13話 藤野 玄人、観光しました。
「じゃあキャルロット、案内を頼むよ」
俺は今から学校に編入手続きをしにいくところだ。
「うん、任せて」
といっても王都ということで全く道がわからない。なので、王女であるキャルロットに頼む…のだが。
「爺は別にこなくてもいいのよ?」
「いえ、お供しますぞ?また先日のようなこと、あってはなりませぬから」
「ぐぅぅ……」
どうやら、キャルロットは爺無しで外に出るのを楽しみにしていたようだ。とは言っても、いろんなところに護衛がいるから、変わらないとは思うんだが。
「では、行きましょうか」
「……そうね」
キャルロットが拗ねてる。
それから、十分ほどで学校に着いた。
「おお……」
すごく立派な大学みたいなデザインだった。
「受付はこちらですな」
俺はカウンターの方まで歩いて行った。
「どうされました?」
「えっと、編入したいんですが」
「えー、では、こちらの紙に必要事項を記入してください。こちら、ルールなどの注意事項が記されておりますので、ご確認ください」
俺は紙に色々書いて渡した。といっても、わからないことばかりだったので(住所とか家族とか)爺とキャルロットにいい感じにしてもらっておいた。
「はい、承りました。トーナメントは来週ですので、間違えないようお願いいたします」
来週って、すぐじゃないか。頑張ってレベル上げしないと。
「ねぇ玄人、今から王都を一緒に観光しない?」
くっ……明日から頑張ろう。
「行こうか」
「こっちこっち!」
最初に俺たちが向かったのは、お洒落なレストランだった。
「まずはご飯にしましょう?きょうはまだご飯食べてないわよね?」
そういえばそうだったな。
「オーダーをお伺い致します」
「玄人、何にする?」
何にする、と言われても何がどんなものなのかわかんないしなあ。
「キャルロットと同じやつにするよ」
これが安定だろうな。前回も美味しかったし。
「分かったわ。じゃあ、『嗜みスパゲティ』を二つお願い」
「かしこまりました」
それから俺たちはゆっくりと食事をとった。
「じゃあ次は……美術館にいきましょう!」
「ここよ!」
なんていうか、どこが不思議とはいえないが、不思議な感じのする美術館だった。
「これ、これ見ましょう!」
そう言ってキャルロットが指を指したのは、プラネタリウムだった。
「おお、いいな。じゃあ、見に行こうか」
というか、こっちにもプラネタリウムはあるのか。
こっちのプラネタリウムは、寝転んで見るタイプのものだった。
「綺麗だな」
「そうね……向こうもこんなのだったら……」
「向こう?なんの話だ?」
「いえ、なんでもないわ。それより、今はこの景色を堪能しましょう?」
「ああ、そうだな」
「す、すごい……やっぱり、何度見てもすごいわ……」
キャルロットは、複雑な形をした彫刻を撫でながらつぶやいている。
「なあ、これってどこが凄いんだ?いや、これだけ複雑な形を彫るのが難しいってのはわかるんだけどさ」
「玄人、これに触れて、流れている魔力を感じ取ってみて」
言われた通り、俺は彫刻に触れ、魔力を感じる。すると…
「すっげえ……」
「でしょう?」
「ああ……痺れるくらいに魔力が通ってる……これ、俺何人分だ?」
「……玄人に換算すると、何百……そんなに少なくないか……って、そこじゃないのよ」
え?でも、これしか……
「えっ、すご」
「わかった?」
「ああ、分かる」
俺がなにをわかったのか。それはーー
「魔力が彫刻の一番上から外へ出て、Uターンして腹部に帰ってきてる」
「そう、そうなのよ!普通、空気中に魔力を出して、それを物体に戻すなんて、できないのよ!でもそれを、魔力量とこの形でできるようにしてるの!この形を見つけるのに、いったいなんねんかかったのかしら!それでもって…………」
と言った具合に、キャルロットは一人で熱弁し始めてしまった。
「キャルロット?帰ってこーい」
俺は少しの間、キャルロットを待っていた。キャルロットの意識が戻って来た時、その顔は真っ赤だった。
「なあキャルロット、ここは王都だろ?」
俺はどっしりと佇む城を指差しながらいう。
「ええ、そうよ」
「じゃあ、あの城はキャルロットの実家ってことか?」
「まあ、そういうことね。学校へは、寮から通ってるけど」
そりゃ、毎日城からとなると、送り迎えが凄そうだしな。
「なあ、俺城に入ってみた「だめよ」…そうか」
「あ、ごめんなさい。ちょっと事情があるの」
「そういうことか」
なにがそういうことなのか、自分でもさっぱりだが、ここはそう言っておく。
「じゃ、他の場所を案内してくれ」
「ええ、じゃあ、こっちね」
俺とキャルロットは今日、一日中王都を巡った。
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