5話 目覚め
「起きろ!!」
「起きて!!」
耳元で突如聞き覚えのある声がして、嫌が応でも目が覚める。
ガバッと体を起こすと、右隣には芽依が、左隣にはカイがしゃがんだ状態でいるのが分かる。
「あんた、こんな地面の上でいつまで寝てんのよ。てか、よく寝てられるわね。」
「凪は相変わらずお寝坊さんだね。」
こんな地面の上?
何言ってんだこいつは、だってここ家じゃ・・・
そこまで考えてようやく自分が現在、異世界にいることを思い出した。
よくよく自分が触っている地面の感触を確かめると、もさもさ、そして時々ごつごつしており、明らかにフローリングなどではなかった。寝ぼけた半目開きの目で、周りを見渡すと見えてくるのは木、木、そして木であった。俺たちはどうやら森の中に転移したらしい。
「なぁ、ここは異世界・・・なんだよな。俺たち、異世界に来ちまったんだよな」
どうにも頭の整理が理解が追いつかず、自分自身にも確かめるようにつぶやく。
「今更何言ってるのさ。」
2人から話を聞きて状況を整理すると、俺たちはゲートを潜った後、いつの間にか意識を失ってしまい、気がついたらこの森の中にいたらしい。
「とりあえずみんな起きたけど、これからどうしようね。」
「確かに、行く当てもないしなぁ。」
そうだった、勢いで異世界に来たはいいものの、俺たち、犯人の手がかりはおろか行き先すら分かってないんだったなぁ。
開始早々つまずいてしまった。
「うーん、うーん」と、3人とも頭を抱えて悩んでいると
ドゴオォォォォン
「何だ、この音は!?」
遠くから突然、凄まじい爆発音にも似た轟きが響き渡ってきた。それから数秒後、これまた凄まじい衝撃波が俺たちを襲い、その事態の大きさを知ることになった。
「カイ、芽依、大丈夫か?」
すぐさま2人の無事を確認する。
「“私たち”は大丈夫だけど・・・」
「大丈夫じゃないのは、ねぇ」
しかし、2人の反応は思ったよりも冷めていた。
せっかくリーダーらしく確認してやったのに、お前ら反応薄すぎないか!
ムスッとしながら2人の方を振り向くと、カイはすぐさま身をかがめて動じない姿勢を取っており、芽依は芽依で飛ばされないように近くの木にしっかりと捕まっていた。
こいつら、なかなか機転が利いてるな。
「凪の方じゃない?」
カイのその発言をもし文字に起こすなら、その語尾には(笑)や(蔑み)などの修飾がなされていただろう。
まぁ、それもそのはずだ。
俺はあまりの音の大きさにびっくりし、どうしたらいいのかとパニックになっていたところ、見事に衝撃波に見舞われ、ごろごろと1人だけ吹き飛ばされてしまっていたのである。
「うるせぇな!」
きまりの悪さを紛らわすために、とりあえず大きな声で反抗しておく。
「ぷぷぷ、恥ずかしいくせに。」
あー、シラナイシラナイ、ナニモキコエマセンヨーダ。
「まぁまぁ、これくらいにしといて。ひとまず行く当てもないし、音のした方に向かってみようか。」
「ちょ、ちょっと危険過ぎじゃないかし」
「そうだな。行ってみよ」
「「んっ」」
カイの提案に賛成をしようと思ったら、偶然にも芽依の反対する意見と重なってしまい、お互い気まずく見合わせる。
どっちが話し出そうかと水面下でタイミングを伺いだしそうになったので、俺はどうせ賛成するだけだしと思い、口パクで「さ き ど う ぞ」と順番を譲ることにした
芽依はそれに気づいたようで軽く頷くと話を始めた。
「音のした方に行くのは危険だと思うの。ここは異世界で一体どんな危険があるか分からないじゃない?さっきの音もただの爆発とかじゃなくて、何か他の・・・そう、魔法とかでっかい獣とかの仕業だったら、私たちにはどうしようもできないわ。」
「確かにな」と声には出さなかったが芽依の意見に納得してしまう。
正直、まだ異世界にいるという実感がわいていなかったので、この音の原因はただの爆発であろうくらいにしか俺自身は考えれていなかった。しかし、ここは常識の通用する元の世界ではなく、何が起こるのか分からない異世界である。そりゃもちろん、魔法や獣などという未知のケースも想定しておくべきだった。
「芽依の言うとおりだ、ほんと。カイ、ここはひとまず」
ひとまず止めておかないか、と言いかけたその時であった。
「誰かぁ!」
先ほどの音がした方と同じ方向から、助けを求める女性の声が響いてきたのだ。
俺たち3人はすぐさま目を合わせ、全員が同じ意見であることを確信する。
「行こうか。」
「行きましょう。」
「行こう。」




