第19話 マナとリイ
「姉妹?俺たちは姉妹じゃないよ。」
「え?そうなの?二人ともそっくりだし一緒にいるから姉妹で入学したのかと思っちゃった。」
「に、似てる?!」
マナとリイはお互いの顔を見つめ合う。今まで気にしたことがなかったが、確かにいつも鏡で見ている自分の顔と今見ている相手の顔は姉妹と言われても違和感は無かった。
「わ、わわ、私はマナなんかと姉妹なんかじゃないから!」
「な、なんかって言われた・・・・。でも俺とリイがそっくりか・・・・今まで考えたことも無かった。」
マナにとってリイは自分がこの世界に迷い込んでしまった時に拾って家に招いてくれた恩人であり、それから仲を深めて友だちになったと思っており、それ以外の事を考えたことは無かった。
「あれ?二人とも意外とショックを受けてる感じ?!・・・・合格者の間では結構噂が広まってるんだけどな・・・・。魔法剣士で合格した美少女と、もう一人瓜ふたつの姉妹が入学してるって・・・・」
「え?!私たちが姉妹って噂がもう既に広まってるの?!・・・・もう!やだ!!寝る!」
「あ、リイ・・・・」
バタン!!
リイは叫び終わると自室へと篭ってしまう。気まずくなった部屋に三人が残される。
「えっと、とりあえずお互い合格祝いってことでお祝いでもし合う?」
「ごめん。俺の方もまだ気持ちの整理がつかなくて。1回部屋に戻るよ。」
バタン。
「・・・・どうしよう!シール、二人とも部屋に引き篭もっちゃたよ〜。」
「・・・・お姉ちゃんが余計なこと言ったせいだと思う。」
「え、私のせい?!・・・・でも校内で既に噂になっちゃってたらいずれこうなるとは思うんだけど。」
「確かに。でもこのことで引き篭もっちゃうのはもしかしたら二人はそんなに仲良くないのかも。」
「う〜ん・・・・。」
確かに姉妹のような二人なら昔から言われても良さそうだが、今回が初でしかもこれだけ関係が崩れている。二人の仲はそこまで良くないのかもしれない。
「いや、同じ学校に入学した二人ならきっと仲直りしてくれるよ。」
「・・・・うん。そうだね。」
「リイと見た目がそっくりか・・・・。」
そもそもこの容姿は自分のものではないためマナは少し不信感を抱く。突如としてこの世界に転生し、性別と見た目が変わってリイに拾われた。その女の子と容姿がそっくりなんて偶然にしては出来過ぎている。
「・・・・たまに俺の心の中に話しかけてる人、何か知ってるんじゃないですか?」
マナは一人ベッドの上でそこにはいない人に話しかける。すると、頭の中に直接声が聞こえてきた。
「あの子と見た目を似せたわけじゃなかったんだけど・・・・、やっぱり似ちゃったみたいね。」
「・・・・ってことは何か知ってるんですよね。一体なんで俺はリイとそっくりなんですか。」
「・・・・それはその内分かるわ。今はただ、前に進んで。・・・・リイをよろしく頼むわね。」
声の主はそう言い残すと、もう声は聞こえなくなっていた。
「・・・・リイをよろしく、か。」
そして翌朝、レインとシールは目を覚ましてベッドから起き上がった。
「ふあ〜。おはようシール、今日から入学式だね。」
「うん。」
「・・・・二人は大丈夫かな?」
「・・・・分からない。いきなり喧嘩したり嫌悪な雰囲気にならないといいけど・・・・。」
ガチャ。
「あ、二人ともおはよう。」
「おはよう、マナちゃん。」
「おはよう。」
「朝ご飯できてるよ。俺とリイで作っといたから。」
「え?リイちゃんと?」
「そう!丁度できた頃だから一緒に食べようぜ。」
「・・・・マナ、ジャガイモ大きく切りすぎ。これじゃあ少し食べづらいよ。」
「え〜?!そんなこと無いと思うんだけどな〜。」
ジャガイモのサイズで少しマナとリイは揉める。それを見てレインとシールは安堵の息を漏らす。
「ふふ。心配は要らなそうだね。お姉ちゃん。」
「うん。仲良くやっていけそう。」
そしていよいよ入学式がやってくる