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第3話 本のすばらしさ

「成功したければ本を読め」


 この教えにポカンと口を開けるだけの進に、ススムは今日の授業を始める事にした。


 目の前の老人が言うには純金1キロ、つまりは現在の相場で500万円は軽く超えるような途方もない価値があるという。


「小僧、オレの教えに何の価値も無いと思い込んでいるようだな。良いだろう、本を読むことがどれだけ価値があるかを教えてやろう」


 年収1億だという噂の老人は見どころがありそうな若者に向かって語りだした。




「まず1つ目は「成功者の人生が本当にわずかなカネで買える」からだ。


 例えば「資産形成のコンサルタントを10年勤めて、のべ何千人もの金持ちの資産形成に尽力した」者がいたとすると、


 そいつの秘密が知りたいと自分も同じ道を目指すとなると最低でも10年はかかる。


 それよりは難易度が低い、直接会って話をしようとしても相手は忙しいし、会食をするにもそれ相応の店を熟知しなくてはならん。


 話す内容も厳選する必要だってある」


 ススムは一息入れて話を再開する。




「だが、そいつが書いた本を読めばその1部分とはいえ英知を自分の物に出来るわけだ。


 しかも定価だとしてもほんの1500円から高くてもせいぜい2000円程度という破格の安さで、だ。


 アマゾンで中古の最安値を調べればもっと安くなるだろう。「本だけは1流の物が3流の値段で買える」んだ。


 本を読み続ければ何十人、何百人、人によっては1000人以上の人生を追体験することも決して不可能な事ではない。


 人間1人の人生経験なんてたかが知れている。


 本を読まない、つまりは1人分の人生しか生きてない奴なんぞ、何百人もの人生を追体験している者にとっては敵ですらない」


 ススムはまたふぅっ、と一息ついて再び語りだす。




「2つ目は「場所や時代を飛び越えることが出来る」からだ。


 例えばアメリカで成功している者の話を「直接」聞こうと思ったら、当然まずアメリカに行く必要があるし、英語をネイティブ並みに扱える必要もある。


 だが本なら日本にいながら成功できた話を知れるわけだ。しかも「あらかじめ日本語に翻訳(ほんやく)された状態」で、だ。英語を学ぶ必要も無い。


 さらに本は時代すら飛び越せてみせる。オレたち現代の日本人には哲学者プラトンの英知を「直接」教わることは不可能だ。


 何せ彼は2000年以上昔に生きた者だからな。


 だが、彼の思想は本として残っていて、それを読めばオレたち現代日本人でも1部ではあるものの体験することが出来る。


 そう考えると本は時には2000年以上昔にタイムスリップできるタイムマシンである、とさえ言える」


 彼の語りはまだ続く。




「このように本というのは「成功者の人生の1部」を「時間や空間を飛び越えて学べ」しかも値段は「大抵の場合2000円を」切る。


 それに、知識は一度覚えてしまえば忘れない限りは無くなることも無く何度でも利用できる。


 おまけに誰にも盗み出すことも奪われることも無いし、これは特に重要なのだが……税金も一切かからない。


 ユダヤ人が知識に最も価値を置くのはユダヤ教は少数派で異端(いたん)だったゆえに物や社会的地位を常に奪われ続けた結果、


 他者から絶対に奪われる事がない知識を最上の価値に置いたからだ。


 だからこそ本は素晴らしい。小僧、お前はまだ30だ。今からでも遅くはない、十分巻き返すことは可能だ」


「……」


 進は才ある老人の語りを浴びるように聞いていた。だが彼にはどうしてもそれが出来なかった。




「でも俺には本を買う金が無いんですよ……生活が苦しいんで。


 しおりを手に入れるために本を買ったんですけどそのせいで来週の土曜に友達と飲みに行けなくなったんですよ」


「フン。そう泣きつくと思ってた。良いだろう、次の課題を出そう。この課題をクリアー出来た時、お前は本を買う金に困ることは無くなる。


 やること自体はあまりにも単純すぎて普通の人間は軽視しがちだ。だが重要な教えで、金持ちになるための大きな大きな核の1つだ。


 これが守れないせいで成功できないどころか「失敗する」人生を歩んでしまってる人間は山ほどいるし、


 これを知らなければオレもこうして成功する事はできなかっただろう。それくらい成功に関して深くかかわる重要な教えだ。


 この知識は、そうだな……どれだけ少なく見積もっても純金5キロには相当する英知だ。では教えてやろう。準備は良いか?」


「は、はい。教えてください」


 ススムは若者に向かって語りだした。純金5キロというと、2500万円は軽く超える値段だった。




【次回予告】


「まず自分に支払え」ススムはそう言った。そのために必要な課題も同時に出してきた。


第4話 「まず自分に支払え」

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