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19.struggle

 カーラジオは無難なトークとクラシック、それに聞き取れない韓国語だけで埋まっていた。舌打ちをし、スイッチを切り替え、音楽プレーヤーを繋ぐ。ボリュームのつまみをめいっぱい捻ると、窓を閉めていても、夜中の山道に重低音のリズムが響き始める。

 アクセルを踏みつけた。エンジンが唸りを上げる。見える景色はかなりの範囲が真っ暗な森で、しばらくは他の車両になど出会わないだろう。

「あーなーたのぉーっ」

 音楽に合わせてがなりながら、ハンドルを切った。タイヤを思い切り滑らせながらコーナーをクリア。「社用車」の文字が視界の端に映る。

 知るもんか。

 スピードを上げ、尚も歌い続けていると、脳内の細かいあれこれを塗りつぶして熱が弾け始める。エアコンを強くした。

 眼前にヘアピンカーブが迫っている。道の外は崖、車はトップスピード。冷風の吹き付ける肌からまた熱が吹き出す。

 曲も丁度サビの部分に差し掛かっていた。ドラマみたいなチキンレース。悲鳴のように歌い続ける。

 森の闇が、真正面から襲ってきた。

 ブレーキ……。

『何度言ったら覚えるんだ』

『応援してるからね』

『あいつ、学校やめるって』

『大人になったら分かるさ』

『赤組、優勝ォーー!』


 金属の擦れる、嫌な音がした。

 全身から汗が噴き出す。かけっぱなしの音楽が頭に響いて耳鳴りがする。

 詰めていた息を吐き出して、アクセルを緩めた。バックミラーには遙か後方のヘアピンカーブが映っている。弱い笑いが漏れた。対向車に気づき、音量を絞った。


 帰宅してみると、社用車の左側にべったりとガードレールの跡がついていた。深い溜息をついて、アパートの階段を上る。自室にたどり着くなり、電気もつけずひきっぱなしの布団に身を投げ出した。

 喉が痛い。踏みっぱなしだった脚が震えている。

――今日は、頑張ったな。

 頭の中で、そう言葉にしてみた。

『何を?』

 小さく返事が返ってくる。声の主は、上司か、友人か、親か、それともあの頃にいた少年か。

――頑張ったよ。

 枕を頭から被って、きつく目を閉じた。



「苦闘する」、

「努力する」、

「もがく」、

「~に取り組む」。



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