ゴブリン2
軍学校を出でからというもの、裏方の事務仕事が多く、
なんのために軍人になったのかと考える日々が続いていたけど・・・
今年の春から城壁都市ルトナに追加派兵されてから軍人って感じの仕事ができててやり甲斐を感じるなぁ。
城壁都市ルトナは深い森林に近いから動植物を採取する狩人が多い。
まぁ彼らはガラが悪い印象はあるんだけど・・・
広い農地も広がってるから商品を仕入れにくる商人もたくさん往来する。
だから!
農作物を狙う動物や、商人を狙う盗賊がよく出没する地域でもある!
去年から盗賊や闇商人の取り締まりの法律が強化されたのもあって、このルトナに追加部隊として配属された私だが、その基本的な任務は都市周辺の巡回と、周辺に近づく有害生物や無法者への対応。
つまり街の周辺を巡回して危ないものがいたらとっちめる!ってことだ。
実際戦闘も多いんだよねぇ。でもその分!軍人として働いてる感がある!
あとマードック小隊長がいい人なのが良かった。強いし!これだけの腕なのに巡回小隊の小隊長ってことは家柄の問題かな?
でも五日間の外回りは流石に疲れが溜まってきたよぉ
二日目でゴブリンの群れに出会うし、、ゴブリンは対して強くはないけどずるがしこくて、弓矢とか伏兵とか小賢しいことするから危険度はかなり高い。
そして昨日はスライムボス!
スライムボスとか初めて見たよ。あり得ないでしょあのキモさと大きさ。
緊張しっぱなしだったぁ。
早く体をお湯で洗って、冷たいエールをみんなでグィっと行きたーい!
「疲れているのか?エミリー」
思わずついたため息が隊長に聞かれてしまった・・・
「いえ!全然問題ありません!」
疲れているけどそれを見せたら街を守る軍人として示しがつかない!詰所に帰るまでが任務だ。
「いやまぁ無理もあるまい。今回は大きな戦闘が2回もあったからな」はっはと笑うマードック隊長。
「いやぁでも、ゴブリンはともかくスライムボスは驚きましたねぇ!」
むっ、ジェームスが話に割り込んできた。
ジェームスも今年、西部から派遣されてきた一人。ちなみに同期。お調子者で口が軽く空気が読めないバカだけど、戦闘の経験と技術は確かのが癪に触る。剣は大したことないが槍術が得意で、軍学校で必修の剣術が免除になったほどだ。
「あんだけでかいと乾燥剤なんてなんの意味もないっすもん」
「ああ、私もあのサイズと出会ったのは初めてだ。」
スイラムは1匹なら別にどうってことない。
でもたまーにスライムが分裂し損なって大きさだけやたらと大きくなったスイラムがいる。
その大きさによってスイラムチーフとかスライムボスと呼ばれるけど、どれも珍しいから教本や話でしか知らなかった。
なのに初めてであったのはスイラムボスだよ!
普通のスイラムの30倍はあったんじゃないかな?
だって実家の物置がすっぽり入ってもまだ余裕がありそうだったし
「いやしかし、私は部下に恵まれているな。誰も怪我なく倒せたのは君たちのおかげだ。報酬が楽しみだな」
トーマス隊長はいつも私たちを立ててくれる。
あのスライムボスを無事に倒せたのは隊長の指示と腕っぷしがあってのことなのに
「報酬!そっかスイラムボスにもなると臨時報酬が期待できますね!!
ひょー今日はちょっといい飯食いましょ!隊長!」
ジェームスが槍を小脇に抱え手をすりすりしながら隊長に言い寄っている。
「ま、報酬次第かな」
笑いながら答える隊長の言葉にジェームスがヒャッホーイと声をあげる。いやいや報酬出たらあんたにも入るんだろうから自分で払いなさいよ・・
まぁ何だかんだ無事に5日間の長期巡回も今日で終わるし、こんな和かな感じになるのも悪くないのかもしれない。
ルトナの街が見えてきた。
今回は追加報酬も出るだろうし、今回の巡回が終わったら3日間の休暇だ。
報酬で何か買い物をするか、それかジェームスが言ったようにちょっと良いものでも食べても良いかもしれない。