第十三部 二人目の 第七章
「いや、授業に出たいんだけど、このままじゃ遅刻しちゃうから」
俺がそうミニバンのドアを開けた。
「今しか無いんだ。今しか話が出来ない。あいつが帰ってきたら終わりだ」
ひっしに今度は子供の声で叫ぶ。
「いや、今は内申書が大事だから」
俺がきっぱりと言うと、カバンを持って外に出た。
『お前……律蔵そっくりだな』
などと老人の声で言われて、その場で少しだけ悶絶する。
くっ!
「ちょっと待って! 律蔵さんを知っていて、老人って! 」
などと陽菜さんが俺に言うが無視してスタスタと校門に向けて歩く。
「遅刻遅刻」
まるで少女漫画の主人公のように呟く。
「本当に大事な話なんだ! この国が傾くくらいの! 」
少年の声でオッドアイが小声だけど必死に叫ぶ。
仕方ないので、陽菜さんをすっと前に出した。
「そういうのは国を守るべきプロと話すべきだ。俺はあくまで一般人だし」
「いや、妖の王って……」
「妖の王の候補なんで……あくまで候補だから……」
『何という迷いのない目だ。悪いとこまで律蔵似じゃぞ? 』
「くっ! 」
言われるたびに精神的ダメージが……。
「いや、それはここの教育委員会とも話がついているし、文科省とも話がついているから。今日は出席扱いの欠席で……」
「いや、話が大きくなると相手に知られる」
などとオッドアイの少年が必死だ。
一条覚は教育委員会とも関係が深かったな。
「病気って事だと駄目ですか? 」
大輔さんまでそう話す。
「推薦が……」
「えええと、妖の王になるんですよね」
「絶対とは限らないじゃないですか……」
「衆議院議員の父の方で大学の教授といろいろと付き合いありますので、教授推薦と言う事で受験できますよ? 妖の教授だっているんですから……」
くっ、そんな道が……。
裏技やんけ。
あの最高学府の某大学ですら海外からの留学から帰ってきた帰国子女と言う事で、教授推薦で論文であっさり合格できたりするのだ。
何しろ論文は教授推薦した人が採点するから、絶対の合格が取れる。
工業高校でも大手企業とつながりがあれば、毎年一人は推薦で入社させて貰えるので超大企業ですら変な高校でも合格できると言う裏技に匹敵する。
下手な三流大学に行くくらいなら、そちらの方が余程将来があるのだ。
「学生の本分は勉学ですから」
それでも俺が爽やかに笑った。
「あーあーあー、多分、面倒事に違いないから関わりたくないんだと思う」
などと彩が俺の本音を言ってしまう。
「律蔵さんにそっくりだよね」
『律蔵にそっくりだ! 』
「くっ! 」
心臓が苦しい。
律蔵爺さんそっくりと言う言葉は俺にとって呪いの言葉に等しい。
だが、負けないぞ?
「いや、ちょっと、いろんな手もありますし、今日は話し合ってくださいよ」
「香織、ちょっと校長か教頭に話してきて、内密な話で神楽耶君とええと……彩さんも休ませるって」
「じゃあ、私も」
「ええ? 仕方ないな。言ってきて。一応、あんたの事も校長と教頭は極秘の話って事で知っているから」
「分かった、私を置いていかないでね」
などと勝手に話を陽菜さんと香織が進めてしまう。
「えええ? 学生の本分がっ! 」
俺が必死だ。
「いや、私の地下闘技場の戦いにもかかわるなら、私の問題でもあるよね」
などと彩に言われて、項垂れる。
確かに身内の彩に何かあってもいけない。
多分、何かあるとしたら地下闘技場の大ムカデ対三代目俵藤太の関係の問題だと思われた。
「彩ちゃんの関係なら諦めるんだ」
「身内ですから」
「私も身内じゃないの? 」
「なってません」
「ええ? 」
などと陽菜さんがむくれた。
面倒くさい。
『目立たない様にミニバンの中で話すか』
「大丈夫なの? 」
『お前たちに警戒されないように、あいつは今は監視の仕掛けを外している。市に戻ってきたら、監視も戻してくるはずだから、今しかない』
そう老人の声で話すとミニバンに勝手に乗り込んだ。
うわぁ、図々しい。
厄介そうな話だな。
関わりたくないなぁ。
「凄い嫌な顔をしているよ」
『そこは息子に似ているじゃろうな。あいつの息子はまるで腐った部分が律蔵に残って濾過された様に素直な奴だったから。すぐに表情に出る』
オッドアイの少年が中の老人と話す。
何という表現だ。
爺さんを知らないと無理だな。
となると、御前なのだろうか?
『早く発進させろ! 極秘でしたかったのに大きな騒ぎにしおって……』
「分かりました」
そう言われて、慌てて大輔さんがエンジンをかけなおす。
「香織が戻ったら発進してね」
陽菜さんがそう念を押した。
ほっといて行くんじゃないんだ。
「むくれんのよ。凄く面倒くさく」
俺の心を読んだのか陽菜さんが吐き捨てるように話した。
なるほど、香織には、そう言うとこある。




