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「ごめんね…、ごめんね…」
全身を襲う痛みに耐えながら、息をしなくなった
愛猫を胸に引き寄せ、褐色の毛をゆっくり撫で続けた。
衝撃に閉じられた目から涙が流れ、
次第に意思を手放した。
☆
「おはようにゃ」
窓辺で褐色の毛を持つオッドアイの猫が
長い尻尾を左右に揺らしながら話す。
僕たちは……。
どうやら一緒に死んでしまったらしい。
それは致し方ない。そろそろだと思っていたのだ。
そして、どうやら転生したらしい。
いや、転生という表現だけでは心許ない。
「異世界転生」
僕の頭がこれ以上馬鹿になっていないのなら、
この前まではグリーン……この猫の名前だが、
は話さなかったし、目の色も片方だけ違うということはなかった。
窓から差す光に目を細めて数日前の出来事を思い返す。
☆
僕が目を開けると、プラネタリウムのような夜空が広がっていた。
首を持ち上げ周囲を見渡すと、
森の入口なのか芝生の上に寝そべった状態であった。
腕の中にはまだ温かい愛猫が目を閉じていた。
体の傷はそのままだが、先程まであった痛みはない。
フローリングの床で転がっていたはずの自分が、
なぜか芝生の上にいる。
思考の途中で、空から光が二つ降ってきた。
そして、その光は僕たちを目掛けてぶつかって弾けた。
一瞬の出来事であった。
そして、腕の中で息絶えていたはずの猫はすんなり体を起こした。
「いつも守ってくれてありがとう」
そう流暢に話して笑ったのだ。