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07. 新しい仲間達

ギルドで仲間募集をして、1週間。


正直、もっと時間がかかると思っていた。

だが予想に反して、思ったより早く仲間は集まった。


そして今日。

新たな仲間たちとの顔合わせの日だ。


一人目は前衛の盾使い。


重厚な金属音を響かせながら、その男は現れた。


全身を覆う鋼の鎧は所々傷がついている。

だが、それは幾度もの死線を越えてきた証。

片手に携えるのは、人一人を隠して余りあるほどの巨大な盾。


漆黒の髪に、鋭い眼光を放つ青い瞳。


だが、口元は、戦場に似つかわしくない豪胆な笑みを浮かべている。


「ガルド・アイゼンだ!

 俺がいる限り守りは任せろ。」

「つよそう!!」


低くよく通る声でガルドは言った。


見た目通り、ガルド・アイゼンは豪胆で頼り甲斐のある男のようだ。


大きな身体と盾に圧倒されてしまうが案外気さくな男なのかもしれない。


二人目は後衛の弓使い。


森のような爽やかで心地のよい空気を纏う女性。


陽光を受けた若葉のような髪色、透き通るような白い肌に、穏やかな緑の瞳。

華奢に見える体躯だが、背には美しく鍛えられた大きな弓。


ふわりと微笑むその姿は優しげだが、

その瞳の内側には強い芯を感じる。


「フィリア・ノルヴェよ。

 よろしくね。」

「おねぇさん、きれい!」


凛とした声が響く。


フィリア・ノルヴェは優しそうなお姉さんと言った様子。


ただ、俺の本能は告げていた。

この人は怒らせてはいけない人だと──。


三人目は魔法使い。


その少年は静かだった。


紫のフードを深く被っており、表情はほとんど読み取れない。


だが、長い前髪の間から、金色の瞳だけが静かにこちらを見ている。


細身の体躯。


だがどこか不思議な空気を纏っている。

その空気が彼を只者ではないと語っていた。


「…ヴェイン・イグニス。」

「よろしくね!!」


男性にも女性にも聞こえる中性な声。


ヴェイン・イグニスは多くを語らない、無口な男という印象だ。


ザ魔法使いという出で立ちに俺の封印されていた厨二心がくすぐられる。


「俺はロキス。こっちはアリサ。

 俺達はダンジョン攻略を目指してるんだ。

 協力して欲しい。」


俺の言葉に三人は力強く頷いた。


仲間なんていらない、そう思っていたが、いざ会ってみると不思議と胸が熱くなる。


これから、俺たちの冒険が始まるのだ──。


◇◇◇


「あの…ずっと気になっていたのだけど、その子は?」


フィリアが不思議そうな瞳を向けてくる。


そう、俺が抱き抱えている少女に。

先ほどから元気に仲間達に挨拶していたこの獣人の少女に。


ガルナを街へ連れてきてから今日まで、親を探してみたのだが、まったく見つからない。


ギルドにも確認してもらっているが、今のところ有力な情報はない。


それどころか、この子について知っている人が誰一人いない。


孤児院へ預けることも考えたが、俺から離そうとすると大泣きして、手がつけられない。


そのため、仕方がなく、連れていくことになった。


「流石に子供を連れてダンジョン攻略は危ないでしょ。」


アリサが不機嫌そうな愚痴を漏らす。


「ガルナ強いよー!」


元気いっぱい答えるガルナ。

自信満々に腕まくりをしている。


「まあ、こう言ってるし、預け先もないわけだし、一人で置いて行くわけにはいかなくって…」


「はぁ…」


アリサは過去一大きなため息をついた。


こうして俺たちの新たなスタートは不穏な風を受けながら、幕を開けた。


◇◇◇


「パパ〜こっちこっち!!」


およそダンジョン攻略をしてるとは思えないほど呑気なパーティがいた。


まるでピクニックにでも来ているかのようなテンションだ。


魔物が潜むダンジョンだというのにガルナはちっとも臆する事なく、走り回っていた。


「おい!危ないからあんまり走り回るな!」


その後を慌てて追いかける俺。


さながら休日、娘に振り回されるパパのようだ。


「きゃっ!捕まった〜!」


走り回るガルナをなんとか捕まえて抱き抱える。


嬉しそうにぎゅーっと抱きついてくるガルナが可愛くてついつい頬が緩み、甘やかしてしまう。


そんな俺達をよそに、冷めた視線を送る者たちがいた。


「全く、緊張感なさすぎでしょ。」


「流石にダンジョン内を走り回らせるのは危ないわよ?」


「いつ魔物が現れるかわからないんだ、ちゃんと捕まえておけ。」


「…。」


アリサ、フィリア、ガルドからそれぞれ非難の声が飛ぶ。


ヴェインも発言こそしないが、呆れたように肩をすくめた。


居た堪れない空気。

背中にチクチクと視線が刺さる。

パーティ内の空気は最悪だ。


完全に俺の自業自得ではあるのだが…。


しかも先ほどからなぜか一匹たりとも魔物の出くわしていない。


いつもなら、もっと出くわすはずなのに……。


戦闘になれば少しは良いところを見せれるというのに…。


そんな俺の考えとは裏腹に俺たちは不気味なほど順調な攻略を続けた。


「うおっ!なんだっ!?」


ガルドが困ったように短く声を上げる。


嫌な予感がして声の方を向くと案の定──。


ガルナがいつのまにかガルドの肩によじ登り、鎧をペチペチと叩いてるではないか。


「おい!やめろっ!降りるんだ!」


必死に引き剥がそうが、ガルナがすばしっこく逃げるためなかなか上手くいかない。


「ガルドおじちゃん!たか〜い!」


きゃっきゃと笑いながら、ガルドの体をジャングルジムかのように登るガルナ。


「俺はまだ22だ!

 おじちゃんってほどの年齢じゃないぞ!!」


ガルドが怒鳴る。


そう怒りつつも、なんだかんだでガルナを無碍にできないのはこの男が見かけによらず優しいからだろう。


その時、ガルナの耳がぴくりと動く。


「ガルドおじちゃん。あっち!」


そう言ってガルナが何もない暗闇を、小さな指で刺す。


「は?なんにもな──」


言いかけてガルドの言葉が途切れる。

そして彼の鋭い眼光が走る。


空気が一瞬でピリつく。


今まで何も暗闇だった何もなかった空間に魔物が現れる。


ガキィィン!…


鈍い音があたりに響く。


ガルドの大盾と魔物の爪がぶつかり合った。


大きな身体に。鋭い牙と爪。

墓守熊グレイヴ・ベアだ。


パワー特化型の魔物でその攻撃をまともに食らったら平気で骨が砕ける。


だが、そんなことは関係なかった。


まさしく不動の壁。

ガルドの大盾はびくともせずその攻撃をしっかりと受け止めていたのだ。


「ガルドのやつ…嘘だろ…。」


その圧倒的な技に唖然としていると後ろからアリサの怒声が届く。


「ぼさっとしない!」


俺は慌てて剣を構えた。


その時、耳元で風が駆ける。


爽やかな森の空気を纏った神速の弓。

一本の鋭い矢が魔物の目を射抜いた。


そう、フィリアだ。


魔物が一瞬ひるむ。


俺はその隙を逃さず踏み込んだが、剣は空を切る。


「えっ…?」


──それはとても静かだった。


魔法が発動するまで全く気づかなかった。


「グガァァ!!」


魔物の低い呻き声が辺りにこだまする。


魔物の足元から漆黒の闇が、溢れ巨大な体躯をのび、丸呑みしてしまった。


「終わりだ…。」


ヴェインの大きくはないが不思議とよく通る声が静かに響いた。


「…嘘だろ。」


俺は思わず息を呑む。


全く出る幕がなかった。

仲間達の実力は目を見張るものだった。


ガルドの防御力。

フィリアの弓。

ヴェインの魔法。


これなら…これなら攻略できるかもしれない…。


俺はそんな希望を抱いた。


◇◇◇


「バカ!結局突っ立ってただけじゃない!」


後ろからゴツンとアリサに小突かれる。


「アリサだって何もしてないだろ!」


俺は不貞腐れたようにブスッとしていう。


「は?私は支援魔法かけてたわよ。」


何バカなこと言ってるのよと、ゴミでも見るかのような視線を向けられた。


え?もしかして…

何もしてないの俺だけ…?


俺は急に気まずくなって慌てて会話を変える。


「ガルナ!そういえばなんで魔物がくる方向分かったんだ?」


そう──。


新メンバー達の活躍で一瞬忘れかけていたが、ガルナは迷いなく魔物の場所を言い当てた。


まだ誰も気づいていなかったというのに。


「んーとね。ガルナ、魔物の位置分かるの!」


元気いっぱいにそう答える。


だが俺の中での疑問は膨らむばかり。


魔物の位置がわかる?どうやって?


「獣人は感覚が鋭い奴が多い。

 嬢ちゃんはそれが人一倍強いんじゃないか?」


ガルドがガルナを抱きかかえながら、そう答える。


「ガルナすごい〜?」


「ああ、すごいぞ。

 助かった。」


そう言ってガルナの頭をわしゃわしゃ撫でる。


えっ…

いつの間にそんなに打ち解けたのだろうか。


そんなつもりはなかったが、異世界でも俺はコミュ症を発動していたのだろうか…。


急に謎の疎外感に襲われる。


「よし!次も頼んだぞ嬢ちゃん!」

「分かった〜!!」


何やら仲良く、前を歩き始める2人。


俺はその後をとぼとぼ歩いた。


「もしかして、今日全然魔物と合わなかったのってガルナのおかげ…?」


「そう、かもしれないわね。

 魔物の位置が分かるのなら、ただ駆け回っていたように見えて、自然と魔物がいない道を選んでいたのかも。」


アリサとフィリアの女性陣がそんな考察をする。


えっ…嘘…。

そんなことある?

ただ無邪気に駆け回ってると思ったら、魔物避けてたとか…。


──ガルナ凄すぎない?


てか、二人もいつのまにか打ち解けてない?


俺はそっと残りの仲間に視線をおくる。


「…。」


ヴェインは相変わらず無口だ。


え、えーと…頑張れ俺。

打ち解けるんだ。

仲良くなるんだ。


「……。」


何も言葉が浮かばなかった…。


俺…異世界でもボッチなのだろうか。


俺を置いて、仲間たちは迷いなく塔の奥へと進んでいく。


その背中を追いながら、ふと違和感を覚えた。


ただ一人──フィリアだけが歩みを緩め、

鎧の男の腕の中の少女へと静かに視線を落とす。


その瞳に宿るのは──。


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