第十三部 二人目の 第八章
ようやく、香織が走ってきて、ミニバンに飛び乗った。
「分かりましたって」
香織が俺達にそう話す。
校長や教頭は分からないでほしかったのだが……。
「じゃあ、家に行きますか? 」
『いかんいかん、あそこには仕掛けがある。わしが行った事がばれてしまう。それ以上に律蔵がわしを殺す』
「えええっ? そんなにあっさりと殺すの? 」
『奴は用心深いんじゃ。リスクがあれは一つでも消す』
などと一人で喋って一人でオッドアイの少年が答えている。
だが、爺さんについては多分間違いない。
呪術師なんて碌なもんじゃないし。
「仕方ないんで、ぐるぐると市内を回ります。市から出たら駄目みたいな話でしたから」
それでミニバンを仕方なしにあてども無く大輔さんが走らせた。
その中で俺が聞く。
「御前ですか? 貴方が……」
『その前にわしの話を誰にも話さないと護法をかけさせてくれ。この誓書にカッターナイフで切って血をつけて名前を書いてほしい』
などとそれぞれの安い人数分のカッターナイフと神符みたいなのを出してきた。
祖父が良く使う熊野牛王符に似ている。
「これはもし誓いを破ったら死ぬとか言うやつですか」
『そうじゃ、律蔵も似たようなのを使うだろ』
「ここまでしないと駄目なの? 」
『一条覚と律蔵がいるからな』
などとうちの爺さんが一条覚と同じくらい警戒されていて笑いそうになる。
まあ、確かにそういうやばさはあるよな。
「分かった。その辺の路肩に止めて皆で書こう。書かないなら自動車から離れていて聞かないようにして。大輔さんはもし嫌ならミニバンは私が借りるから」
「いえ、私は神楽耶様の派閥のトップの一人ですから」
大輔さんが拒否した。
『わしも誓書に書き込みをしてある。ここで話した話をすれば死ぬと……』
「これ、効くの? うちはその手の防御があるよね」
「あっ、馬鹿っ! 」
香織が余計なことを言ったらしくて、陽菜さんに怒られた。
『知っている。だから、それでも約束を破れない様に一か月の期間を誓書に敷いて強化している。期間が短ければ短いほど強くなるからな。それを超えたら喋っても構わん。一条覚をそこまでに始末する』
「えええ? 」
「殺しちゃうんだ」
『そこまでが限界じゃろ。未来を見る限りは、その辺りが分岐点じゃ。駄目なら皆終わりだ』
「は? 一か月しかないの? 」
『最悪の場合だがな』
俺の言葉に御前が話す。
『それと、もう一つの密約をかぐや姫と<婆娑羅>殿にしてもらいたい』
「なんじゃ? 」
「なんだ? 」
かぐや姫様と<婆娑羅>殿が声を出してきた。
『律蔵がこちらに手を出せない様にして欲しい。こちらもリスクを負うのでな。それと神楽耶殿も頼む。妖の王になれば律蔵を止めてくれ』
「いや、俺はなるかどうかわかりませんけど……」
「一条覚に勝てばほぼ間違いない。いろいろ複合しているが、この子は未来予知のための妖だ。ベースは山童でな。未来が予知できる」
「山童? 」
「そういう妖怪がいるの。あまり未来予知とかは言わないと思うんだけど……」
「一部伝承があって、それを持つ妖を混ぜた。それ以外にも未来予知の妖を複合している。一条覚が勝てばこの国は亡ぶが、お前が勝てばお前が妖の王になる」
「鬼さんの候補もいるじゃないですか……」
「いや、それよりも国が亡ぶって? 」
「候補は俺だけじゃないし」
「心が漏れ漏れだね。否定するのに必死だ」
誠が俺に突っ込んでくる。
『お前は逃げれんよ』
などとオッドアイの少年の中の老人が冷ややかに告げる。
もう、嫌だぁぁぁぁ!
俺が前に倒れ込みそうになった。
「あんまりだぁぁぁ! 」
「本気でなりたくないんだ」
「普通に生きたいよぉ」
俺が泣きごとのように陽菜さんに話す。
「とりあえず、書けましたよ。全員」
などと空気を読まない大輔さんが誓書を渡してきた。
それをオッドアイの少年の中の老人が確認した。
『よし、これでよい。護法はなった』
そう言うと、誓書から光が迸った。
「じゃあ、早速話してくれる? 」
『わしは一条覚に入った大半の御前の一部分みたいなもんだ。もしくはコピーと言うべきか……』
「は? 」
「訳が分かりませんが」
などと皆が突っ込む。
『わしはいろんな妖の身体の魂を押しのけて、その身体を乗っ取れる』
「カッコウみたいですね」
しみじみと俺が言うとオッドアイの少年が嫌な顔をした。
『本当に律蔵の孫なんじゃな。そっくりじゃないか』
「なんで、そこまで言われないと」
『大事な話をしているのに、腰を折る』
「ちょっと感想を言っただけなのに」
「まあまあ、話が進まないから……」
陽菜さんに止められるとは……。
「いま、私に止められるとはって思ったでしょ」
などと陽菜さんが愚痴る。
いちいち、突っ込んでくる。
『ここにも律蔵がおる』
などとオッドアイの少年の中の老人が言うので俺と陽菜さんがのたうち回る。
「いや、話が進まないんで……」
「ちょっと、黙ってもらえます? 」
などと香織と彩に言われた。
皆が冷たい。




