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オーパーツは異世界で輝く  作者: 夕夜 ニベ
1/17

1話 日常

初投稿になります。

異世界に行く4話までは毎日投稿をしますが、

それ以降は2日に1回のペースで投稿する予定です。


俺は一ノ瀬 凪。元々は間宮という名字だったそうだ。

とても小さいときに両親に捨てられ、孤児院でしばらくは暮らしていたそうだが、それから間もなくして今の義父さん(とうさん)でである一ノ瀬 成浩に引き取られた。


義父さんは考古学者で、世界の謎であるオーパーツの研究を独自にしていた。

若かりし頃から色恋沙汰に目もくれず、日夜研究や調査に明け暮れていった結果、顔はそこそこであったはずなのに売れ残ってしまったという訳である。

そして人生も半ばを過ぎた頃、突然父性に目覚め、孤児院にいた子供を引き取るに至ったという。その1人が俺であるのだ。


その1人と言ったが、その通り、義父さんは俺を含め3人の子供を引き取った。

年の功はみんな同じで、今年で16歳を迎えるから当時は5歳とかそこらであった。

それからの約10年、本当の「兄弟」のように育ってきたので、今や俺たちは本当の兄弟より仲がいいとも言える。


「ねぇ、カイ。あんた、加藤先輩に告白されたのになんで断っちゃったの?先輩すごい美人で人気高いのに・・・もったいないわ。」


「んー」


「あんた好きな人とかいないんでしょ?」


「そーだね、特にいないね。」


「なら、とりあえずオッケーしとけばよかったじゃない。ものは試しよ。案外付き合ってみたらその人のことを好きになるかも知れ」


「はいはい、芽依のお説教は耳にたこができるほど聞いたから、もう十分でーす。」


「うぐっ。そんなにしたつもりはないんだけど。」


「かれこれこれで4回目くらいだよ。茜と詩織の時、あとは」


「ならいい加減参考にしなさいよ。」


「んー」


ここで俺の「兄弟」を紹介しよう。

1人はこの無駄に顔面偏差値の高いカイだ。父親が外国人だったらしく、日本人とのハーフであるそうだ。しかし、見た目だけでは日本人には到底思えず、完璧に外国人である。本名はセカンドネーム?とかいうのがあったりして長いから、みんなはカイと省略して呼んでいる。


「てかさ、凪のそういった話あんま聞かないよね?」


カイは唇の片端をクッとつり上げ、俺のことをからかうようにして話題を振ってきた。


もう1人は芽依だ。容姿はたぶんそこそこ可愛い方だと思う。でも、気が強いのが玉に瑕だ。まぁ、俺たちはずっと一緒にいるからそういった感覚は薄れてきたのだけれど。


「そうね、凪。あんたもなんかあるでしょ、そういった話。隠してないで教えなさいよ。」


カイの振りで、芽依のターゲットは俺に移っていた。なんでこうも色恋沙汰の話をしたがるのだろうか。

「ねぇ、ねぇ」と急かしてくる芽依に、「ししし」と悪そうににやつくカイ。


はぁ、俺たちは本当に仲がいいのだろうか。


「ねぇよ、なんも。高校入ってから、告白したことも、ましてやされたこともねぇよ。」


2人の興味をキッパリと遮ってみせた。


「なぁーんだ。つまんないの。」


その答えに芽依も興をそがれたようでこの話題は一段落を迎えた、かのように思われた。


「えー、でも、凪。この前気になってる人がいるって言ってなかったっけ?」


こう、俺の隠したいことを分かっているはずなのに、その場をどう面白く調理しようかと蜘蛛の巣を張り巡らせるのがカイであった。


「やっぱりあるのね!話しなさいよ。」


カイの不意の一言に、さっさと部屋に戻ろうとしていた芽依が一気に食いついてくる。

当のカイは、「俺は何にも関係ありませんよ」と言わんばかりの部外者面をしながらも、ニヤニヤとこちらを眺め、俺が芽依に質問攻めにされている様を楽しんでいるご様子である。


こいつ本当にいい性格してるわ。


「そっ、そんなこと言ったかなぁ・・・」


「凪はすぐに言動に出るからバレバレよ。堪忍するのね。」


何とかはぐらかそうとしたが、どうやらそうらしい。自分ではおかしな言動をしてるつもりはないのだが、他の人から見たら明白なようで、カイも遠目ながら首を縦に動かしていた。


「お前ら、そろそろ飯にするぞ。凪をからかってないで早く来なさい。」


もう逃げ道はない、と腹をくくっていたところ義父さんの成浩から声がかかった。

義父さんは俺と目が合うなり、やれやれという表情を見せたのでどうやら俺たちの会話を聞いており、救いの手を差し伸べてくれたようだ。


俺はここぞとばかりに声を上げ

「あー腹減った!話できなくて残念だぜ、芽依!」

と言い放ってみせる。


芽依も義父さんには弱いため、ぐぬぬっといじらしそうに俺を見つめることしかできない。

カイは「もう少しで面白くなりそうだったのに」と小言を漏らしていたが、おとなしく義父さんの呼びかけに答えた。


「げっ、晩ご飯、白身魚なの?」

「芽依にはちゃんと別で作ってあるから安心しなさい。」

「お義父さん、気が利くぅ。」

「義父さん、芽依を甘やかしすぎだと思いまーす」

「はぁ!別にいいじゃない。なんか文句でもあるの、凪?」

「ねぇ凪、それって自分へのブーメランだってこと気づいて言ってるの?」

「そうね、あんた未だにトマト食べれないじゃない!私よりよっぽどよ。」

「なっ、なんだと。俺、トマト食べれるし!普段は抜いてもらってるだけで、食べれるから!一緒にすんなよな。」

「一緒にはしてないわ。あなたの方がひどいって言ってるのよ。」


「いい加減にしなさい!芽依も凪も。けんかしてないでちゃんと食べること。」


芽依とカイに俺、そして義父さん。

初めて四人で暮らし始めたときは、どこかぎこちなかったが、今では逆にそのぎこちなさが互いの凹凸を埋めるかのようでしっくりときている。


イラッとしたり、ムカッとすることも多々あるが、それでも楽しいと思えるありふれた日常。

そんな日々が、今日も明日もその先の未来だって続いていく、そう思っていた。


義父さんが殺されたあの日までは。

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