第十三部 二人目の 第二章
昨晩は如月彩の家でお世話になった。
爺さん達とホテルに行こうとしたのだが、止められた。
爺さんも何か考えがあるのか、それを受け入れた。
多分、再度の問題が起きた時、今度は如月家にトラブルがあるかもしれないと残ることにしたらしい。
婆さんがそう教えてくれた。
「彩ちゃんちは家族だもの」
そう微笑みながら。
だけど、あの時の異様な気配がちょっと気になった。
なんだか、そういう予感ってろくな事にならないから、怖くて追及できない。
朝起きたら、柴垣家から来た業者の手で、一気にプレハブみたいな奴で組み立てられた前側の玄関が出来た。
一応、継ぎ目がフルーシート以外を見れば、確かに家にプレハブの玄関がつながって見える。
玄関と言えば玄関だ。
変な家のせいで火事なのに居間から向こう側は綺麗に残っていた。
木造の玄関と玄関側の客間だけが燃えた。
「変わった家だよね」
そう、あっという間に家の体裁が出来るので彩がため息をついた。
「同感だけど」
柴垣家の業者が手際が良いのもある。
まるで昔、何度か同じ事があったのではと思う。
「まさか、前にも家が燃えたことがあるのか? 」
横でお座りしている柴吉に聞いた。
「お前の父親がいる時に1度燃えているからな。それと御前の下で働いてた時には家が2度燃えているとか」
「そんなに襲撃されているのに、そのままここに住んでいるのか? 」
「いや、別の家らしい。それで、ここに住んだ時にいろいろとやったそうで、お前の父親がいる時にはすでに今の形だ。細長い玄関とそれの横についた客間だけが燃える形式にしたとか。前側はプレハブでなくて、木造だから良く燃えそうだろ? 放火した奴は、やっぱり燃えやすい側に火をつけるだろうしとか無茶苦茶言ってた」
「糞だな。火をつけられる前提かよ」
どんな家だよ。
そして、どんな家族なんだか。
家に火をつけられるとか恨みをあちこちで買っている奴の話じゃん。
「複雑な家庭だよね」
などと父親が二代目俵藤太と言う地下闘技場のスターだった人の娘の彩に言われる。
変な家が寄り添って建っているのか、それとも爺さんがそうしたのか。
聞きたいけど、聞きたく無いなぁ。
焼けている部分は庭に山となっていたが、それは綺麗に軽トラックが来て運転手たちが降りると即回収していく。
本気で手際が良い。
ついでに、その軽トラックの後の自動車で市長の柴垣大輔さんと誠が来た。
「凄いことになったなりましたね」
軽トラックに次々と焼けた木材とかが積まれていく中で、柴垣大輔さんが爺さんに苦笑した。
「まあ、怪我人や死人はいないから良いや」
「それにしても、彩さんのお父さんがあの二代目俵藤太だったとは! 」
などと、いきなり市長の柴垣大輔さんが熱く語る。
「そんなにお父さんって凄いの? 」
「市の隠れた英雄ですよ」
などと市長の柴垣大輔さんが騒ぐ。
どうやら、ファンらしい。
そして、外が騒がしいので、家から様子を見に出て来た今日も公務員で休みを貰った隆史おじさんが市長を見て家に戻ろうとした。
「君がそうだったとはぁぁぁ! 」
などと市長が出てきて戻ろうとする隆史おじさんに駆け寄る。
そうか、上司なんだな。
逃げるのも無理だ。
「ごめんね。彩さん。父さん、ああ見えてグッズを集めてたほどファンなんだって。夜に情報網で話が入ってから、そのまま父さんが彩さんの家に行こうとするのを家族で止めるのがやっとで……」
誠がひたすら彩に頭を下げる。
だが、市長の大輔さんは止まらない。
止まりそうにない。
困ったもんである。
延々と隆史おじさんが土蜘蛛とか狒々とかと地下闘技場で戦った時の話を熱く語っていた。
横で誠が恥ずかしくて赤くなっている。
「あれ? 仕事で会うよね。確か? 」
「二代目俵の藤太の時は頬当てをして顔が良く分からんようにしていたからな。それが逆にミステリアスな雰囲気を出して大人気じゃった」
などと爺さんが教えてくれる。
「やっぱり大人気なんだ」
「妖と戦う人間はあまりおらんからな。そういう意味であの雪ネズミが必死に囲い込んだのが、隆史君だから」
ああ、なるほど。
そりゃ、そうか……。
「そして、ここに新たなるスターの三代目俵藤太が現れるわけだね! 」
嫌がる隆史おじさんを連れて、柴垣大輔さんが彩の傍に来た。
誠が横で必死にごめんねと頭を彩に下げていた。
隆史おじさんも市長に逆らえない。
上司だし。
「こないだ話したけど、良い娘さんだ! 期待しているよ! 今度の土曜日! 柴垣派で皆で応援に行くからっ! 」
そう柴垣大輔さんが言い切った。
「今度の土曜日? 」
「え? 」
本人が知るよりも情報通なんで先に知っちゃうとか……。
「今週の土曜日になったんだ」
などと爺さんが呑気に話す。
いやいや、開催日が近すぎじゃね?




