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ジャックの話によれば、僕とグリーンが倒れていたこの地は
王都に居た先代の聖女さまが
特に念入りに安寧の魔法を込めてできた街であるという。
土地はそれほど広くはなく、人口は100人ほど。
産業としては良質の紙とインクが作られることから、
本作りがさかんであるということ。
ジャックも農家として野菜を作っているのではなく、
本の作成に必要な農作物を作っているとのことを話してくれた。
聖女の力により、この街はモンスターどころか
人を騙したり、脅かしたりしようとする心の持ち主は
たどり着けないようになっているらしい。
前の聖女さまは本が好きだったのか…?
首を傾げていると、グリーンがナリーからミルクをもらっていた。
「ノエル!これすごく美味しいよ!」
もの凄い勢いで木の椀に首を突っ込むグリーンをみてナリーが
「フン。ミルクに白砂糖と今朝採れたばかりの卵を混ぜたからね。
そりゃ美味いだろうさ」
……ナリーさんはツンデレ?意外と動物好き…?
と余計なことを考えていたら肝心なことを聞き忘れていた。
「僕たち…、その…生活の仕方が分からなくて。
グリーンのミルクのお礼もしたいんですが、
お金の稼ぎ方が……」
するとジャックが遮った。
「まぁまぁ、今日はもう夜も遅い。
明日ゆっくり話すのでいいかの?
儂らが通りがかったのも聖女さまの導きじゃろうて。
お前たちが二人で生きていけるまで面倒は見るさ」
ノエルはジャックの申し出が凄くありがたかった。
反面、大人から優しくされたことのなかったノエルは動揺した。
しかし思い出したのだ。前世でただ一人味方で居てくれた祖父のことを。
「…っよろしくおねがいします!」
そうしてノエルは自分の頭とグリーンの頭を下げた。