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18話 藤野 玄人、トーナメントしました。③

「第17試合……始めっ!!!」


 俺の二回目の試合が始まった。相手は、サンナ=メイプルさん、女性だ。あまり戦うのが得意でなさそうな見た目をしている。


「いきます……廻れ風、彼の者へ。風魔法『タービル』」


「スキル《冷蔵庫》」


 俺は飛んできた小さな竜巻を《冷蔵庫》の中に取り込む。


「な……廻れ、廻れ。風に従属なる牢へ。風魔法『タービル・バース』」


 彼女が唱えた瞬間、上から円柱の形をした風の塊のようなものが降りてくる。


「うおっ」


 そして、体が重くなった。


『き、決まったーー!サンナ選手の『タービル・バース』!!』


 俺の周りに強い風が吹いている。もはや小さな台風だ。


『やはりな。先程の試合であれだけ魔力を消耗した上に、もう一度スキルを使ったんだ。あの魔法に当たっても不思議ではない』


 重い。でも、動けないほどじゃないな。


「スキル《冷蔵庫》」


  俺は『アース・グリアー・エスピリット』を取り出す。まあ、杖だ。


 杖のまま、再び《冷蔵庫》を顕現する。今度は、俺の真上だ。


 杖は、魔法をより強くするためのものらしい。


 つまり、だ。


 俺は魔力をながし、《冷蔵庫》の中を操作する。


「ふええ?」


 サンナさんが素っ頓狂な声を上げる。そして、次の瞬間。


 ドゴォォォォーー……


 俺の周りの風は、水に流された。


「うへぇ……びっちゃびちゃだぞ……」


『…………は?』


『……あ、あれだな。杖がとても優秀なんだな。あと、彼の魔力の質がいいんだ、そうだ。うん』


 確かに杖のおかげだな。


「じゃ、次はこっちからいきますよ?スキル《形質変化》」


 俺は杖を剣に変化させる。


「えっちょっ……廻れ風、彼の者へ。廻れ風、彼者へ……風魔法『タービル』」


 彼女が唱えると、いくつもの小さな竜巻が彼女を守るようにして現れた。


 これじゃ近づけないな……よし。


 「《冷蔵庫》!」


 俺は《冷蔵庫》から大きめの氷を竜巻へ向けて飛ばす。そして、それと同時に、俺ははしりだす。


『ど、どういうことでしょうか、校長……彼にはまだ魔力が残っていますよ……』


『冷静に考えてみよう。彼は先程の試合で魔力をほぼ使い切った。そして、今スキルを使い続けている……つまり、結論は三つだ。一つ目に、そもそも彼の魔法力が半端じゃない。二つ目に、彼のスキルはあまり魔力を使わない。三つ目、無理をしている。このどれかだと、私は考える』


『な、なるほど……』


 どれなんだろうな。自分でもわからん。


 ……と、サンナさんがもう目の前だ。


 俺は失速し、氷の後ろについた。ここから、氷と竜巻がぶつかった後、一気に距離を詰める作戦だ。


 ーーバリン、と氷が音を立てて砕け散った。そして、竜巻も消える。


「ここだあっ!」


 俺は彼女に向けて剣を振るう。


「ひゃん!」


「くっ」


 避けられた。彼女は頭を抱えてしゃがんだ。俺は思いっきり剣を振ったから、攻撃されたら防御できない。


「俺は剣の勢いに任せて、転がってどんなものか分からない攻撃をとりあえず回避しようとする。


「ふっ」


 成功。俺は彼女に目を向ける。


「ふううぅ」


 ……ずっと頭を抱えたままだった。


「あ、あの……」


 俺が問いかけようとした時。


「こ、降参ですっ!」


「……えっ」


「さ、さよなら〜〜!」


 走って行ってしまった。


「……勝者、藤井 玄人選手」


 ま、いいや。勝ったし。控え室に戻ろう。




「お疲れー」


「おう」


 廊下では、ジャックが待っていてくれた。


「お前、女の子に向かって剣を振るのはねえわ」


「え、そうか?」


 日本には、俺の周りに女性が少なかったから仕方ないな。


「いや、あの子めっちゃ怖がってたじゃねえか」


「そっか、教えてくれてありがとう。次から気をつけるよ」


「そうしろ」


「で、控え室の中はどんな空気だ?」


「変わんねえよ。俺までピリピリしてきちまいそうだ」


「じゃ、ここでいいか」


 そう言って、俺はモニターに目を向けた。


「ここ、いい戦いしてるぜ」


 ジャックが呟いた。どうやら、モニターで流れている最中の試合を言っているようだ。


 男性が魔法を放つと、もう一人、女性もそれに対抗して魔法を放つ。その隙を突こうと男性が剣を抜いて突っ込んでいくと、女性はジャンプして男性の後ろを取る。恐らく、《レフォース》でも使っているのだろう。男性はすぐに距離をとって向かい合う。


 そんな感じで、本当に互角の戦いだ。それも、かなりハイレベル。


「ほんとだな」


 俺たちは、ジャックの試合が再びくるまでずっとモニターに映される試合の映像を観ながら話していた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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