4:王都へと
「・・・うっ・・・・・あ・・・れ?・」
朝。
外の光に急かされるように起こされる。
気絶するように寝ていたようだ。
ひどく体が重たい。
何か運動をした後のように体が疲れている。
辺りを見渡してみる。
自分の、いつもの自分の部屋だ。
「・・・あれ・・・なんで僕・・・・・・家にいるの?・・・」
ジンは頭を抱える。
あの時は教授の仕事を代わりにやって・・・
でも、そこからどうやってここに来たんだろう。
普通に家に帰ってきた?
でもいつ?
どうやって?
方法も時間さえも思い出せない。
だが、すっぽりと落ちた記憶の中でしっかりと残っている言葉。
(「ようやく気付いてくれた・・・私はエル。精霊を守り世界を守るもの。会いたかったよ!ジン!」)
綺麗な顔立ちの見知らぬ少女。
見たことのない鮮やかな衣服を身にまとって自分に向けて綺麗な顔を向けて笑っていた。
でも、解らない。
あったことがある? いつ・・・
僕のことを知ってた? なぜ・・・
考えれば考えるだけ謎が謎を呼ぶ。
精霊なんて聞いたこともない。
ましてや彼女のことなんか記憶の片隅にも
「・・・ない・・・・」
そして時間は流れ式典の日となった。
教授からは聞いていなかったのだが式典の様子は全世界に向けて放映されているらしい。
ライル教授は魔装機特別部門にて受賞していた。
内緒とは言われていたのだが全世界に放映されてしまうのだ。
ジンは教授との約束を破るつもりはなかったのだが、結果・・・研究員全員に知られてしまうこととなる。
魔装機研究機関に所属する全ての人がこの名誉に喜びを分かち合った。
そして教授がセ・イレード王都ディム・バルアから帰ってくる日。
ジンは帰ってくる教授を迎えに行くために王宮の近くにあるディム・バルア港に向かう定期船に乗るために移動を始めていた。
迎えは研究員たちの推薦で決まったものだ。
少し長旅になるため荷物もしっかり準備している。
「さ、早く教授を連れて帰らなくちゃ!みんなが待ってるし」
そして、彼は船に乗り込む。
平穏から波乱に満ちた、船旅への船に・・・
王都へ行くのにはジンがすむ街、ルエ・ルドスから定期便が出ている他にその他の地域から船で向かうことが主流だ。
陸路や空路もあるのだがそこには様々な魔物が徘徊しており非常に危険なのである。
魔装機を使うことでその危険はほぼなくなったのだがその恐怖はいまだに人々の中に根付いている。
人を喰らい、自ら魔力を放ち利用する魔物。
はるか昔から人々の中で忌まわしき存在とされ忌み嫌われてきていた。
昔には人為的に人と魔物の遺伝子を配合しつくりだされ、兵器として利用されたり魔物の力が使えるというだけで差別を受け迫害された人間が生み出された無残な歴史もある。
その人為的に作り出された魔物を魔族と呼び迫害したり、殺害したりしたこともある。
魔族を収集し作り上げた国が科学文明国セ・イレードに並び強大な力を持つ古代魔術国ダリス・カーランである。
ダリス・カーランを治める若き王が圧倒的カリスマ性で種族間でのいがみ合いを終息し結集させ大国となるまでのし上がったのだ。
この二つの大国以外にも様々な中小国はあるがそのほとんどが属国という形になっているのだ。
もちろん中立国という形で存在しているところも数多く存在する。
二つの大国で行われた大戦後途絶えていた国交が今では穏便に話が進んでいる。
その理由として国王同士の親交が深くなったことが大きいだろう。
今ではこのセ・イレードにも魔族の人間を多く見かけるようになったのだ。
そのような世界の広い海の上でジンは寝ていた。
涼しい海風に当たり心地よくなっていく。
「・・・気持ちいい・・・まだ王都まで時間があるし・・・・少しだけ、寝よう・・・か・・な・・・・」
朝からの疲れが抜けていなかったためにすぐに眠りに落ちる。
その中で、夢を視た。
どこか遠い国だろうか。
見知らぬ服装、見知らぬ武器。
魔族らしき兵士と人間の兵士が争っている。
戦争。
血にまみれ泥と硝煙の臭いにつつまれる戦場。
その中でひときわ目立つ男。
両手に剣を持ち背中には自分の背丈ほどある長刀を背負っている。
剣には血がつきあたりには無残にも斬り殺された死体が無造作に転がっている。
見た目は人間。
だが、人間の味方ではなく魔族の味方でもない。
ただ何かを守るように人も魔族も無用に斬っていく。
その瞳は暗く、そして強い意志を持っている。
その途中、何かを聞いたように顔を上げ動きが止まる。
だがすぐに意識を戻し戦場を再び駆け巡る。
その眼には涙が伝っていた。
「・・・・また、あの夢か・・・・」
夢を見ている最中に目が覚めてしまった。
いつも見ている夢。
つい最近ではなく幼いころから見ていたものだ。
もう少し見ていたい。
そう思うと途切れてしまう不思議な夢。
それでいて何か。
「懐かしい感じがする・・・今まで以上に・・・ん?」
少し回想にふけっていると船のアナウンスが王都への到着を告げていた。
すぐに荷物を準備しジンはまだ疲れの取れない体を引きどこか落ち着かず不安な気持ちを抱きながら船を降りるのであった。




