・・ファイア(Lv0)!!」
的に向かってマナの放ったファイア(Lv0)が放たれる。
「・・・・え?!」