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第17話 勇者が街についたら壺を隠せ

ちっともタイトルが話の内容に関係ないです

 ネブリーナは王都ほどは広くないものの、かなり発展しているなという印象を

 抱かせてくれる街だった。中央に大きな教会があり、そこを中心に道は大きく

 4つに伸び、それぞれの通りで施設が発展している街で、魔王の住んでいた場所に

 近いわりには人がいる印象だ。


「ついてこい。まずは俺の行きつけの、西通りにあるバーにいく」


 オウガが街に入ったので、その後をただただついていく。

 今いるのは4つに分かれている内の南通りだ。食堂があったり、

 武器屋があったりと、標準的な部分はあまり王都とかわらない。

 ただ一つ、「薬草魔女の喫茶店」という、ここの明るい通りには

 あまり似つかわしくない店のみが目を惹いた。


 そして、どこか至る所から視線が刺さるような気がする。

 悪意を持っている見てくるというよりは、少し好奇な、それでいてこちらとは

 積極的に関わろうとはして来ないような、そんな視線だった。


 それらの街並みを見ている内に、中央に見えた大きな教会に辿り着いた。

 教会だと思っていたが、よくよく見るとこの世界で祀られている

 神様を模した像と言うよりは、むしろ悪魔とか、そっちを模したかのような像が

 飾られていた。もしかして悪魔信仰か?


「あ! この像! お父様そっくりなのだ!」


 ミアが突如、少し嬉しそうな顔で像を指さした。

 そういえば、ミアは悪魔族なんだっけ。


「この街は魔王様を信仰しているからな。ミスト領にあんまり狂暴な魔物がいないのも、

 他の領地が侵攻して来ないのも魔王様の威光のおかげって訳だ。まぁ、そんな事

 言いながら信者も教祖も誰一人魔王の姿なんて見た事ないってんだがな」


 いや、あなたの後ろにいますよ、その魔王様。

 この像とはだいぶ姿形が違うけど、いますよ、ここに。


「我は何もしてないのに崇められるなんて、変な気分なのだ」


「王族も、何もしてなくても周囲からちやほやされますよ、

 そういうのと似た感じなんじゃないですか」


 わりとソフィアが手厳しい事を言っている。まあ、確かに貴族とか王族の行う政治は

 腐敗してる部分が多かったのは事実だったけど。

 今の王都は一体どうなってるんだろうか。まあ、どうでもいいっちゃいいんだけど。

 そんな事を考えてるとオウガがとある店の前ではたと足を止めた。

 この世界の言語で「ルークス」とだけ書かれている、質素なバーだ。


「入るぞ」


「俺とソフィアは未成年なんだけど……」


「俺がいるから大丈夫だ。……って、そっちの白髪の嬢ちゃんは成人してんのか?

 全然そうは見えないんだが」


「これでも500年とちょっとは生きてるのだ! 」


 ミアのそれを戯言と受け止めたのか、オウガは興味もなさそうにバーの扉を開けた。


 中は薄暗く、木造りの古めかしい雰囲気が味を出していた。

 昼間だからかあまり人はおらず、カウンターに青い着流しを着た、

 青髪の30後半くらいの人物が静かに酒を飲む男性と、その向こう側で薄紫色の髪を

 カウンターにまばらに広げ、突っ伏してぐっすりと眠っている女性がいた。

 新たに店に入る自分達四人をちらりと見て、男の方が微かに驚きの混じったような

 笑顔を向けてきた。


「よお! オウガ! 久しいな! そっちにいる奴らは友達……いや、恋人か?

 こりゃまた随分、べっぴんを連れてきたな! しかも三人と来た!」


 男は歩いて少しふらついた足取りでこっちに来て、オウガの肩をばしばしと叩いた。

 オーガ族であるオウガは、身長は優に190を越えてそうだが、

 この男もそれと張り合うレベルの高身長で、しかもガタイも良かった。


「いや、友達ではない。それにこの黒髪の人間は男だ」


「おいおいおい、まじか! 随分きれいな顔立ちしてんじゃねーか!」


「コンプレックスだからあまり言わないでくれませんか? 」


 こちらに来て、俺の肩に手を置きながら豪快に笑っていた男の手を振り払い、

 少し冷たく言い放つ。初対面でこのおっさんは随分失礼じゃないだろうか。

 気にしてるのに! こっちだって気にしてるのに!


「はっはっは、こりゃあ失礼! お詫びに奢ってやるよ、何が良い?」


「まだ未成年なので、遠慮しときます」


「んー? 未成年か! そりゃあ駄目だな! 帰ろう! おうちにかえろう!」


「エクイテス、飲みすぎだ。少し酔いを醒ませ、話はそれからだ。

 お前の言ってた『ギィ』討伐のお仲間を連れてきてやったんだ、感謝しろよ」


 その言葉を聞いた瞬間、エクイテスと呼ばれた男の目にぎらり、と光が

 宿ったのを見た。先ほどまでの酔っぱらいの目はどこへやら、鋭い、

 修羅場を何度も潜ってきた人の目になっていた。


「その話、本当か?」


「あぁ。少なくとも、このユイと戦って感じた。彼は強い、確実に」


 ぽん、と背中をたたかれる。オウガが、俺の背中に手を添えていた。

 会って短時間にここまで信用されたのはミア以来な気がする。

 しかし、あのあっという間の戦いで彼には何がわかったのだろう。

 その様子をみて、エクイテスは顎に手を当てる。


「人間に殺されたくて手加減しまくってるお前が言っても説得力無いが、

 本当に強いかどうか試そうじゃねーか。よし、お前、ユイって言ったか。

 俺と戦うぞ、ついてこい!」


 エクイテスは扉に手をかけ、後ろを振り返り、ふっと笑いかけてきて

 そのまま外へ出ていった。


「あれ、あのエクイテスって人お酒代払って無くない?」


「あ」


 外へ出ていったエクイテスを、四人で慌てて追いかける。

 店主の女性は、そんなドタバタした状況でも寝息を立てながらぐっすりと眠っていた。

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