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17話 藤野 玄人、トーナメントしました。②

〜ジャック=ラティリー視点〜


「続いて、第9試合を行います。ジャック=ラティリー選手、グラス=メイル選手は準備してください」


 ついに俺の出番か。けっちょんけちょんにしてやるぜ!


「両選手前へ」


「よお、ジャック」


 誰だこいつ?なんで俺の名前知ってんだ?


「お前誰だよ」


「あ?忘れたのかよ?毎回毎回、テストで俺の一個上の順位に立ちやがって!許さねえからな!」


「なるほど、お前もバカか」


「うるっせえ!今ここでどっちが上かはっきりさせようぜ!」


「たしかに、テストじゃなくて実力で決めてえな!」


「第2試合……始めっ!」


「スキル《レフォースα》《レフォースα》!」


「二重がけか!カスだなあジャック!?スキル《レフォース》《レフォース》《レフォース》!《火魔法中級》!」


「いくぜ、レンク・エヴィ!剛硬せよ、硬化魔法ガーラ!」


「すきありぃ!」


 グラスはいつのまにか低い姿勢で魔法と共に俺の目の前まで来ていた。


「スキル《剣聖》」


 俺は難なくグラスの攻撃を避ける。ただ、発動したまま斬ってしまうととてつもない量の魔力を消費することになるから、避けた瞬間にスキルを解除する。


「かかったな!」


 俺が避けたその時、炎が俺めがけて飛んできた。


「死ねぇ!」


「くっ!」


 俺はレンク・エヴィを盾にしてなんとか魔法を受けるが、グラスは剣を抜き、追撃してくる。


「ぐっ!」


 俺は横腹に蹴りを入れられ、横に大きく飛ばされる。


「……やるじゃねえか」


「弱すぎねえかジャック!もう終わらせてやるぜ!」


『あー、校長。この局面をどう見ますかね?』


『そうだな、これだけ見ればグラス選手が優勢だろう。だが、彼は汗をかいている。これは、運動したことによる発汗作用か、魔法を行使したことによるものなのか、どちらかだ。まあどちらにせよ、彼はすでに疲れてきているな。

 だが、ジャック選手を見てくれ。彼は、全くといっていいほど汗をかいていないし、呼吸も乱れていない。これだけ言えばわかるだろうが、ジャック選手とグラス選手ではジャック選手の方が実力はかなり上だろうな。

 今押されているのは、ただ単にグラス選手が全力、ジャック選手はあまり力を使っていないからだ。ところで、二人のレベルは?』


『な、なるほど……ええ、ジャック選手はレベル23、グラス選手はレベル16ですね……』


ふーん、なるほどな。じゃあ、余裕で勝てんのか。


「なあグラス、今の聞こえたか?俺とお前だとレベル差が7もあるみてえだぞ?」


「うっせえ、今お前負けてんだろうが!ぶっ潰してやるからな!」


「どっからでもかかってこいや!」


「だらぁ!」


「ふー……」


 俺は深呼吸をして心を落ち着かせる。


「なあにやってんだあ!ぶった切ってやる!」


 目を開ける。距離は、十メートルほど。


「……俺流」


「がっ……」


 一瞬にして目の前からグラスが消えた。


「…………瞬撃」


 振り向くと、肩を抑えているグラスの姿があった。


「俺の勝ち、だな!」


「くそが……スキル《火魔法中級》!」


「げっ、まだやるのかよ……」


 でも、グラスの放った魔法はとても弱々しいものだった。


「……ほっ」


 俺はそれを楽々、といったかんじで斬り落とす。


 それを見て、グラスも諦めたようだ。


「……降参だ」


「ふう」


 俺は控え室へ戻っていった。




「おつかれ、ジャック」


 廊下で玄人と会った。待ってくれてたみたいだ。投げられた水を受け取る。


「さんきゅ……ふぅ。で、どうだったよ」


「もうちょい早く終わらせられたんじゃないか?」


「いや、出来るだけ使う魔力を最小限にしたくてな」


「なんでだ?」


「じゃねえと優勝できねえじゃねえか」


「なるほどな。でも、その前に俺と当たるぞ?」


 そうだった。わすれてたぜ。


「じゃ、そこで勝てば優勝みてえなもんだな」


「どんな理論だよ」


俺たちは、笑いながら控え室へ戻っていった。



「なるほどな」




 控え室は、俺が試合に出る前と出た後で、空気の違いがハンパなかった。すっげえ堅い感じだ。


「おい玄人、何があったんだ?」


「いや、分からない。俺が廊下に出た時はこんなんじゃなかった」


「ちょっとこの空気感嫌いだわ。外でようぜ」


「そうだな。でもな、ジャック。そういうことは声に出さない方がいいぞ?」


「あ」


「はは、出ようか」



〜藤野 玄人視点〜


 俺たちは廊下に出て、ずっと雑談をしていた。


 会場が騒がしくなるまでは。


「……やっべえな」


「なあジャック、あんな名前、表にあったか?」


「お前ほんとになんも聞いてねえのな。いいか、このトーナメントはA、Bブロックに分かれてんだ。で、俺たちはA、あいつはBだ。全部で六十四人参加してて、三十二人ずつになってる。つまりは、六回勝てば優勝」


「おっけ、分かった。ありがとう」


 俺はモニターへ視線を向ける。


 廊下や控え室にはテレビがあって、それで試合を観れるようになっている。


 そこに写っている男子は、目をつぶってつまらなさそうに攻撃をさばいている。


 ーーそして。


「いいや。君、つまんない」


 瞬間、剣を抜き、また鞘に納めた。


「何してんだ?あいつ」


 ジャックが呟いたその瞬間、彼の相手の剣が粒になって消えていく。


「……ま、負けましたぁぁぁ!!!」


 相手は、走っていった。


「つまんないなあ」


 彼はそういうと、控え室へもどっていった。


「しょ、勝者ディアブル=ガーブ!」


 よし、覚えた。あいつ、やばい。


「第17試合を行います。藤野 玄人選手、サンナ=メイプル選手は場内へ」


 アナウンスがかかった。


「じゃ、行ってくる」


「おう、頑張れよ」


 俺は、廊下を歩いていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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