壊れた日常、始まった非日常
海に当たる瞬間目が覚めた。
「はっはっはっはっ。」
心臓が走ったあとのように痛い、(「またあの夢かよ。」)この頃よくみる夢だ。
場所は違え最後は同じ、飛び降り安心したところで刺される。そして海に落ちていく。まるで本当に刺されたかのような痛みをかんじながら、海に当たる瞬間目が覚める。
3日に1度はこの夢をみる。そのたびになぜか懐かしさを感じる。
「そんなわけないのにな。」
俺は頭をふって時計をみた、まだ5時だった。
「二度寝するか。」
ジリジリジリジリ、目覚まし時計がけたたましく鳴っている。
「まったく練れなかった。」
二度寝しようと思ったが妙な胸騒ぎがして寝られなかった。頭をかきながらゆっくり体を起こす。
「最悪の気分だ。」
嫌な朝だがいつものように学校にいく、誰に言われるでもないのにただ学校二行く。いつもどおりの授業、たわいのない放課後の会話。
どこにでもある退屈だが平和な普通の生活、それが俺の唯一望みだ。この世界で今以上を望もうとも、
男である限り手に入るまい。
例え力があろうとも、俺はそれをのぞまない。他の男にとっては喉から手が出るほど欲しい力でも、俺にとっては必要のない力だ。
ピー、指紋認証をしロックを解除する、そして鍵でドアを開ける。いつもどおりの作業だが「あっ」、すでに鍵が開いていた。
違う、開いているのではない。鍵をさすべき鍵穴がないのだ、より正確に表現するならば鍵穴があるべき場所ごとドアが無くなっているのだ。
俺はこれを見た瞬間すぐに警察を呼ぶべきだったのだ、そうしていれば少なくとも数日は平和な日常を謳歌できた。
だが俺は特に気にすること無くドアを開けてしまった、この選択のせいで俺の退屈だが平和な日常が壊されるなど露ほども思わなかった。俺はせいぜい(「ドアどうすっかな。」)くらいにしか考えていなかった。
だが俺の日常はあっさりぶっ壊された。
「お帰りなさいませ、久遠仁様。」
そして始まったひたすらに不幸な非日常が。
「いえ、わが夫ルシファー様。」
自称俺の嫁によって。