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06. 塔が呼んだ少女

アリサからこってりとお説教を受けた俺は大人しく仲間集めをすることとなった。


「どうやって集めたらいいんだ?」


俺はこの世界に友人もいなければ知り合いもいない。


「ギルドの掲示板に張り出せばいいのよ。

 というか、もうやってあるわ。」


「え…。」


あ…。


ふと昨日の一幕が頭をよぎる。


そう言えばギルドに行った時そんなことを言っていたような…。


「でも、人集まるのか?

 ダンジョンを攻略するわけだし…。」


「それがどうしたの?別に問題ないわ。

 冒険者は自由なのよ。

 なにをしたって文句は言われないわ。」


え…そうなのか。

俺はてっきり犯罪者にでもなるのだと…。


すっとんきょうな顔をしていたのだろう。


クスッと笑うアリサ。


「あはっ、なに?

 冒険者ギルドに捕まるとでも思ったの?」


肩をすくめながら、彼女が笑う。


初めて見る顔だった。


ぼんやり見ていたら、なぜか俺の頬まで緩んでいた。


慌てて緩んだ頬を引き締める。


……別に、なんでもない。



◇◇◇


眩しい朝日に、まぶたをくすぐられて目を覚ます。


窓の隙間から差し込む光が、やけに白くて、空気まで澄んでいる気がした。


掲示板に募集を流してきたのでしばらくしたら集まるだろうとのことなので、一旦攻略はお預けだ。


今日は何をしようかな。


物資の補充、街の中を探索すべきか。


ぼんやりと考え込んでいると足が勝手に塔を目指していた。


白亜の塔ーー。


塔の壁に触れるとひんやりとした冷たさが手に伝わってくる。


俺の全てを詰め込んだ塔。


「待ってろ…絶対攻略してやる。」


必ず、ダンジョンマスターに返り咲いてやる。


◇◇◇


帰ろうと思って塔を後にしようとした時、不意に妙な気配を感じた。


なにかに呼ばれているようなそんな気配。

塔の奥から脈打つような鼓動を感じた。


そんな筈ないと思っていてもつい手を伸ばしてしまう。


塔の入口の扉に手をかけ、ゆっくりと押し開ける。


「え…。」


しんと静まり返った石造りの迷宮。


長い年月を閉じ込めたような冷気が、じわりと肌にまとわりつく。


その入り口に――


場違いな獣人の少女がいた。


転がるように身体を丸め、気持ちよさそうに眠っていた。


頭には三角形の獣耳。

腰からは、ふさりとした尾が石床に広がっている。


すう、すう、と規則正しい寝息だけが、迷宮の静寂をわずかに揺らしていた。


「なんで…こんな所に…?」


いや、そんなことよりーー。


「おい!大丈夫か?」


俺は少女の体をゆすり声をかけた。


「ん、んん…。」


少女は小さく声を漏らした。


目をこすり、ひとつ大きなあくび。

ぼんやりとした瞳が、ゆっくりと焦点を結んでいく。


そして、俺を捉えた瞬間――


ぱっと、弾けるみたいに笑った。


迷宮の冷たい空気が、一瞬だけやわらいだ気がした。


「パパ!」


パパ!?


必死に記憶を辿るが、こんな少女に見覚えはない。


というかそもそも種族が違う。


「パパ?俺が?」


「うん!パパだよ!」


真っ直ぐに見つめられ、そう断言されてしまえば否定できない。


俺はパパなのだろうか…。

結婚した事も彼女さえいないが俺は子供を作ったのだろうか…。


「え、えーとじゃあママは?」


少女はきょとんと小首を傾げたが、すぐに笑顔に戻り答えた。


「んーとね。

 分かんない!」


「分かんないか…。

 なら、なんでここにいたのか分かる?」


再び考え込む少女。


だがーー。


「分かんない!!」


分かんない。

分かんないか…。


…どうしよう。

本当に、どうしたらいいんだ。


俺は今、人生最大のピンチを迎えていた。


◇◇◇


「よし、じゃあとりあえず俺と一緒に街へ行こうか。」


こんな所に子供一人置いていくわけにはいかないし、街に行ったらお母さんとかみつかるかもしれないし…。


そう言って立ち上がり、少女に手を伸ばす。


すると少女は座ったまま、両手を広げた。


え、えーと?

手を繋ごうという意味だったんだけど…。

これは…。


どうしよう。

俺子供と接したことないし、こういう時どうしたらいいのか全く分からない。


「抱っこ!!」


な、なるほど。


仕方なく、俺も同じように腕を伸ばし、その小さな身体を抱き上げた。


見た目より、ずっしりと重い。


鍛えている身だ。持ち上げるのは苦でもない。


それでも、落とさないようにと意識するせいで、腕に余計な力が入る。


「……そういえば、君。名前は?」


腕の中の少女は、ぱっと顔を上げた。


「ガルナだよ!」


弾む声と一緒に、ふさふさの尻尾が楽しげに揺れる。

その先が、時おり俺の腕に触れて、くすぐったい。


妙に落ち着かない。


でも、くすぐったいのは、たぶんそれだけじゃない。


「ガルナ、か」


そう呟きながら、俺は歩き出した。


白亜の塔を背に、俺たちは街へと向かう。


◇◇◇


「こんな所にいたのね!」


街へ着いた途端、アリサに捕まってしまった。


アリサの額には汗が滲んでいて、肩で息をしている。


「どうかしたのか?」


アリサの眉がぴくりと動く。


「あなたが!

 また一人で攻略しに行ったのかと思って探してたの!」


どうやら、心配をかけてしまったみたいだ。


「ごめん…。

 塔の近くまで行ってただけで、攻略はしてないよ。」


「まったく…

 本当でしょうね?」


疑うような視線を向けられる。


本当です。今回は…。


居た堪れなくて、視線を逸らす。


すると腕の中の小さな瞳と目があう。


「パパ?

 この人だあれ?」


ガルナが不思議そうに首を傾げた。


その言葉に、アリサの表情が凍りついた。


「パ…パ?

 さっきから思ってたけどその子誰よ!!」


アリサの怒声があたりに響いた。

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