たびだつひとへ
こんなにも心細いのは、きっとあなたのせいでしょう。
私はこのように書いて、少し考えてからそれを破り捨てた。
わたしは、なんて自分勝手なの。
これから足場の悪い山道へと進むような相手に、これ以上何を背負わせようというのか。
本当に酷いやつだ。てっぺんを目指して、必要なもの以外をすべて削ってゆく彼女に、捨てられない餞別を渡そうとするなんて。
必ず帰ってくるからね、と笑う彼女を信じられない訳では無いだろうに。何故私はこんなにも不安なのか。
あの山はきっと、夏は暑く冬は寒い。
きっと彼女はそんな時でもちょっとオシャレなスニーカーだ。軽やかに、テンポよく進む。
ちょっとかっこつけて振り返る彼女の後を追うことは私には許されなくて。
彼女の中には地図がしっかりとあるのに、私はそれも無く、迷ってばかり。
彼女は私に、いつも的確なアドバイスをくれる。傷ついた時には優しい言葉を、疲れた時にはねぎらいを。そんな彼女を私は姉のように思っていたし、大切だった。
…いや、この際はっきり言おう。私は彼女が大好きだった。
この私の不安も、彼女は容易く吹き飛ばすだろう。
「てっぺんなんて、君ならすぐにたどり着けるよ。今は道に迷うくらいでちょうどいいの。君にはまだ時間がたっぷりあるんだから。歩き回って地図を広げるのもいいんじゃないの」
別れの日はきっと、こんなことを言うんだろうと思う。
私たち人間は、神様から見ればとんでもなく滑稽に違いない。
出会いと別れに一喜一憂して、泣いた次の瞬間にはまた笑っているんだから。
また、会えるよね?
別れの悲しみより出会いの喜びに感謝して。出会わなければよかっただなんて、思わない。
あれ、雪がふりはじめた。初雪だ。
さむい。けど、それでも心はあったかい。
だって、知っているから。
この勢いじゃ、積もりそうもないね。
この景色は真っ白にはならない。真っ白に塗りつぶされることはない。
次に会う時は、私ももっと大人になって、身長だって今よりずっと高くなって。
そうしたら、一緒にどんな山でも登れるよ。エベレストなんてどうかな、なんて。
『そして、もっとてっぺんへ、てっぺんへ。高く、高く』
ええー?なにいってるのー笑笑
エベレストとよりも高い山なんてないよー?笑笑
さあ、お別れだね。
今まで、ありがとう。そして、またね。
あなたのもとへ、いつか行きます。
その時はどうか、一緒に素敵な景色を見よう。
Happy life!
あなたとの出会いに感謝。
読んでくれた方、ありがとうございます!
出会いと別れを書いてみました!共感してくださった方がいれば、とても嬉しいです!!