サボテン、対決ス。
明月大学もとうに夏休み期間。
サークルも夏活動がようやく終了した。
情報学部のメンバーは、故郷へ帰る奴、バイトに明け暮れる奴、部屋でネット漬けなど色んな奴がいる。
そして、俺にも素晴らしいプランがある!
「オイ、雄次。それ何だ?」
同居人が早速、重そうに担いできた紙袋を目ざとく見つける。
「お前も見るか?」
畳の上に中身を広げてみる。
『常夏の楽園!バリ一週間。』
『ハワイ5日間ポッキリ価格!!』
『時代はフィリピン!グルメツアー!!』
「おおっ!海外か。」
「この暑い日本を脱出してやろうと思ってね。お前はどこがいいと思う?」
「やっぱり、ハワイだろ。ホノルルだろ!!」
「じゃあこの『5日間ポッキリ価格ハワイ旅行』にするか。」
「賛成!!」
「よし、じゃあこれ決定。」
「常夏の島かぁ。輝く太陽、青い海、白い砂、そしてイイ女・・・」
完全に意識がホノルルビーチに飛んでいってる同居人に向かって俺は冷酷な一言を放った。
「ちなみに、お前は連れて行く気無いぞ。」
ピシッ
一瞬にして凍りつく室内。
「・・・・エッ?」
「だーかーらーお前を連れてく気なんて無いの。俺一人で行くの。」
「何が、何に、何を、イヤ、何で?」
完全にショックで混乱しているらしい。
「だってさ。お前サボテンだろ?日本出国する時に検疫とか厄介だろうが。」
その辺、日本国はしっかりしているもんだ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・それより雄次。お前金は有るのか?」
「あるさ。これまで家庭教師のバイト掛け持ちしてたからな。ハワイ4泊位余裕さ。」
どうやら妨害する策に出たらしい。
「・・・・・しかし、今後の蓄えは大丈夫なのか?お袋さんのスネをかじるのは人としてみっともないぞ。」
「大丈夫さ。意外に堅実な方なんでね。」
自慢じゃないが貯金はかなりのもんだ。
「・・・・」
「・・・・」
「別に海外に行かなくても色々と楽しいことはあるぞ。」
「輝く太陽、青い海、白い砂そしてイイ女よりも?」
手に取るように焦っているのが分かる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・ところでお前は学生だ。急に大学から呼び出されたりしないのか?」
「無い。」
「何故言い切れる?」
「教授、助教授、講師全員揃って日本脱出してるからだ!」
「・・・・・・・・」
どうやら、敗北に打ちひしがれているようだ。
「明日申し込んでくるからな!」
これまでサボテンに勝利した事のなかった人間が、遂にサボテンに勝利した歴史的瞬間であった。
俺は勝利の余韻に浸りながら早々に眠りについた。
〜そして翌日〜
「じゃあ申し込みに行ってくるからな。諦めろよ。」
そう言って部屋を出発しようとした時に、携帯が震えた。
『菊地雄次君。大学生協まで至急来て下さい。』
生協?
生協に着くといつもの白岩さんが迎えてくれた。
「雄次君助かるわ!夏休み中家庭教師の仕事沢山やってくれて!!」
はい?
「えっ?何のことですか?」
「昨日の深夜、電話くれたじゃない。『夏休みは働きたいんで、家庭教師のバイトあるだけ下さいって』。明月大ってやっぱり人気が有って依頼が多いから助かるのよね。」
そういえば、携帯がイヤに傷だらけだった気がする。
そう言い残すと白岩さんは去っていった。
そして俺の手元には夏の思い出の代わりに、大量のテキストが残されたのだった・・・・。
AOIです。
結局、こういうテイストに落ち着きました。
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