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第16話 福も内、鬼も内、ファイト

「ネブリーナって街を守れ? 一体、何から?」


 俺が質問すると、オーガは先ほど見ていた、街の方向とは反対側の、山を指さした。


「あの万年雪が降り積もる、ケイブマウンテン。そこから来る怪物──『ギィ』を、

 お前たちに追い払ってほしい。無論、討伐できるのならばそうして欲しいが」


 そこまで言うと、オーガは立ち上がり斧を再び持った。


「黒髪の人間、お前は強い。さっきまで戦ってた相手に頼める義理もねーが……

 頼めはしないか? それなりの報酬も支払うつもりだ。それでも嫌だってんなら、

 仕方ないけどな」


 先ほど俺達を襲ってきた表情からは想像もできないほど、オーガの目には

 決意と、期待がみなぎっていた。

 どうしようか。勿論、別に俺達にそんな事をする義理なんてない。でも。

 助けてくれ、と頼まれて断れるほど、ここに非情な人間はいない。と思う。


 ミアとソフィアを見る。ミアは、こちらの目を見て俺の意思がわかったのか、

 こくり、と頷くいた。ソフィアは、「少し怖いですが、私はミアと勇者様の

 意向に従いますよ」と言ってくれた。つまり、全会一致だ。


「よし、オーガ。俺達で、街を守るためにその魔物と戦う事にするよ」


「……いいのか? さっきあったばかりの魔物の言葉を信じられるのか、

 お前たちは」


「もしお前が俺達を騙してるなら、その時はその時だよ。

 ──何の抵抗もなく、お前を倒すだけだから」


 軽く脅すように言うと、オーガは少しだけ顔が引きつった。

 言った事は本当だ。このオーガが騙してようが何だろうが、危害を加えるなら

 倒すだけ。この生活は、絶対に守り抜く。もうあの時みたいな事は嫌だから。


「……まぁ、一応の信頼関係は結んでおこう。ついてこい、ネブリーナまで

 案内する。行くぞ。そうだ、お前らの名前はなんだ?」


 オーガは立ち上がって歩き、後ろを振り返って俺達三人を見た。


「ユイって言う。最近まで勇者やってました。よろしく」


「ミアなのだ! ミスト領に封印されてた魔王なのだ! 」


「ソフィアです。ラグリアの王女だったんですけど、訳あって

 ここにいます」


 三者三様の自己紹介を聞くと、オーガは眉間を指で押さえた。

 そして、困ったような、怒ったような顔でこっちを睨む。


「……お前らなぁ、それが本当だとして、俺を信じすぎだ。そんな事、やたらと

 言う事でもないだろ。そもそも情報量が多い。なんだ勇者と魔王と王女って。

 こんな所にいていい人材じゃないだろ」


 そんな事言われても、様々な要因が重なってこうなってるから仕方ない。

 確かに再確認すると凄いパーティだ。これにオーガも含まれてるとなると、

 いよいよ混沌を極めている。


「いいか、ネブリーナではそんな簡単に心を許すなんて駄目だからな。

 あの街は、いわくつきなんだ。お前らの命を狙う輩が出てこないとも限らねー。

 あと、俺の名前はオウガだ。種族名と似てて覚えやすいだろ。……以上だ」


 オーガ、否、オウガはまた前を向いて一歩一歩、大地を踏みしめるように

 歩き出した。なんだか、最初に絡んだ時の小物感は薄れ、頼れる無骨な兄貴感が

 その背中に出ていた。


「優しいのですね、オウガさんは」


 こそっと、俺とミアにソフィアが耳打ちしてきた。

 それを聞いて、「聞こえてるからな、そういうとこだぞ」と、オウガはぶっきらぼうに

 口にした。


 ※※※※※※※※


 ネブリーナにつくまでに、色んな魔物が襲ってきたがどれもこれもオウガが

 薙ぎ払ったり、ミアが大火球を撃ち込んだりして苦労はしなかった。

 オウガも先ほどはあっさりと負けを認めていたが、魔物と戦っている所を見るに

 実の所強いのでは、と感じられた。何より、自分と戦った時より冷静で、かつ

 自分より大きな魔物を見ても引かない胆力があった。


「オウガさんは、なんでさっきはすぐに降参したんだ? それだけ強ければ、あの『制裁』も

 もしかしたら振り払えたかもしれないのに」


 そう聞くと、オウガはこちらを見ずに、「……さぁな。あと、『さん』はいらん」

 とだけ言い残した。どうやら言いたくない理由があるらしい。それなら、

 そんなに踏み込んで詮索もしないでおこう。


「しかし、オウガはなにゆえネブリーナを我らに守ってほしいのだ?

 その街は人間のものであって、魔物の物ではないのだろう?それに、お主が

 暮らしているというわけでもなさそうだし」


 ミアがここで、違う質問をした。

 すると、オウガはふと立ち止まり、腰巻から何かを取り出した。

 金色に光る、ロケットペンダントだ。オウガはそれを開いた。しかし、誰かの写真や

 絵が入ってる事はなく、ロケットは空っぽだった。

 オウガはそれを、大事そうに握りしめて、また歩き出す。


「こうしていると、あの日の事を思い出すな……あぁ、すまない。

 あの街を守る理由を思い出したら、ふと感傷的になっちまった。初対面のお前らには、

 あまり話したくない内容だが──いつか、話してやる。この仕事が終わればな」


 どこか寂し気な声で言うオウガの後ろを、その後はただただ無言で付いていった。

 この魔物、実はとんでもなく情が深いんじゃないか、なんてことを考えながら。

 歩き続けて、ついにミスト領唯一の街──ネブリーナに辿り着いたのであった。

福の神も鬼も仲良くすればいいと思う。

がんばれオウガさん。


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