ゆいこのトライアングルレッスンB 〜 Precious Moment〜
いつものように3人でわちゃわちゃとゆいこの誕生日を祝って、ケーキを食べた後、オレらは前からゆいこが観たがっていた映画を観ていた。
ゆいこの腕の中にはオレがプレゼントしたちょっとブサイクなブタのぬいぐるみ。
その絶妙なブサイク加減が可愛いらしい。
テレビのスクリーンを見つめるゆいこを観察していると、ふいにゆいこがオレらを呼んだ。
「....ひろし」
「ん?」
「たくみ」
「うん?」
「......ひろし」
「どうした?」
「たくみ」
「なんだよ?」
ただ呼ぶだけで何も言わないゆいこに、怪訝な顔を見合わせるおれとひろし。
そんなオレらの顔を見て、ゆいこが嬉しそうに微笑った。
「2人の名前を呼んで....返事してくれるのがなんか嬉しくて。....いつまで....こうして一緒にいられるのかなって考えちゃうと...寂しくて」
ゆいこが顔を隠すように俯いた。
「ゆいこ」
ひろしが優しくゆいこを呼んだ。
「....ふふふふ、ひろしに名前呼ばれるのも好き」
「ゆいこ、オレは?」
「もちろん、たくみに呼ばれるのだって大好きだよ。....2人の声ってさ、なんかすごい落ち着くってゆーか、気持ちいいの。....ずっと...こうしていたいな...」
膝を抱えて顔を膝に埋めたままゆいこの声が眠たそうになっていく。
「ゆいこ?」
ひろしがゆいこを覗き込む。
「ゆいこ?眠いのか?」
おれも反対側からゆいこを覗き込んでみたが、返事は返ってこなかった。
代わりにすぅすぅと規則正しい小さな寝息が聞こえてきて、おれはひろしと顔を見合わせた。
「....ったく、しょうがねぇな」
若干呆れつつも、それはそっとゆいこの頭を撫でた。
「ゆいこ...誕生日おめでとう...」
ひろしの優しげな声に、ゆいこが寝ながら小さく微笑むのが見えた。