第十三部 二人目の 第三章
「え? まだ雪ネズミさんから話が来てない? あれ? 」
「父さん! そう言うのを先に話しちゃうのは……」
柴垣大輔さんに誠が食って掛かる。
だが、まあ仕方ない。
「多分、大ムカデが来週の土曜日を蹴ったんだな。そうでないとそうならん。よほど戦いたいらしい」
爺さんがそう隆史さんに話す。
「となると、ちょっと対策が厳しいですかね? 」
「ブックは応じたんだろ。でないと決まらんから。双方の一番強い部分を打ち合う戦いだろうな」
「まあ、そうなると木刀も六角棒も振って練習しているから、そんなに問題は無いか……」
隆史さんの言葉で、いや、娘に何やらしてんのと突っ込みたくなる。
薙刀以外にもしてんだ。
「まあ、200ずつの素振りは毎日しているから」
などと笑うとこじゃない所で、彩が笑う。
そりゃあ、強いはずだ。
「で、二年経てば尋常の勝負です」
そう大輔さんが全部言っちゃう。
「やっぱり、それは避けれなかったか」
「どうしても、尋常の勝負だけはと引かなかったらしいですから」
「まあ、戦士なら当たり前だね」
などと大輔さんの言葉に彩が言い切る。
いや、お前、女子高生じゃん。
しかも一年生だし。
少し前まで女子中学生だぞ?
そう思いながらも、そういう子だから仕方ない。
「おおおぉっ! 彼女は、まさに三代目俵藤太に間違いない! 」
などと大輔さんが感動している。
「二年後にはブックなしになるんだけど大丈夫なの? 」
「二年あれば陽菜くらいにはなるだろ。それなら大丈夫だ」
などと誠の不安を爺さんが断言してしまう。
「それで追い抜くのね」
などとそれじゃない言葉を彩が言う。
隆史おじさんがそれで困り切った顔をした。
「あれれ? 私は抜かれちゃうの? 」
などと声がかかる。
この声は……と思いつつ、まあ、そうだよな。
そこに渡辺陽菜さんがいた。
「うん、抜くから」
彩が笑顔で言い切る。
「ほぅ? 私にぃ? 」
などと陽菜さんが殺気を迸らせる。
いやいや、尋常じゃねえな。
これは強い。
大輔さんとかビビっちゃうし、隆史さんは思わず身構える。
なんでも、人間兵器として見ると歴代最強クラスらしい。
残念さも同じくらいらしいが……。
「ちょっと、神楽耶君、何か考えたよね」
などと勘も鋭い。
いや、そういうとこがモテないのではと……。
「これが渡辺三姉妹の長女か……」
隆史さんがその殺気を受けて少し驚いたように呟いた。
「あら、貴方が二代目俵藤太さんよね。昔、果し合いを見たけど、シュートも出来るタイプだったわね」
そう陽菜さんがにやりと笑う。
昔の戦いを見たことあるんだ。
「となると、あのたまにセコンドについていた凄くカッコいい男の人が神楽耶君のお父さんなのかな? 」
などと陽菜さんが言っちゃう。
「ちょっと待って! 陽菜殿! お父さんの話は本人から話があるからっ! 」
柴吉が叫ぶ。
「あーあーあー、そういうはなしだったね。ごめんごめん」
などと陽菜さんが頭を下げた。
「頭を下げるんですか? 」
「そういう風にしろって話が上でついてんのよ。君の両親についての話はね」
などと陽菜さんが笑った。
さっきまでの殺気が全く消えてしまう。
「そんなに重要人物なんですか? 」
「いや、言ったら駄目だっ! 駄目だからっ! 」
柴吉が必死だ。
何があるのか心配になるくらいだ。
「何があるんです? うちの親に……」
「まあ、どうせ、そんなに遠くないうちに知るよ」
などと陽菜さんが笑った。
「知っているんだ。理由を……」
「一応、妖特科の幹部だし」
「へぇぇぇ」
彩がキレる事では無いと思うのだが……。
それでせっかく消えた陽菜さんの殺気が復活する。
だんだんヤンキーのお姉ちゃんのガンの飛ばし合いになってきた。
「そう言うのは止めましょう。せっかく、異種格闘技としてメジャーになった世界なのに、ヤンキーの世界に戻っちゃう」
などと、どこかで聞いたセリフを大輔さんが言っちゃう。
なるほど、あの地下闘技場の戦いは、そういう喧嘩とか言うレベルの低いものを削ぎ落とした戦いだと思っているんだ、大輔さんは。
ブックがあるんだけどなぁ。
間宮さんの出来る部下と気が合いそうだ。
「問題は……だ」
爺さんがそう独り言のように話す。
どうやら、やはり、いろいろと心配らしい。
「お爺さん。私が見守りますから」
そう婆さんが微笑んだ。
そしたら、陽菜さんが口笛をひゅーって吹いた。
吹いた?
あれ?
やっぱり、うちの婆さんは何かあるの?
そうとしか見えない顔を陽菜さんがした。
ええええええ?
呪術師は爺さんだけじゃないんだ。
婆さんもか?




