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星巡りのセレナーデ  作者: ファントム
第一章:始まりへのカルマンド
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9:暗の中で羽は舞う

「ガルーダ…さん? よ、傭兵って…は?…擁護? 依頼?………ぼ、僕がなんで…」


恐怖と混乱が入り乱れ感情がごちゃごちゃになっている。

ジンは今の状況を理解できなかった。

ガルーダと名乗る傭兵が、なぜ自分を助けたのかもそうだが自分が殺されなければならない理由が全くない。

目の前で倒れたすでに息のない無関係な二人もなぜ殺されたのか分からない。

ただ、教授を迎えに来ただけなのに。

ただ、教授を探していただけなのに。

ただ、それをたまたまいた兵士の二人に聞いただけなのに。

依頼? そんなことは関係ない。

この状況を誰か説明してほしい。

その思いでいっぱいだった。

そんな様子を見ていた傭兵―――ガルーダはジンを後目に前を向く。

殺意を全面的に出した低い声で目の前にいる殺人集団に言い放つ。


「……退け。お前たちの先手を切ってここに倒れてる奴と同じようになりたくなかったらな」


「………………」


目の前にいる人物たちは何も言わずただそこに立っている。

人数的には圧倒的に相手の方が有利ではある。

だが、ガルーダの放つ殺気は先程彼に倒された人物が放ったものよりも格段に上をいっていることにジンは気がついた。

それを感じ取ってだろうか相手もまた微動だにせず、ただ黙っているだけなのである。

張りつめた空気の中で痛いほどの魔力と凍るような殺気が交差しあっている。

その空気にジンは吐きそうになるが一瞬でも気を抜けば自分が殺されてしまう状況だ。

そんなことにはなりたくない。

まだ、17年しか生きていないのだ。

ここで死ねるわけがない。


「…黙ってないで、何か言ったらどうだ?退くか退かないか。簡単だろう?」


長い沈黙の中ガルーダは、退屈そうに問いを投げる。

左手にある魔装機を前に突き出し挑発する態度をとるがそれでも動きはない。

ジンはその様子を見て立ち上がろうとする。

まずここから逃げなければならない。

そのためにも急いで姿勢をを立て直さなければいけなかった。


その時だ。

どこからともなく現れたかすかな殺意。

微力な魔力が集まっているのも感じ取れる。

先程は目の前の巨大な圧力のせいで感じ取れなかったのだろう。

だが、一度見つけた殺意をジンは逃さない。

その方向へ顔を向けどこに隠れているのかを探すと少し離れた屋根の上に狙撃の準備をしている敵を発見する。

よく『視て』みればすでに攻撃の準備は済んでいて今まさにトリガーに手をかけガルーダに向けて銃弾が発砲されようとしていた。。


「ガルーダさん!狙撃手がいます!気をつけて!」


「――――――ッ!!」


ジンは慌ててガルーダに向かって警告を出す。

ガルーダもジンに言われて気がついたのか左手に持っていた魔装機を狙撃手に向けた。

その瞬間、銃声が鳴り響き風と魔力を引き裂きながらガルーダに向かって行く。

ガルーダはその銃弾をすれすれで躱し、かわりに狙撃手へ向けて雷をまとった銃弾を放つ。

銃弾は途中で三つに分散しそれぞれが狙撃手に突進し、その速さに逃げる暇もなく狙撃手は三つの雷に貫かれ支えをなくした体は屋根から転げ落ちていく。

だが、まだ脅威が去ったわけではない。

むしろその機会を待っていたかのように目の前にいた4人は一斉にガルーダに飛び掛かった。

前面四方からの攻撃にジンは思わず「危ない!」と声をあげてしまう。

だが、ガルーダはその襲撃にも慌てることなく後ろに仰け反りながら大きく上に跳躍しその攻撃を躱した。

目標を失った襲撃者はガルーダがもといた場所で衝突するかと思えばぶつかる寸前にお互いを回避しあいながらなおもガルーダを追って跳躍した。

その行為にガルーダの口元が綻ぶ。

いつの間にか空いていた右手にはもう一つ魔装機が握られていたのだ。

空中でスカイダイビングするような体勢で銃を向ける。


「残念だったな、お相手は此処まで(・・・・)だ」


銃を向けられた空中の暗殺者たちに為す術もなく、自身の武器使いを急いで防御を固める。

が、そんな行為をガルーダが許すはずがない。

両手にある魔装機のトリガーを引き、暗殺者をただただ撃ち抜いて行く。

銃弾で撃ち抜かれ、ボロボロになった彼らは力なく落ちて行く。

ジンはその時、異変に気づいた。

今撃たれたのは三人。 後一人の姿がないのだ。

ハッとなって目の前を見るすると視えない影の中に一人。

先程の銃撃の雨から逃れた一人が着地に合わせて武器を突きだそうとしているのである。


「ちぃ、一匹逃がしたのか!」


狙われているガルーダの方は着地を取ろうとする。

が、不意に目の前にいる人物にガルーダも気がつき忌々しそうに舌打ちをする。

だが、それを迎え撃つ体勢が取れない以上ガルーダにできることは受け止めるか武器の軌道をそらすことだけ。

さらに、軌道をそらしたとしても追撃をされたらおしまいである。

故に一か八か受け止めることしか選択肢の中にないのだ。

そんなガルーダの焦りの気持ちも知らないと言わんばかりに暗殺者最後の一人が踏み込み武器を突き出そうとする。

ガルーダもそれを受け止める準備を整えていた。

その時、辺りに光が満ち思わずその眩しさに眩んで地面に落ちてしまう。

何が起きたのか急いで確認する。

そして、それは彼の予想を裏切る途方もない結末となった。


何か声が聞こえ、光が辺りを包み込んだのだ。

瞬間暗殺者の武器は使用者と共に斬撃を受け砕け散ったのである。

右肩からななめに傷跡が走り血が噴き出している。

目を疑いまだ眩しい光を放つ物体を膝を突きながら見る。

そこには紛れもないジンが先程まで持っていなかった武器を両手に持っていたのである。

形状は剣。光源はこの剣からだった。

ガルーダは目の前の状況を把握できず、だが警戒をしていた。

気配に気づいたのか、ゆっくりと武器を持ったジンが振り向く。


「…お前……一体何をした?」


「……僕は…あれ?」


記憶がないのか、ジンは少し困惑した表情でおろおろし始める。

それに反応したのか、剣の光がだんだんとおさまっていき最後には消えてしまう。


「ガ、ガルーダさん! 一体…何……が―――――――」


「おい、しっかりしろ!大丈ぶ―――――」


それを見たジンは辺りの状況を確認しガルーダに問おうとした。

だが、操り人形の糸が切れたように気を失ってしまう。

少しジンの中で聞こえていた声も遠のき意識は暗く暗転してしまった。



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