プロローグは物語の始まりに必要です
「我と結婚してくれ!! お主と一緒に、幸せになりたいのだ!! 」
そのプロポーズは、何よりも俺の心に衝撃と感動を与えてくれた。
俺は400年ほどではないけど、孤独だったから。
今までの誰よりも、俺を必要としてくれる目の前の少女が。
ただただ、愛おしく感じられた。
もうすでに、俺は幸せだ。
幸せにしてくれて、ありがとう。
これからは、絶対に俺が幸せにするからな。
そう思いながら、俺はこの少女と出会った日の事を思い出していた。
※※※※※※※※
──俺は、何のためにこの世界に転生してきたんだろう。
王から命令された任務──魔王と戦え、というものを達成するために
勇者と言われている俺は魔王城のある場所へ向かっている。
周囲はだんだんと霧が立ち込め、大きな魔王の城以外は何も見えやしない。
魔物が出ないのは幸いだが、今は逆にその静寂さが不気味だ。
ふと自分の剣を見て、この世界に来てからのことを思い出す。
この世界に来て、一番最初に捨てたのは苗字だ。
水崎 唯なんて名前はもう前の世界においてきた。
今は、ただのユイだ。名前の方捨てられてないっていうツッコミは無しで
お願いしたい。他にいい名前思いつかなかったんだ。
元々日本って国の住人で、ある日死んでから女神とやらに強い能力を貰って
この魔法もあり、魔物もあり、獣人も魔族もなんでもありな所謂ファンタジーな
世界に来たわけだが。
そんな自分がこの世界に来てからやった事と言えば、魔物を倒して俺が辿り着いた
国の王から報酬をもらうことくらい。
正直言って、それだけだ。しかも報酬は一般の兵士と同じ。
彼等以上に働いてる筈なのに、だ。
まぁそれはいい。自分も扱いとしては一般兵なのかもしれない。
だが、何より辛いのは休みが少なく、かつ討伐任務などを『即日』終わらせないと
報酬が貰えない所である。こんな酷い話あるか。
魔法が使えて楽しかったのは最初だけ。可愛い女の子に囲まれてハーレムどころか、
異世界から来た自分を怖がって誰も近寄りはしない。
転生する前と同じで、ぼっちだ。
こんなろくでもない思い出を、一つ一つ思い出すのはなんだか死亡フラグって
感じがするのでやめとこう。
とにもかくにも、自分はこの世界でも指折りの強力な軍事力・抑止力として
一国の王に雇われているのである。
「まぁでも、これじゃただの兵器扱いだよなぁ……」
そんな愚痴をぽつり、と呟いて魔王城の目の前に立つ。
門の周囲には結界のようなものがあったが、それを難なく通り抜け、門を開けて扉を開く。
特に城の中にも魔王がいる様子はない。配下の一人や二人、
構えててもおかしくはないのだが。
まぁいい、魔王の所まで楽に行けるならばそんな事は気にしない。
「……この先にいそうだな」
明らかに威圧感が高まってきた。この扉の先に魔王がいるのだろう。
意を決して扉を開く。一体どれほど恐ろしい奴が──
──扉の先にいたのは、目を疑うほどの美少女だった。
歳は16くらいに見える。肩より少し長いくらいの白髪は、雪よりも美しく。
顔も非の打ち所がない。口、鼻の場所、瞳、どれをとっても芸術品のようで。
特に海を思わせるほど青い瞳が目を惹いた。
一目みれば人間でないとわかる羊のようなその漆黒の角も、髪の隙間から見える
尖った耳すら、芸術品のようにすら見える。
「お前が、魔王なのか?」
少し震えた声でそう聞く。
すると、玉座からすっと少女は立ち上がり、杖を持つ。
「いかにも。──よくぞ来た、人間よ」
ここに、勇者対魔王の戦いが始まる──はずだったのだが。
──いや、あの魔王倒さなきゃダメなのか?
可愛いのに、こんなんでも魔王なのかよ。
と、俺が考えていると、
「お主我の好みの顔であるな……我の部下にならぬか?」
「え?」
「え?」
魔王が言葉を発した後、二人してお互いを見つめあう。
すると、魔王の方は耐えられなくなったのか顔を赤くして、
「い、今のは忘れろ! やり直しだ、やり直し!!」
しまらない勇者とぽんこつ魔王の戦いが、ここに始まった──
はじめまして。あかこんにゃく、と申します。
プロローグをお読み頂き、大変感謝感激でございます。
この先を読み進める際は、なるべくなにも考えず文字を追ってくださると楽しめるかと思います。
よろしくお願いします。
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