40話 藤野 玄人、戦いますよ。②
お、おでまし?何がだ?
「グルァァァァァァ!!」
バリィィィィィィン!!
ガラスが割れる音。
「さがれっ!」
召喚士の男の声を聞き、俺は咄嗟に後ろに飛び退く。
するとそこへ、黒いナニカが突っ込んできた。
「な、なんだ!?」
「グルルルルル……」
黒いナニカがむくりと立ち上がる。
そして、俺の声に続くようにインフェルノウルフが話し始めた。
「はぁ……またお前か、いい加減に懲りろ、ダークネスウルフ」
「だ、だーくねす、うるふ?……あっ!」
俺は黒いナニカの頭部を見て思い出した。
ジャックとキャルロットと一緒に初めてクエストを受けた時に見たあの黒いツノ。あいつ、あの時に見た奴か。
俺が見た時は直感が追いかけるなって言ってたから追いかけなかったけど、ここでまた出会うとは。
「ん?なんだ、君はこいつを知っているのか?」
インフェルノウルフが俺のいる右の方を向く。
「ああ。この前、森に入った時に見たんだ」
「なるほどな。恐らく、さっき言っていた爪痕も、こいつだろう」
俺たちがそう話していると、ダークネスウルフは姿勢を低くして、攻撃の隙を狙っていた。
「お、おい!インフェルノウルフ!いけ!焼き払え!」
それを見て、召喚士が指示を出す。
「うむ、言われなくてもわかっている」
そういうと、インフェルノウルフは右前足を一歩前に出し、毛を逆立てた。
「グルァァァ!!」
咆哮とともに、全身を火が覆う。
すると、それに呼応するように、ダークネスウルフも雄叫びをあげた。
「グルォォォォォォ!!」
空気が揺れ、ダークネスウルフの体に加えて一メートル程先までの空間を闇が包んだ。
「う、おお……」
召喚士は、その力に気圧されている。
「グルァァッ!」
先に動いたのは、ダークネスウルフの方だった。
身に纏った闇の先を十数本に分け、細く鋭くしてインフェルノウルフに向けて伸ばす。
「ルァッ!」
それを、焔の咆哮で消す。
「グルル……」
「ウルル……」
噴煙が捌け、二匹は互いに睨み合う。
「グルルァァァァ!」
今度はインフェルノウルフの番だ。その口を大きく開け、火炎を噴射した。いや、火炎と呼ぶにはあまりにも細すぎる。いうとすれば、炎を凝縮したレーザーといったところか。
「グァッ!」
ダークネスウルフはその速度に反応できず、右前足を射抜かれた。
「グゥゥゥ……」
反応できないレーザーを撃たれたからか、自分を射抜かれたからかはわからないが、インフェルノウルフを再び睨み付ける。そして、数瞬後。
「グルァァァ!」
ダークネスウルフは自分の右前足を地面に打ち付け、足をちぎった。
「え?何したんだ?」
ちぎられた足はもう一体のダークネスウルフとなり、元々足があった場所には骨だけが形成された。
「「グルルルルル……」」
同じ身体だったからか、息ぴったりだ。
「ふむ……やはり厄介だなぁ……」
と、インフェルノウルフはまるで知っているかのような事を言った。
「なあ」
俺は気になって召喚士に聞く。
「二匹は知り合いなのか?さっきから知り合いみたいな感じなんだけど」
すると、彼は「はぁ」とため息を吐いて、答えた。
「お前、知らないのか。あの二匹はな……いや、なんでもない。しらないなら、しらなくていい」
「いや、どういう事だよ。教えてくれよ」
すごく気になるじゃないか。
「無理だな」
「なんでだよ」
俺はちょっと気になりすぎて何度も聞く。
「無理なものは……おい、前みろ!避けろっ!」
そう言われて、俺は右に飛ぶ。
「あっぶな……助かった」
召喚士にそれだけ言って、二匹が戦っている方を見る。
「グゥルルルル」
「グゥゥゥ……」
そこには、四匹の小さなダークネスウルフと、足四本が骨になったダークネスウルフ、そして体がボロボロになっているインフェルノウルフがいた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想を初めてもらいまして、モチベ爆上がりでございます。ありがとうございます!




