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エピソードゼロ

「やはり、そうか……。汝には、酷過ぎたか」

「黙れッ!」

「命令とは言え、私は逃れられぬ運命に逆らえなかった……改めて詫びよう」

「ハァ……ッ! これ以上、これ以上言うな! 頼むから言わないでくれ!」


 叫ぶと、呼吸が上手くできず汗が噴き出る。クソッ、今頃になってそんな事を言いやがって!


「そうだな……。もう終わりにせよ。私もそれを望む」


 疲弊する身体を叩き起こしデュランダルの切っ先を銀龍の脳天に向ける。これを振り下ろせばすぐに終わる。終わるというのに、何故動くことが出来ない。


「何故、その剣を振り下ろさぬ」

「黙れッ!」


 憎い。目の前の憎い存在をこの手で消せる。長年焦がれてきた願いだ。だというのに何故腕は動こうとしない。


「さ、最後に言う事は、あるか」


 使えない身体をごまかすために声を発する。大した時間稼ぎもできないと知っているにも関わらず自然と出た言葉だった。


「……そうだな。心残りと言えば郷に残してきた娘だが、私はもう疲れた。それに、今これを言った所で何が変わるわけでもあるまい。殺せ」

「くっ……」


 動けよ。これを脳天にぶっ刺せばいいだけだろうが! クソッ、動けよ!

 意志に反し身体は動こうとしない。いつからこんな(なまくら)になったのか俺の身体は。


「そうか」


 ふと、銀龍が目を閉じ薄くほほ笑んだ、ように見えた。

 瞬間、銀色の頭が持ち上がると、デュランダルの切っ先へと脳天が直撃する。

 命を刈り取る感触が確かに伝わった。


「すまない。だが、有り難う」


 一言その言葉を残すと、銀龍は持ち上げた頭を再度地面に伏せたのだった。


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