第十三部 二人目の 第五章
「まあ、基本、お姉ぇは惚れっぽいから。面食いだし」
などと香織がぶちまけた。
「いや、どうして、そういう事を喋る? 」
「だって、基本的に良さげなの見ると片っ端から声かけるし」
「ああ、いろいろと声かけて、どこかで引っかかるかとか、考えてんでは? 」
「ほあああ? 声くらいかけるでしょうが! 」
「向こうが嫌がっても、引かないよね」
「それくらいで引く方がおかしい! 」
「いや、引くでしょ。お姉ぇはネチネチやるから駄目なのよ! 」
「彼氏も出来ていない妹に言われたくない! 」
「すぐ別れるお姉ぇに言われたくない! 」
それを聞いていた、大輔さんとか誠の顔が暗い。
多分、言い合いに殺気が籠っているからだと思う。
普通、そんな事を他人の運転する車でしない。
いくら妖と言えどもここの市長だし。
全然、遠慮が無いんだなと……。
「市長が困っているから、どうにかしたら? 」
「このくらいでおろおろするなら、市長なんて勤まんないって! 」
陽菜さんの言いぐさが酷い。
「いや、そういう話は良いので、で、どんな手が考えられると見ているんですか? 」
しょうがないので、俺が陽菜さんに聞いた。
「多分、途中で神楽耶君を襲うと見ている。ブックは無くなるかもね」
まあ、想定の範囲内だな。
「まあ、神楽耶君も同意見なんだ」
などとこっちの心を読んでくる。
「いや、それしかないでしょ」
「え? じゃあ、どうするの? 」
彩がちょっと驚いたように聞いてきた。
「ブック破りの時点で受けれないと見なしたら、撤退して、それでも戦うなら関節部を狙うしかない。それこそ、唾で刀身を塗って、大ムカデを倒したのだから同じやり方で効くと思う。それで狙って関節部は斬れるとは思うけど、もし斬り落としても、節足動物で考えたらしばらくは生きているから、それを警戒した方が良いと思う。弓で射殺している伝承もあるから、本当は弓なのかもしんないけど」
「地下闘技場で弓は難しいよね」
「多分、地下闘技場の性格上難しいと思います。ずっと観戦しているけど、弓で戦うのは見たこと無いですね」
「そもそも私は弓は習ってないし」
彩がそう答えた。
「最悪は、唾を塗った拳銃の弾で弓の伝承の方なら眉間を打ち抜いたらいいらしいから」
それで俺が助けてねって感じで陽菜さんに話す。
「は? 私はいらないでしょ。お婆さんが出るんでしょ? 」
陽菜さんが苦笑した。
「そんなに強いの? 」
俺がドン引きする。
「その……大戦争になるけど良いんですか? 多分、律蔵さんも動くでしょうし」
「そこなのよね。だから大事になりそうで……。別に阻止しろって命令受けてないし、しんどそうだしなぁ。手当も出るわけじゃないし」
陽菜さんの言いぐさが酷い。
「いや、お願いいたしますよ。一応、大事件になっても困るし。多少のお礼ならしますからお金は駄目なんで、美味しい食事とか接待しますよ」
大輔さんがそう話す。
喋り方からして、いつも、こうやっておねだりしているのかなと。
酷い話だけど。
「いや、今回はかぐや姫様に頼もうかと思っているの。多分、一手じゃ無いでしょ。噂の御前なら。まあ、律蔵さんが言うだけで、本当に生きているのか良く分かんないし」
「一条覚さんは? 」
「可能性が高いってだけだしね。まだはっきりしていないし」
などと話していたら、俺の中から腕が出てくる。
この手は<婆娑羅>さんの手だ。
鎌倉時代より室町時代の直垂姿を着ている。
実践的なので戦いがし易い動きやすい恰好が好きなので、そういう格好で出てくる。
「お前と話したいらしい」
「誰がですか? 」
「多分、妖の王の候補の一人だと思う。だが……お前の目に任せる。最悪、戦闘の覚悟をしておけ。かぐや姫様も臨戦態勢に入っていただく」
そう<婆娑羅>さんが話すと、俺が光りだした。
どうも、相手が敵に近い感覚だ。
「ええと? 」
俺が陽菜さんと大輔さんを見た。
陽菜さんは自衛隊の情報保全部だし、大輔さんは柴垣派の派閥を率いる情報通だ。
何か知っているかもしれない。
「覚醒したって聞いたけど……あの隠れてて出てこない奴かな? 」
「あれははっきり覚醒したかどうかもはっきりしてないはずですよ。神楽耶様が覚醒してから、少し後に噂が流れたんだけど、姿を消したんです」
「はあ? 姿を消すって? 」
「妖の王の候補が妖として覚醒すると、妖の世界に広がって、こちらも分かるのですが……消したんですよ。覚醒した気配を……」
「……学校の前で待っているよ? ええと……。やばいかな? 」
大輔さんの言葉の後に陽菜さんの珍しく焦った言葉が続いた。
気配を感じたかららしい。
そして、俺も感じた。
おかしい……気配が……気配が一条覚と同じだ。
だけど、別人のはず……。
なんで?




