王都へ
俺はこの世界を活性化するために天照大神から派遣されたということが分かった、しかし何をすれば良いのかイマイチわからない。
人助けするにしても、悪者を倒すにしてもやはり人のいる所で暮らさないと話にならないよな。
とりあえず町なり村なりで生活の基盤を整えて情報を集める手段を手に入れることだ。
インテリスターに頼り切らないで自分の力でやらないといけないな。
まずはこの世界で数少ない知人である聖女アーシアと神官騎士のレイモンさん、団長さんと騎士の皆さんのお世話になったほうがいいかな。甘え過ぎないように仕事の斡旋を御願いするくらいにしよう。
アーシア達と出会った所から王都までは馬車で3日かかるらしい、昨日は野営したみたいだから今頃は移動中だろう。今日はファルナに聞きたいこともあるから合流は明日でいいかな。
集会所の食堂でファルナと会い疑問に思ったことを聞いておく。
「まずこの世界の歴史って約五千年ってことだけど短くないか?」
地球だって誕生してから生命が生まれて文明が築かれるまで45億年、ホモ・サピエンスの誕生から現代まででも20万年だ。五千年で文明が進んでるのは早すぎだろ。
「まずケン様のいらした世界とは理が違うからです。この世界は太陽神ソルテ様が現れその思念により力の源である四大精霊が生れ、私達神獣やソルテ様の生み出した神がその力を使い世界を創造したのです」
つまり自然発生した物でなく神様が作ったから何万年も何億年もかからないという訳か
、でも考えたら俺たちの世界でも神話だとそんな感じだよな。
「ケン様の世界は様々な創造神が混在し無限にひろがる為に科学や理論、世界そのものの歴史など様々な事象や存在を裏付ける理が必要なのです」
よく分からないけど、キリスト教の天地創造や日本の国生み、インドや北欧や南米の神話は事実で世界を定着させる為に後付けで科学理論や宇宙が出来たってこと?
「この世界はケン様の世界のように多く神々の力とそれを繋ぐ理によって強固でなく様々な要因によって揺れ動いてしまうのです、せめてソルテ様の力がアマテラス様ほどになれば安定するのですが」
「でもソルテ様の力だけで大丈夫なのか?」
「この世界は小さいのでソルテ様が神格をあげれば大丈夫だと思います」
「そういえばこの島、聖地カガミだっけ?上から見たら端まで見えてたな」
「この世界の陸地は全て合わせてもアマテラス様の治める国の秋津洲と筑紫洲を合わせたくらいです」
え?インテリスターを見ると本州と九州の昔の呼び方か。便利だなこれ。
「人族と亜人を全て合わせてもアマテラス様の国の都と西の商都を合わせたくらいしか人は住んでません」
インテリスターを再びみた、人口は東京都と大阪府をあわせたくらいか、約2千4百万人か。俺もうインテリスターが無ければこの世界で生きていけない。
「生き物や文明も神や精霊もソルテ様の手によって作られたので、そんなに長い歴史がなくても成り立つのです」
「見た目幼女なのにすごい神様だったんだな、太陽神であり創造神なんだ」
「ソルテ様の見た目は神格と力に比例しています、ケン様の活躍で力を手に入れれば見た目は成長します」
なるほど俺が頑張ればソルテ様も成長するんだ頑張ろう。この世界のガイド的なことや通訳的な機能はインテリスターに入っていて力を増すたびにデータ更新と機能追加があるらしい。
その後も色々話を聞いて、夕食をとりサウナで犬族達と語りあって眠りについた。この世界に来てようやく落ち着いてものを考えられたな、初日がバタバタしすぎた。
翌朝気持ちよく目覚め、軽く運動して朝食をとった。そういえば服、加賀美 剣の衣装のままだな。この世界で暮らすならここでの一般的な服装にした方が良いだろう。ファルナと犬族に相談したが人族の流行りはよく分からないので町で調達したほうがよさそうだ。
日が少し高くなった頃、ファルナに乗って聖地カガミを飛び立った。ソルテ様が具現化する為には俺が活躍して力を溜めないといけないらしい。次にここに来るときはある程度活躍して成果を出したときだな。
しばらく飛ぶと五騎の騎馬に護衛された馬車が見えてきた上空で追い抜くとこちらに気付いて馬と馬車から降りてきた。旋回して着陸するとみんな出迎えてくれたけど。
えーと、お願いだから跪かないで!祈りを捧げないで!なんかこの人たち俺のこと凄く勘違いしてるんじゃないか?
「ちょっと!それやめてください!」
跪きくアーシア達に誤解無いように説明する。俺は世界に害なす悪を倒し人々に希望を与えるために太陽神ソルテ様に命じられた、ただの人間だと言うこと。この世界の常識や社会情勢があまりわからないので教えて欲しいこと。この世界の一般人として暮らして情報を集めるため仕事や生活の基盤を固めたい事を分かりやすく言った。
「人々に救済を与えるために市井に紛れ民の声に耳を傾けるのですね畏まりました」
アーシアさん・・・大体伝わっているんだけどニュアンスが・・・そんな畏れ多いものじゃ無いんだけど。
「えっと、私は平民として生活しますので聖職者や騎士である貴方方に対する言葉遣いや態度を相応のものにします、私に対しても一般の平民に対するものにしていただけないでしょうか」
「ああ、分かった名前はどうするんだソルテラスじゃまずいだろ」
騎士団長がわりとあっさり受け入れてくれた、確かに太陽神の名が入るのは変に勘繰られそうだし今の俺は加賀美 剣だ。
「私の名はケン カガミです」
「平民は普通苗字は名乗らないものですよ功績があって与えられたりしますが、それにカガミは神の住む聖地の名前、苗字を名乗るのなら別のものが良いと思います」
アーシアの提案はもっともだと思う、確かに太陽の神殿がある空の島の名前がカガミだったよな。
「苗字無しでケンでお願いします、それと今回の事件に私が関わったことは報告しないでいただきたいのですが」
「魔神ダウナーの事と火の精霊とファルナ様の解放をソルテラス様の活躍抜きで報告する事は難しいですね」
レイモンさんが難しい顔をしているとファルナが提案した。
「ソルテラス様は皆様の危機に忽然と現れ魔神ダウナーを倒し、私と火の精霊を解放して精霊カガミに帰って行った、ケンはただの現地での協力者ということでどうでしょう」
その案に全員が賛成した。俺は現地の案内と戦闘に参加し助けになったという事で、謝礼を受け取るために王都に同行するという事になった。
後は服装をこの世界に相応しい物にしたい事と仕事や生活の基盤だが、騎士団長が面倒をみてくれるそうだ。
団長はロデマス=ギャバンという名で貴族の出だが、家を飛び出して冒険者という仕事をしていたらしい。
今は武勲を挙げて爵位を持ち騎士団長をしているが平民の生活が分かるし、平民の知り合いも多ので力になってくれるらしい。
とりあえず今後の方針が決まったことだし大体の打ち合わせも出来たので王都に向かうとするか。飛んで行くファルナを見送り王都への道を進んで行く、初めての人里が王都か緊張するなぁ。




