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6-1  + 狙撃戦 +


 

 専門教育を終えた5組のペアは、それぞれが各地の実戦部隊に配属されることになった。もしかしたら永遠の別れになるかもしれない。

 

 わたしたちは寄せ書きを交換することにした。色紙が回ってきたので大きく『必中』って書いたら、ユウキはその隣に『愛』と書いて、その下に小さな文字でメッセージを綴った。ふたつを比べてみると、ユウキの方が女の子みたいで自分の方が男の子みたい。少し恥ずかしい。


「ねえユウキ、どうして『愛』なの?」


「もう一度、愛のあふれる国にしたい。戦いではなく、普通に愛がある日々を取り戻したいんだ」


 ユウキは真剣な顔で答えてくれた。そう、そのとおり。あなたはいつも真面目にいろいろなことに向き合っているのね。恥ずかしいなんて思ってごめんなさい。



 ◇



 配属された部隊は予備義勇隊第5連隊第14大隊第55中隊第138小隊という名称で、今まで所属していた訓練小隊から歩いて1時間ほどの所に、第5連隊の本部とわたしたちの新しい隊舎があった。


 第138小隊といっても、一つの中隊にそんなにたくさんの小隊があるわけではなくて、予備義勇隊全体の全小隊にひとつずつ割り振られた小隊番号なの。ユウキと一緒に新しい居住スペースで装備を整理していると、「また会ったな。いよいよ実戦だ」という声が聞こえた。振り返るとスズキ中尉が立っていた。どういうことなんだろう。


 聞いて、びっくりした。スズキ中尉は第138小隊の小隊長に任命されたんだって。実戦部隊で戦いたいという希望が叶ったらしい。わたしは嬉しくて嬉しくて。中尉の命令なら、どんなことでも最後までやり抜くことができる。ユウキはどう?


 小隊には別々の訓練小隊を卒業した5つの狙撃班があって、不思議だなって思うんだけど、どの班も男女のペアで編成されている。定員を満たしている狙撃小隊はまだ少ないらしくて、この小隊も定数の半分しか狙撃班がない。

 

 新しい作戦の準備がもう始まっていて、わたしたちは1週間後の出撃が決まっていた。わたしたちは毎日、朝から晩まで通信訓練をした。作戦用の衛星通信スマートフォンを使うんだけど、裏が太陽光発電パネルになっているだけで普通のものとほとんど変わらない。


 今回の作戦は予備義勇隊初の実戦。作戦の目的は、表向きは敵の高級指揮官の排除だけど、短い期間で養成した狙撃手の実力を見極めたいというのが本当の狙いらしい。そして……いろいろなことを思い出して胸が震えてしまうけれど、わたしたちの小隊が投入される場所は、グローブ学園高校から2㎞ほど西に離れた森の中。



 ◇



 出撃の日の朝。夜が明ける前の隊舎は凍えるほど寒い。小隊全員、完全装備で屋外訓練場に集合した。中隊長から訓示を受ける。戦場がわたしを呼んでいるように聞こえて、全身が震える。小隊長の号令はいつもより甲高い声だった。


 わたしたちの国の紋章が描かれた旗が高く掲げられた。敬礼。出撃のラッパが鳴り響いて、目頭が熱くなった。わたしたちの小隊はスズキ中尉を先頭に出発した。同じ中隊の4つの小銃小隊が手を振って見送ってくれた。


 森の奥深くの基地から最前線まで100㎞。そのうち80㎞は数台のトラックに分乗して、曲がりくねった林道をゆっくり移動した。幌で覆われた荷台にトラックの排気ガスがほんの少しだけど入り込んでくる。胸がむかむかして車酔いしそう。最初は元気に話をしていたのに、今は静かだ。みんな目が死んでいる。


 林道の終点でトラックを降りた。顔を合わせての最後の作戦確認が済むと、小隊長と小隊本部付の隊員は基地の作戦指揮所に戻った。

 ここから最前線までの20キロメートルは細い山道を歩く。ユウキは山岳部員だからこういうのは得意なはず。緩やかな上り坂の途中で、前を行くユウキの背中に声をかけた。


「ねえ、ユウキはどうして山に登るの?」


「そこに山があるからだよ」


 ふーん。どこかで聞いたようなセリフ。


「そこに山がなかったらどうするの?」


「ふふっ、意地悪だなあ。アオイ、あんまり僕を困らせないでほしい」


 明るい声だ。ちっとも困ってないと思う。


「じゃあ、ついでに聞いてみるけど、もしわたしがアキラ隊員とペアを組みたいって言ってたらどうしてた?」


「どうしてたって? 君がアキラと組んだら、こっちはアカリと組んで楽しくやっていたよ」


「えっ、何? 今なんて言ったの」


「もう言ったはずだ。アオイ、君は強い人と組むべきだ、その方が君のためになる。僕は君から身を引くべきだ。決して君とペアになってはいけない。僕は本気でそう考えていた」


「覚えてる」


「だから君がアキラと組んだらこっちはアカリ隊員と組んで、今頃二人で楽しくやっていた……と思うか?」


「どういうこと?」

 

「本当のことを言うと、あの時、もしアオイが僕以外の隊員と、たとえばアキラやハルキとペアを組みたいと望んだら、僕は死ぬよりも辛かっただろう」


「ちょっと待って。さっきから何言ってるのかわからない」

 

 小隊の歩調は変わらない。右に左に、細い山道を縫うようにゆっくり登っていく。


「もし君が他の隊員とペアを組みたいと望んでいたなら、僕は、矛盾する気持ちを自分で裁くしかなかった」

 

「裁くって?」


「何でもない。たいしたことじゃない」


 裁くって何のことなの? 矛盾を自分で裁く……。いくら考えてもわからない。ユウキくんは何でもないって言うけれど、とてつもなく重い言葉のように思えてしまう。


「ユウキ。わたし、おかしなこと聞いちゃったね。ごめんなさい」


「いいんだ。君は狙撃の大事なパートナーだ。言いにくいことでも話してくれた方がいい。僕もそうするから。モヤモヤした気持ちのままだと一緒に戦えない」


 秋冬用の迷彩は冬の森の枯れた色に溶け込んでいる。黄土色、橙色、茶色、褐色、濃緑色の、複雑なようで単純な模様。この迷彩服の上に草や木の枝を付けたり、ふわふわの長い草が生えたような布を被る。そうすると怪物みたいになる。でも、森の中では周囲に溶け込んで、目の前まで敵が来てもそこにわたしたちが潜んでいるなんてわからない。確かにそこに存在するのに、誰も気付くことができない。わたしの気持ちの中にもそんなものがあるのかもしれない。


 すっかり葉の落ちた木の枝。冬なのに小さな芽、みたいなものが見える。芽の赤ちゃんかな。きっと春の準備をしてるんだね。春よ来い。桜の花の下でお弁当を広げたい。おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、おねえちゃん、今どうしてるのかな。モエ、いっぱいお花見したね。楽しかったなあ。残念だけどショウとは一度もお花見してない。小隊のみんなと満開の桜を見ることはあるのかな……

 

 小隊は前進を続けた。重い狙撃用ライフルは専用ケースに入れてユウキが背負ってる。直径5㎜の弾丸を20連射できるアサルトライフルも各狙撃班に1丁ずつ支給されているから、スポッティングスコープと一緒にわたしが背負う。そのほかにも狙撃班員は全員、自動拳銃と護身用の大型ナイフをベルトに吊る。弾薬箱や食料や様々な装備品は、狙撃班をサポートする20名の護衛班に運んでもらっている。


 小隊は予定どおり山の中にテントを張って1泊した。翌日の夕方、最前線に到着した。山の斜面の葉がすっかり落ちた木々の間から、夕陽に照らされたなつかしい街が見渡せた。


 敵は「千年の恨みを晴らす」と言い続けているし、今も殺戮と陵辱と略奪を繰り返す影像をテレビやネットに流しているけれど、セルフディフェンスや義勇隊が潜む森には決して近付かない。


 小隊本部と通信して小隊全員で打ち合わせをした後、それぞれの狙撃班は山の中に散らばった。わたしとユウキの第5狙撃班も陣地をつくった。腹ばいになれるスペースを整地して偽装する。護衛班は弾薬と食料とテントを陣地まで運んでくれた。その上おやつの差し入れまでしてくれて、「がんばってね」って笑顔で手を振って、小隊本部のある基地へ戻っていった。


 小隊本部に現況を送信する。三脚を組み立ててスポッティングスコープを取り付けた。ユウキの隣に腹ばいになる。結構寒い。気温と湿度を測定した。風は弱い。木の枝はほとんど揺れていない。低倍率で街を観察する。 


 家やビルの窓は皆閉められている。赤い夕日が市役所の窓ガラスに反射して眩しい。わたしの家はビルの影に隠れて見えない。この街で、いったいどのくらいの人たちが敵に脅されているのだろう。きっとみんなとても辛い思いをしているはず。


 視界の端、四階建てのアパートの屋上で何かが動いた。急いで焦点を合わせると、黒服たちがいた。10人。丸見えだ。彼らは狙撃を恐れてないのだろうか。ズームして最高倍率にする。風が強くなってきた。陽炎が水平に右方向へ流れている。黒服たちの、顔がはっきり見える。


 どの黒服も知らない顔だ。その中に一人だけ、立派な帽子を被った男がいた。あれはB国の将官用の制帽だ。風に飛ばされないようにしているのか、帽子を右手で押さえている。左頬に大きなホクロがある。時々口を動かして、部下に何か指示しているようだ。左胸が時々、キラリと光った。金色の小さなバッジ。視野にデジタル表示された方位、距離、高度差を急いで読み取る。


 アプリを起動して帽子男の服装や顔の特徴を検索する。あっ、これだ……。あの男は軍人ではなくて党政治局の高官。敵は党が軍隊を支配しているから、党の高官を狙撃したら敵に大きなダメージを与えられるって中尉は言ってた。


「見つけた! B国の高官。党の政治局員。左頬に大きなほくろがあるから、ここから見て」


 わたしは体を横にずらしてユウキに視線を送った。ユウキは腹ばいのまま体をこちらに寄せて、スポッティングスコープをのぞきこんだ。


「ああ あれだね。大きな黒い帽子」


「そうよ」


「距離と方位、高度差は確認したよ。あと連絡と観測、よろしく」


「わかった」 


 ユウキは元の位置へ戻った。わたしは敵の位置と人数、さっき検索した敵高官の詳細情報を小隊本部へ送った。5秒後、攻撃命令が届いた。他の狙撃班にも小隊本部から情報と命令が瞬時に伝えられる。


「ユウキ、攻撃開始。小隊長はね、高官を倒したら他の黒服も攻撃していいって」


「了解。補正量を頼む」


 マガジンをライフルに装着する乾いた音。ボルトが滑る金属音。ユウキは初弾を装填した。


 温度湿度は計測済。スポッティングスコープの視野にデジタル表示された方位、距離、高度差をもう一度確認する。陽炎の流れはさっきと変わらない。念のため指を舐めて真上に立てる。風は左真横から……9時の方向から秒速5m。風に変化はない。素早く弾道計算して補正量を求める。


「プラス3、左0.8」


「了解」


 ユウキの気配が消えた。しーんと静まり返った。わたしは思わずごくりと唾を飲み込んだ。


 ダーン……


 激しい音と硝煙の匂い。


 3秒後、高官の姿が吹き飛んだ。


「命中」

 

 残された黒服たちは呆然と立ったまま、うろうろとあたりを見回している。味方の狙撃班の射撃音がこだまのように響き始めた。黒服たちが次々に倒れていく。


 ユウキが次弾を撃った後、小隊本部に戦況を報告した。


 すぐ返事が来た。「攻撃中止。北へ100m移動して観測を継続せよ」とあった。

 

 ユウキと装備を分担して雑木林を移動した。足元はもう暗くなっている。風が少し強くなってきた。木々の枝がザワザワと揺れる夕暮れの山に、枯れ葉を踏む音がカサカサとひどく大きく響く。


 この山は子供の頃から遠足やハイキングで何度も歩いたけれどイバラやツタの絡まる密集した(やぶ)はない。だからどの方向にも動きやすい。でも、それは敵に発見されやすいということ。


 斜面の傾斜はきついところもあれば緩やかなところもあって一定していない。時々、靴底に硬い岩を感じる。岩と土の割合は半々くらい。ところどころに小さな窪地がある。


 指示通りの場所に、二人並んで腹ばいになれるスペースを見つけた。足を置く場所が少し盛り上がっている。ユウキが折りたたみスコップを広げて整地を始めた。わたしはアサルトライフルを構えて周囲を警戒する。


 日が暮れて、あっというまに真っ暗になった。月は出ていない。今夜は新月。闇夜だ。



 胸のポケットが震えた。取り出して画面を見た。本部からだ。「48時間以内に増援部隊として4個小銃小隊を派遣する」というメッセージ。増援は心強いけれど、別の意味で不安。ユウキにも見せた。


「アオイ、小銃小隊の増援ということは……接近戦の可能性があるのかもしれないな。本部は何も触れてないけれど、どう思う?」


「……だよね。わたしもそう思った」


「高官を狙撃されたんだ。敵は当然反撃してくる」


「狙撃には狙撃で対抗してくるのかな」


「暗くなったし、僕たちが移動したからそれは難しい」


「じゃあ、発砲炎が上がった場所を中心に砲撃、とか」


「本気でやるならそれが一番現実的だ。なのに敵は静かだ」


「このまま静かだったらいいのに……」


「整地が済んだら暗視装置を起動して街を観察しよう」


「うん」


 首都から遠く離れたわたしたちの街。海と山に挟まれた南北に細長い街。まわりの町の人たちをみんなかきあつめても5万人ほどしかいない街。漁業とジャガイモ栽培のほかに目立った産業もない街。なんにもないのに、それなのにどうして真っ先に敵に占領されたのだろう。


 一つだけ、あるとすれば、港のそばの細長い半島にあるセルフディフェンスの通信基地。街の人たちが『象の(おり)』と呼んでる超巨大な円形アンテナ。4階建ての市営住宅の向こうにチラッと見えるそれはわたしたちの街のシンボルだけど、あそこには少数の通信隊しかいない。そんなことは地元の人ならみんな知ってる。あんなにたくさんの黒服たちを上陸させなくても……。

 

 でも、都市伝説みたいな噂を聞いたことがある。あのアンテナの下にはすごい地下基地があって戦車やミサイルや戦闘機がたくさん隠されているんだって。海を隔てたA国やB国の秘密通信をこっそり傍受して解析してるって噂もあったし……

 

 整地が終わった。スポッティングスコープにケーブルを繋いでスイッチを入れると、暗かった視野が明るい緑色になった。

 

 敵は街の主要な建物に照明を点けたままだ。人影が映るたくさんの窓。街の人たちはいろいろな場所に分散して拘束されている。あの人影は敵なのか、それとも…

   

「敵の中枢はどこだろう」


 ユウキがつぶやいた。


 中枢……。そうだ、敵の中枢を攻撃するのが一番効果的だ。


「敵の司令部のこと?」


「そうだ」


「象の檻は?」


「あそこにはそれほど大きな建物はないよ。司令官や参謀や護衛の兵士が暮らせて、人質を盾にできる場所が必要だろう?」


「地下にすごい秘密基地があるっていう噂、ユウキも知っているよね」


「その噂だけど、出撃する前にスズキ中尉に確かめたんだ」


「えっ、そうなの? で、どうだった?」


「中尉は何も知らなかった。噂そのものを知らなかったんだ。だから中隊長に聞いてくれた」


「中隊長は知ってたの?」


「中隊長は噂を完全に否定したんだ。地下には非常用の発電機しかないらしい」


「ふーん、そうだったんだ。期待してたのに、残念だなあ」


「あの半島は子供の頃から結構気になったからね。飛行場跡やあちこちに残っている巨大なトーチカ跡で弾丸拾いをしたし、昔の戦争で戦闘機を隠していた横穴や地下工場の跡がいくつも残っているし。だから街のみんなは地下に要塞があると思っていたんだ」


「弾丸拾いはわたしもした。おにいちゃんと一緒に」

 

 端末を取り出して作戦データを再確認した。


「市民会館、市立体育館、市役所、駅、マリーナホテル、水産会館、学校……。わたしたちの班は明日の午後から学校を観察するってなってるけど、たくさんあるよね、学校って」


「僕は、敵の司令部はグローブ学園にあると思う」


「えっ? わたしたちの学校に?」


「あそこは小学校や中学校の何倍も大きい。トイレもたくさんあるし教室には何人もの士官や兵士が寝ることができる。人質を収容するスペースもある。それに、新築だから暖房もよく効く。隣の小学校の給食設備を使えば食事も完璧だ」


「本部に確認してみようか」


「そうだね」


 早速「敵司令部の位置は?」と入力して送信した。


「鋭意情報収集中」と返信があった。


「グローブ学園高校の可能性は?」と送る。


「否定できない」


「ユウキ、本部は『可能性は否定できない』って。観察してみようか?」


「できるかな」


「やってみる」

 

 本部に「第5班はこれからグローブ学園を観察する」と送信した。


 すぐ許可が下りた。わたしは丘の上に建つ校舎にレンズを向けた。


 周囲の建物とは違ってグローブ学園は真っ暗だ。不気味……。暗視装置のダイヤルを回して『強』にした。すべての窓にカーテンが引かれている。窓も閉まっている。なのになぜかカーテンがゆらゆら揺れている。中に人がいるのかな。敵か味方かわからないけれど。


 屋上には誰もいない。ロミオとジュリエットの大道具や衣装は跡形もない。いっぱい並べた椅子もない。ドームを載せた天文部室はあの日のままのように見える。


 あっ 視野のどこかで、何かが動いた。動いているような気がした。


 微かに……動いている。ドームだ。天体望遠鏡を格納するドームがものすごくゆっくり回っている。ドームの開口部が、もう少しでこちらを向く。天体望遠鏡の筒先が見え始めた。


 けれど、何か変。しっかり焦点を合わせると、それは天体望遠鏡じゃなかった。大きなレンズが付いた、大きな冷蔵庫くらいの、四角い箱……。似たものを訓練小隊の講義で見せられた気がする。でも、なんだったかな……。ああっ 思い出した! 敵の装備品だ。暗視装置! 確か、信じられないほど高感度のナイトスコープ……


 ドームはゆっくり回り続けている。開口部がまっすぐこちらを向いた。その瞬間、一瞬ドームの動きが止まった。けれど何事もなかったように再びゆっくり回り始めた。


「ユウキ、敵は天文部のドームに大きな暗視装置を置いて、この山を監視してる」


「まさか」


 ドームの回転が完全に止まった。しばらく観察していると、今度は逆回転を始めた。ゆっくり、ゆっくり回っている。そして再び止まった。


 わたしのスポッティングスコープと敵の暗視装置が、まるでにらみあってるみたい……


 あっ 


 パッと、ドームの中で何かが光った。背筋が寒くなった。


 発砲炎だ! 危ない!


「ユウキ、伏せて! 敵が撃ってきた!」

 

 腹ばいになったまま、思いっきり頭を低くした。


 




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