7話 精霊
「エルフですって!?」
これまた再び驚きの声を上げたのは芽依であった。
「だからそう言ってるじゃない。」
エルフの少女は何度同じことを言わせるのよ、みたいな言いぐさである。
俺たちは少しの間、動揺が隠せなかったが、しかし、目の前にいる少女がエルフであるということで今すべきことが怪我をしている男を助けることから変わるわけではない。
だが、なぜこいつは人間をそんなに毛嫌いしているんだ?
「お前がエルフで人間じゃなかったのは謝るが、なんで俺たち人間を拒もうとしてるんだよ?人間に恨みでもあるって言うのかよ?」
「ええ、大ありよ!」
なるほどな、訳ありってことか。
少女はそのままその理由を話し続ける。
「良い人間はこの森をノーム様と一緒に作り上げてくれた1人だけ、それからというもの人間はみなこの森の恵みを手に入れようとして、様々な策略を用いて私たちエルフと度々諍いを繰り広げてきたわ。そして、さっきだって・・・」
「さっき?」
「さっきだって突然森の中に現われた人間が、見ての通りの惨状を引き起こしていったんだから。それで、森を守ろうとたノーム様が・・・」
それでエルフは人間を良く思ってないって訳なのか。
少女の話を聞いて、だいたいの状況が飲み込めてきた。
だが、まだ分からないところが少し残っている。
「なぁ、さっきから話に出てくるノーム様って何ものなんだ?」
俺の問いかけに彼女は目をキョトンと丸くして、「はぁ、そんなことも知らないの」とやれやれとため息をつく。
この世界ではそんなに常識的なことなんですか・・・
「ノーム様はこの森がまだ森じゃなかった頃から育まれ、大切に守ってこられた精霊様なのよ。私たちエルフからしたら、もうとっても偉大な方なんだから。」
少女はどこか自分のことのように堂々と自慢する。それほど、大切に思っているということなのだろうか。
なら、なおさら今すぐこの男ことノームを運び出してやらないといけないな!
俺はそうして再び決心する。
少女が人間のことをどう思っていようが知ったことじゃない。
なんとかして助けてやらないとな。
「芽依、カイ。お前ら傷薬とかいろいろ持ってきてたよな?」
「それはもちろんだけど・・・あっ、そういうことね。」
「精霊に人間用のものが効くかどうかなんて分からないけど、やってみましょうか!」
さすが2人だ。言いたいことを全て言わなくても、それだけで通じ合うことができる。
そうと決まれば、今すぐやるべきなのはやっぱりノームをここから運び出すことだ。
「カイ、運ぶのを手伝ってくれ。」
「オーケー。」
そうして、俺とカイでノームの肩を抱えるようにして持ち上げようとした。が、やはりここで、少女が「ちょっと、触らないでって言ってるでしょう!」とそれを辞めさせようと邪魔をしてくる。
だが、ここで譲るわけにはいかない。
「お前さ、ノームのこと助けたいんだろ?」
「そ、それはそうだけど、」
「なら、今は人間だとかそうじゃないとかにこだわってる場合じゃないだろ。俺たちを信用してくれよ。」
少女は直ぐさま反発しようとするので、そうはさせまいと俺も間髪入れずに言いたいこと告げる。
最終的に「うぅっ・・・」とそれ以上言い返したくても言い返せない様子になり、少女は「何かあったら許さないからね!」と顔を赤くしながら言って、ノームを運ぶ俺たちの後をピッタリと着いてきた。




