悪夢は続く
キスされそうになった瞬間、俺の体は俺の思考より早く動いた。
体をそらしてキスをかわし、足払いをきめた。さらに。
「世界を形創る創る光よ、支配者の声を聞け。」
光の縄を作り出し、女を縛り上げた。女は突然のことで反応できず、あっさりと縛られた。
「さてと、お前は何物だ。」
ここでやっと俺の意識は体に追いついた。こう
「無論、ただの人間ではないだろう。」
拘束した女を見下ろしながら感情を殺した声できく。
女は心底退屈そうに言った。
「まさかこの程度で私を拘束したつもりなの。」
女は妖しく微笑んだ。
「我心に巣くいし黒き影よ、」
力の無いのに恐ろしい声で、
「心の檻より解き放たれ、」
どこかで聞いたことのある声で、
「光を喰らえ。」
呪文を唱えた。
その瞬間、視界が黒く染まった。
目を覚ますとベットで寝ていた。
「今のは、夢だったのか。」
夢だったとしたらリアルすぎる、しかし夢だったなら納得できることがある。あっさりと魔法を使ったことだ。
力を隠すことにしているはずなのにあっさりと力を使ったのは、いつもなら有り得ない。
だが夢の中ならばさほど不思議ではない。力を使えるようになったのは夢の中なのだから。
そんな中で俺は重大なことに気づいた。
「今何時だ。」
焦って時計を見ると時計はきれいなへの字を指していた。
「なんだまだ7時かよ、もう少し寝よ。」
再び夢の世界へ行こうとした俺だったが、キッチンから音が聞こえ起き上がった。
俺の意識は一気に覚醒した。そのまま音をたてずにベットから降り、そっと机の上からハサミをとってキッチンへむかった。
やはりキッチンには人がいて料理をしていた。家に人がいるはずないので俺はハサミを軽く握り後ろから近づこうとした。
「あら、起きたのルシファー。」
不意に女が振り返った。その瞬間俺は強烈な寒気を感じた。
「なにしてんだよ、お前。」
夢に出てきた女だったからだ。俺は驚いてハサミをおとしてさまった。ハサミが床に当たる寸前で女の影が伸びハサミを掴んだ。
俺が驚いた顔でみていると。
「どうしたのルシファー、そんなに驚いて。」
女のほうが不思議そうに聞いてきた。
「お前、何物だ。」
俺は二度目の質問をした。
(「やはり覚えていないのですね。」)
女は悲しそうな顔をしたように見えたがすぐ笑顔になった。
「私はレイン、あなたの前世の妻よ。」
「異常な魔力反応があったといのはここですか。」
そんな頃、仁の家の上空には二人の魔女がいた。
「はい、ですが反応があったのは30秒程度です。わざわざルーク・シルフィーがこずともよかったのでは。」
ポーンのピアスの魔女ミリアは小声で文句を言う。
するとシルフィーは、目を見開き。
「何を言っているのですか、この私が支部長となったからにはどんな些細な事件であろうとも、見逃しません。」
威勢よく言い切った上司に対してミリアは、(「メンドクセー、何でこんなのがうちにきたんだよ。」)などと考えていた。
「どうするんですかシルフィー。センサーの反応だけで正確な場所なんて分かりませんよ。」
ミリアの言うとおり、センサーで知れるのは魔法の発動だけで場所までは分からない。
だが、もし魔法が発動されたならば話は別だ。
ピー、ピー。
「えっ、魔法反応。なんで。」
突然のことで驚いているミリアをよそにシルフィーは周りを見渡している。
「あそこです、いますよミリア。」
場所を確認したシルフィーは、ひとっ飛びに反応があった場所へと飛んだ。