森谷と長原
春の陽気に風も踊る、そんな日。日曜日の昼下がり。森谷は長原の自宅に遊びに来ていた。
元々親友ということもあり森谷は長原と過ごす時間が多い。
森谷は長原のベットに転がり雑誌をめくる。長原はベットの横に背を預け床に座っていた。
「真央さ」
「ん?」と雑誌をめくりながら森谷が答えた。
「ぶっちゃけ、魔界のご飯ってどうだった?」
唐突に長原が質問を始める。
気になったことは気になった時に聞く。
それが長原美雪。なにがわるい。
魔界での食事というと、基本的には魔王の城への通過点として寄った村で買った保存食が多かった。
後は村に宿泊している時の宿の食事。
旅の中で皆に好評だったのはパランという果実やゾルヒのベーコン等だった。
ちなみにパランは赤い皮の中に白いシャキシャキの果肉が詰まっている、もはや林檎である。
ゾルヒも実物を見たことはないがほぼ豚肉の味と変わらなかった。と桜咲は語っていた。
「えー?ご飯?っていうかほとんどパランしか食べてなくない?」
と少し笑いながら森谷は答えた。
「そうか?俺はゾルヒのイメージ強いけど」
「たしかに。美雪はゾルヒ食べてたかも。あとなんだっけ?あのお菓子」
「ソブレ?」
と長原。
「そうそう!クッキーみたいなやつ。もうサブレでいいじゃん!なにその一文字違い」
森谷は自分で話しながら吹き出してしまった。
「まぁ、でもさ」と長原は続ける。
「食べれるものあって良かったよな。どうする?これが主食です、つって目玉みたいなもん持ってこられたら」
うげっと森谷はイメージしてしまい気持ち悪くなってしまった。
「それは無理かもー、桜咲に食べさせてみる」
「しかもそれ噛むと、、、きぃぃぃぃぃあああああああって鳴くから」
「鳴くの!?ってか生きてるんだ?」
「しかも食べるのが遅いと逃げるから」
「え?足あるの?」と森谷。
「飛んで」とさらに長原が言い返す。
「羽なんだ!?」また吹き出してしまう森谷。
ふふ、と余韻が残る笑いをしてしまい、なかなか息が整わない。
ふうふう、と息を整えた森谷は長原に「そんなのあった?」と聞いてみた。
「いや、想像上だけどな」とやや笑って長原は返した。その後も長原は「でもさ」と続ける。
「なにが一番不味かった?」
少し考えながら森谷は答える。
「えー?んー、、、あ、あれかな、最初の村で食べた野菜炒めみたいなのに入ってた緑色でツヤツヤしてるピーマン」
「お前それ普通のピーマンじゃねぇか。ピーマン嫌いなだけだろ」
と長原。
長原美雪と森谷真央の休日。