第11話 ありがとう
「リイ、気をつけて行くんだぞ。」
「分かってるよ、お父さん。王国魔術師目指して第一歩だね。」
「えーっと、今までお世話になりました。俺も頑張って立派な魔法剣士になってみせます。」
「ああ。頑張れよ、マナ。」
いよいよ王立魔法学校の受験日が近づいていた。この日のために一生懸命鍛錬をしてきたリイとマナは家を出発する。
「村の出口に馬車を読んでいるはずよ。それに乗っていきなさい。」
「ありがとう、お母さん。それじゃあ行ってくる。」
リイとマナは村の出口で止まっている馬車に乗り込み、村を後にした。
「王立魔法学校には一週間程かかるからな。お嬢ちゃんたちのんびりしときなさい。」
馬主の人が気を使って声をかけてくれた。
「はい。ありがとうございます。」
マナは馬主の人に言われたとおりゆっくりと寛ぎながら今までのことを思い返していた。
今にして思えばマナはこの世界に転生したとき、服一着も持っていなかった上に性別すら変わっていた。もしリイがマナを見つけてくれなかったらマナ未だに途方に暮れていたかもしれない。
「ねえ、リイ。」
「どうしたのマナ?」
「・・・・ありがとね。」
「へ?急にどうしたのよ。」
「リイが俺を見つけてくれていなければ今の俺はどうなっていたか分からない。最悪魔物に食べられていた可能性だってありえる。体は女の子だし魔物にとってはごちそうかもしれないから。」
「マナ・・・・」
そしてリイがマナを見つけてくれたあと、リイは家族のもとに連れていき、家族は快くマナを保護してくれた。普通だったらもっと非難されるものだと思うのだが、リイの家族はそのような素振りも見せなかった。
「本当に優しい家族だったな。だから家族の分もリイに伝えておくよ。本当にありがとう。」
「や、やめてよ。でもいつまでも親の世話にはなっていられないからね。王立魔法学校は合格者に寮を無償で提供してくださるの。マナもこれ以上迷惑かけたくないって思ったらちゃんと受かりなさい。そして仮に落ちてももう私たちに頼らないことね。」
「そうだね。だからこそ受からないといけない。これ以上俺には引き返す時間も場所も無いのだから。」
「マナ・・・・。」
リイはマナに比較的冷た目に、マナが優しさに甘えすぎてしまわないように現実を突き立てたつもりだったがマナの覚悟は決まっているようだった。
「ごめんマナ。私マナのこと人に甘えているだけの人だと思ってた。意外と責任感というかなんだろう。あるんだね、そう言うのが。」
「リイ・・・・。いや、いいさ。現実俺は甘えてたと思うし。まだリイの家族に保護されたときの俺は第0歩なんだ。ちゃんと第一歩踏み出して、親御さんたちにお礼を持っていくよ。」
「うん。期待して待ってるよ。」
そう言うと二人はくすっと笑い合った。